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似ている

ルヴァ様は私の反応を見て柔らかく笑うと、話を続けた。


「ああ。辺境伯領というのは、国外からの侵攻の防壁としての役割を担う以上、外交や軍事、ひいては内政とも深い関わりがある。そのため、国内外の見張りや王都との通信はもちろん、軍事や警備のためにも、魔道具の開発を非常に重視しているんだ」


「はぁ」


「で、ヴィデルに優秀な魔道具師を探させたが、一向に見つからない。見つかっても、全部魔導研究所の手の内だったんだ」


「そうだったのですね」


「そう。それで、仕方なく我が領専属の魔道具師は一旦諦めて、遠距離通信用魔道具の開発を始めたという魔導研究所に出資を始めたというわけさ。だから、君を専属の魔道具師として迎えることは、もともとの理想の形なんだ」


「あの、その専属の魔道具師になると、今とは何が変わるのでしょうか?」


「それなんだが、実際のところ、何も決まっていないんだ。何せ我が領としても初めてのことだからね。だから、あまり堅苦しく考えず、君とヴィデルで良い形を模索してくれればいいと思っている」


「なる、ほど?」


「ははっ。分かりにくいか。簡単に言えば、今と何かを変えてもよし、変えなくてもよしってことだ」


「なんとなく、分かったような気がします。あ、あと、セドリック様から、私の処遇に関してルヴァ様とヴィデル様の間で意見の相違があったと伺いました。差し支えなければ、教えていただけませんか?」


「そうか。気になるかい?」


「はい」


「ヴィデルは、君を専属魔道具師とすることに反対なんだ」


「あ、そうなのですね」


「うん。ヴィデルはね、君が魔道具師であるというのは伏せておくべきだと言っている。理由はいくつかあるんだが、簡単に言うと、君の身の安全に関わるためだ」


安全?


「君がいなくなって、研究所は遠距離通信用魔道具の開発を凍結したのは聞いたかい?」


「はい、ヴィデル様から伺いました」


「そうか。それで、うちや王家、他領から研究所への出資は打ち切られた。さらに、これまでの出資額の用途や、未使用分の回収についても各所から説明を求められている。君を逆恨みしてもおかしくないだろう?」


確かに……所長が藁人形を木に打ち付ける姿を想像してゾッとした。


「そんなわけで、君はあくまで使用人として扱うべきだと言ってきたんだ」


「教えていただき、ありがとうございます。てっきり、施錠管理について意見の相違があったのかと思っていました」


「ああ、その話をしていなかった。結論から言うと、離れの施錠には私も賛成なんだ。理由は、さっき言った通り、君の身の安全のためだ。嫌な言い方かもしれないが、君と君が今後生み出す物は、大きな大きな財産なんだ。どうか、了承してほしい」


「もちろんです、何不自由なく生活も開発もさせていただいていますし、施錠自体が嫌な訳ではないんです。ただ、一使用人の身分で、皆さんに申し訳ない気持ちもあって……」


「そうか。じゃあ、こうしたらどうだろう?この屋敷の中では、君は魔道具師として扱う。離れは、正式に魔導研究室として扱う。君の仕事は研究室で研究することであり、食事を作るのは料理人の仕事、掃除や洗濯は使用人たちの仕事だ。つまり、役割分担だよ」


「はぁ」


「屋敷の外からは、君は普通の使用人に見えるよう、屋敷内の者には口外しないよう指示する。もし、屋敷の敷地内で客人や商人にばったり会うことがあったとしても、その服なら問題ないだろう?」


そう言って、ルヴァ様はいたずらっぽく笑ったので、つられて笑う。


「じゃあ、その内容で契約書を用意させよう。何か聞いておきたいことはあるかい?」


「ええと……、あ、ヴィデル様にはお伝えしたのですが、遠距離通信用魔道具の開発やテストのために、耐魔素材で覆った部屋が必要なんです。耐魔素材は高価ですので、小さい部屋で構いません。ご用意いただけないでしょうか……?」


「君はヴィデルに似ているね」


「そう、でしょうか? 心当たりは全く無いのですが……」


「ははははっ。その返しもヴィデルが言いそうだ。耐魔室についてはヴィデルから聞いたよ。もちろん用意しよう。細かい話はヴィデルやセドリックと詰めるといい」


「ありがとうございます!」


「君とヴィデルが、これからどんな物を創り出すか楽しみにしているよ」


「はい! 頑張ります!」


こうして、緊張したルヴァ様との面談は、とっても和やかで楽しい時間となり、無事に終わった。


ルヴァ様に礼をして応接室を出ると、執事が待っていてくれた。


「良い方だったろう?」


「はい! とても!」


「そうだろう、そうだろう。さ、離れまで送ろう」


私の返事に満足した執事。きっと、ルヴァ様のことが大好きなのだろう。いや、慕っているというべきか。


応接室を出て歩き出すと、私服の男性とすれ違った。すれ違いざま、執事が会釈をしたので、私もそれに倣う。


その人は、緑がかったグレーのような不思議な瞳の色をしていて、思わず目で追ってしまった。


「セドリック様、今の方は?」


「ああ、カサル様だ。ヴィデル様のお兄様だよ」


まあ、私服で屋敷内を歩いているのだもの、ヴィデル様のお兄様というのは納得なのだけれど……。


ヴィデル様は綺麗な金髪、ルヴァ様は明るい茶色の髪。


それで、なぜカサル様は真っ黒な髪色なのだろうか。


お読みいただきありがとうございます!

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