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かつて僕らは

作者: 上野公子

僕たちは、どうなっていくのだろう

この先に、希望があるのだろうか


少し前のことだけど、僕には

はるか昔のことのようだ


小さいころ、この辺りは田んぼが多くて、

春にはレンゲが咲き誇り、

レンゲ畑に緑の通路、そして、緑のベッド

空は青く、緑の草の匂いとレンゲの花に

包まれて、ただ寝転ぶだけで楽しかった


学校の帰りには、少し生い茂った木々の中

草をなぎ倒し、木に登り、

捨ててある段ボールで

空間を作って秘密基地

家から、お気に入りのおもちゃを持って集合

何もしないけど、ただ時間を過ごす


田んぼに水が張ってきたら

おたまじゃくしや、カエル

ゲンゴロウ、カブトエビ

緑のホウネンエビ

あの時の僕は、気持ち悪いというよりも、

好奇心でいっぱいで、ずっと見ていた


蚊帳を吊って

窓を開けて、ブーンブーンと音のうるさい扇風機

蚊が入るから、サッと出入りをしなさいと

忍者のように出入りする


稲刈りになると、稲干しの間に入ったり、

隠れたり、刈った後の株を踏み潰すことに

何故かハマって、ひたすらに踏んでいた


カマキリの卵を見つけると、何故か

その枝を持ち帰る


冬になると、雪が積もり

雪だるま、雪の中に人型をつくる

誰も入れない小さな、かまくらをつくったり

水たまりの氷を割りながら、登校


広場がなくても、田んぼで野球をしたり、鬼ごっこしたり

とても楽しかった

田んぼは誰の田んぼなのかは知らない

でも、怒られたことはない


寄り道しても

防犯なんて全く気にもしなかった


小学校の思い出は、ほとんどが、外で友だちと遊ぶこと

元気に駆け回り、近所の駄菓子屋さんで

笛吹きラムネを買ってはピーピー鳴らし

紐付き飴をリッチな気分で舐めていた


今の子たちに、そんな話をすると、

昔話にしか聞こえない


戦争を昔話と僕らが思うように、

現実としてイメージできないのだ


僕たちですら、昔はね・・・と話しているところで

もう過去であり、蘇らない世界と思っている


今の子どもたちも、僕らの年齢になると、昔はね

なんて振り返り懐かしむのだろうか・・・


何を・・・


今は、とても便利で、足を運ばなくても世界が見れる

人に聞かなくても、情報は得ることが出来る


もっと先の未来はどうなっているのだろうか

異常気象で出歩かなくても生きて行けそうな現代

今は、まだ、外に出かけるのか、家で過ごすのか、

選択の自由がある

でも、もっと進めば、外に出るのが危険な時代になっている

かも知れない

限られた通路を行き来する時代が来るのかも知れない

すべて、管理されているかも知れない


長生きはできるだろう

物流は機械やロボットがしてくれる

人は出歩くことの必要性が無くなりエネルギーの蓄えも

それほど必要でなくなる


そんな

世界に昔は憧れもした

ロボットと友だちになって、自由に暮らすんだなんて


どこまで、僕たちは進化していくのだろう

子どもの頃、憧れて、夢見ていた世界

が次々に現実になっていく


これは、僕の想像だけど、

一夜にして、作物が盗まれる

一夜にして、物がなくなるっていうニュース

もしかしたら、未来の僕たちが、タイムマシンで調達しているのかも

不可思議なことは、未来の僕たちのいたずらなのかも


田んぼで済ませた遊びは、壮大な時間空間が遊び場になっているのかも


情報はあり余るほどに膨大で、

知ろうと思えば、いくらでも手段はある


でも、ちゃんと出会わなければ、本当に生きているのか

実感できない


ニュースから聞く、季節の便りと

肌で感じる、気温の変化

目にする光景は、どの季節もかわない

アスファルトと家と、電車に車

昔、出会った変な人は不審者として片付けられる

自分に必要と思わなければ知る必要もない

あれは何だ?なんて不思議なことに出会うこともない

大人同士の会話なんて全く耳に入ってこない

また、大人同士が道端で話している光景なんて目にしない


くだらないことをよく長話できるよな・・とか

よく、人の家庭の話を知りたがるよな・・・とか

他人のことにそんなに興味あるか?・・・とか


興味の手がかりすら見つけられない日常

ただ、歳を重ねている

身近なところで就職し、なりたい自分はなんだろう

そもそも、どんな仕事がこの世の中にはあるのか

どんな可能性が、この世の中にはあるのだろうか

そんな気持ちすら、湧いてこない現代で

僕たち大人は、子どもに何を期待するのか


いや、期待しているのか


今の子どもたちは、どんな未来を描いているのか

そういえば、僕たちの子どもの頃は、

未来の地球とか、絵を描いていた気がする


今の子たちは、絵を描かせたら、何を描くだろう


今の子たちから、興味の質問は聞こえてこない

こちらが、雑学を話してみて

知っているのかと思ったら、

何にも知らないことが多い

また、そんな雑学もその場で終了

発展しない


僕が生きている今は

まだ、世界は広いな、知らないことがたくさんありそうだ

なんて思える、

だから、おそらく、人生終える頃に悔いが残るだろう


真剣に、子どもと話してみたいものだ


何がしてみたい

どんな社会を夢見てるの

僕たちが、君たちにしてあげることはあるだろうか

話して欲しい

手遅れになる前に


知識は生きるために使うもの

知恵は生きるためにつけるもの


決して、楽をするためではない

個人の利益のためではない


僕も含めて、周りのみんなが安心して、

笑って過ごせるために

楽しく過ごせるために

未来を人が創り上げていくからいいのだ


人はやっぱり、ちゃんと出会って、助け合う

機械やロボットに頼り過ぎず、ほどほどに

丁度良い使い方を考えましょう

丁度いい関係を保ちましょう

創意工夫は過程が楽しい


僕ができること

それは、希望ある未来を語ること


僕ができること

それは、子どものわずかな興味を引き出すこと


伝えたい

わくわくする気持ち


伝えたい

本当の喜怒哀楽というものを


贅沢は言わない

一人でもいいから、未来に夢を抱き

希望に満ちた子どもがいたらそれでいい


この世の中は情報であふれている

世界と繋がっている


なのに、一人一人は、孤独だ

そして、興味の幅が狭い


誰かが、僕の心の声を拾って

繋いてくれたら、ありがたいな

そう思って、僕は、小説を書いている


この続きは、それぞれの読者に託したい

まずは、心の声を言葉に出そう

必ず、そこから、希望は生まれる








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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませて頂きました。 心に響く話だなと思いました。
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