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爆縮と体温の機知(9)

美しいノート

見つけてしまったノート

何処にいったか分からなくて

そのままにしていた

その時は

別の物があれば良かった

代用できれば

それで大丈夫だった


一行だけ書いてあるノート

隙間に挟まり

歪に曲がった表紙と

ページの端には

折れ曲がった三角形

シャープペンシルの芯はB

筆圧強めで

途中で折れているのが分かる

最後の丸の近くで

折れた芯が

こっちを見ているみたいだった


「明日は、あなたと出掛けるのが、

とても楽しみで仕方がないです。」

日記なのか、交換ノートなのか

それすらも思い出せない

相手の顔はボヤけていて

輪郭すら不鮮明で

幻みたいな思い出に

いつの間にか、なってしまった

三角形の傷跡がある

美しいノートになってしまった


見つけてしまったノート

見つめていてもしょうがない

そのままにするのは

気が引けて

一行の後を書いてみようか

なんとなく

そう思うことにした


二行目を書き始めたノート

記憶に埋もれて

正確に表示されない

ページを捲れば

三ページ目の隅に落書き

筆の運び方は自分じゃない

筆圧柔らか

途中で飽きているのが分かる

最後が少し雑で

線の行方が

こっちを見ているみたいだった


「あなたは、一体、誰だったのか、

思い出すのが、正直怖いです。」

日記にするのか、自分語りなのか

それすらも決めていない

思い出のフィルムは切れていて

コマ送りすら出来なくて

幻みたいな思い出に

いつの間にか、なってしまった

消失した手品みたいに

美しいノートになってしまった


繋がる文章は

今でも交流のある友人のことだけ

あの落書きの作者は

全く出てこない

卒業アルバムには

仲が良かった人間の文字しかなくて

誰か居たような気がして

終わりまで居なかった人間という

考え方しか出来なかった


「あなたは誰ですか?」

自分だけで

解決しなくはいけない気がして

誰にも連絡はできなかった

そんな秘密だったような

そういう秘密にしようと

誰かと決めたことだけを

最後に薄っすらと思い出した

「あなたは誰ですか?」

分からないけれど

1ページ目以外の奇数ページには

全てあなたの落書きが描いてあった

記憶に残らない

美しいノートになってしまった




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