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優先度

「いやぁ、朝なかなか起きられないのは生まれつきでして」


「起こされたらすぐ起きないと死ぬ、と思えば起きられる」


毎朝、寝坊と命を天秤にかけろというのか。酷すぎる。


「あ、でも、名前を呼ばれたらすぐ起きますよ。ヴィデル様、今朝エリサと呼びましたよね?」


「犬かおまえは」


ヴィデル様は答えたくない質問には答えないと予想している。その予想が正しければ、今の私の質問には答えたくなかったということだ。


……私の中にいたずら心が芽生えた。明日は名前を呼ばれるまで目を開けないことにしよう。


「ところで、スケジュール管理とおっしゃいましたが、具体的には何をされるのでしょうか?」


「おまえが作ったスケジュール通りに進捗するよう管理する。具体的に言えば、毎朝その日やることを確認し、毎夕その日やったことを確認する。スケジュールから遅れるようであれば、遅れの原因を突き止め、取り除く」


「ほぉ」


スケジュールに余裕を持たせておいて本当に良かった。昨日、スケジュールより早まる分には問題ないと言われたし。


研究所では、実質私のことは放置状態で、スケジュールも自分の言い値というか、誰かに管理されるどころか確認すら碌にされなかった。


……今思えば、あちこちから出資を受けている遠通魔道具の開発スケジュールに興味がない、というのは非常におかしな話である。


「研究所では、私の開発スケジュールは誰にも管理されていませんでした。とにかく試作機を作れ、と指示され、作って見せると何かしらダメ出しをされる、ということを繰り返していました」


「組織として腐っているな。おまえの話を聞く限り、研究所としては、遠距離通信用魔道具が完成するのは都合が悪かったのかもしれん」


「なぜです?」


「自分で考えろ」


そこへ、ティオナと執事が一緒にやってきた。ティオナは食器を下げると、「後ほどお掃除に参ります」と言って出て行ってしまった。


ヴィデル様がいると、ティオナとおしゃべりが出来なくて寂しい。


執事とヴィデル様は、本宅のゲストルームのソファをここへ運ぶとか何とか話している。


「ゲストルームのソファは新たに手配しておけ」


「かしこまりました」


決着がついたようだ。やったー! ソファがやってくる!


執事は一度本宅へ戻り、少しして使用人とともに戻ってきた。使用人は大きなソファを運んでいる。すごく重そうで、急に申し訳なくなった。


置く場所はもう決めている。本棚の向かい側、階段手前の壁際がいい。


「本棚の向かいの壁際に置け」


ヴィデル様が使用人に出した指示が、自分の希望通りの配置であることを嬉しく思った。


ソファを置くと、使用人たちと執事が退出したので、早速座ってみる。……うん、最高。


ビロードのような滑らかな生地は手触りが良く、女性なら詰めれば三人座れそうな大きさで、高級品であることは明らかだ。


せっかく運んでもらったのだから、こっちで仕事をしようかな。でも、書き物はできないから、となるとローテーブルも欲しい。


あ、お給料が入ったら、自分のお金で買おう!でも、外出させてもらえないかなぁ。テーブルは運ぶのが大変だから、ティオナに頼むのは悪いし。


「おい、いつまでぼけっとしている」


「え? 私そんなにぼけっとしてましたか?」


「ああ」


「それより、ヴィデル様も座ってみて下さいよ。これは素晴らしいソファです」


「立て。働け」


泣く泣く立ち上がり、昨夜ヴィデル様が買ってきてくれた素材や魔石を棚にしまい始める。


横目で上司を見ると、ソファの真ん中にゆったり座って書類を眺めているではないか!


脚を組み、真剣な顔で書類を眺める姿があまりにもかっこよくて、ソファを取られたことは許すことにした。


片付けが終わったので、いつもの席に座り、今日の仕事に取り掛かる。


朝食の時に宣言した通り、いくつかのアイディアについて、図やイメージを書き込んで詰めていく。実際に魔道具で検証すべき部分は、検証方法も書き加える。


ヴィデル様から与えられた課題の中で、特にやっかいなのは、通信傍受対策だ。


兄弟石間では相互に魔力を送り合うが、兄弟石の間に別な魔石を置いた場合、割り込んで魔力を受け取ることが可能なのか。


これは実際にテストを行うつもりだが、テストの際に割り込みが確認できなかったとしても、確実とは言えない。


魔素の進路が不確実であるため、テスト時はたまたま魔素の進路上に魔石が置かれていなかっただけかもしれないのだ。


ん? 待てよ。ヴィデル様が今朝言っていた隣国のゼフェリオは魔道具開発の先進国だ。通信傍受についての研究結果は開示されていたりしないだろうか?


「ヴィデル様、質問なのですが……」


そう言ってソファの方を見ると、ヴィデル様の神々しい寝顔が目に入った。部下に仕事をさせて、ソファを奪い、いつの間にか寝ていたということだ。


いろいろと文句が浮かんでは消え、浮かんでは消えていった。


せっかくならば、と、音を立てずにソファに近寄り、近くで眺めることにした。


美しすぎる光景に、脳内のシャッターを切りまくった。記録用魔道具を優先すべきだと強く思った。


お読みいただきありがとうございます!

どうか、感想もお願いします!なんでも構いません!

引き続きよろしくお願いします!

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