7話 手紙と異変
「それじゃあ読むぞ。」
そう言って、俺は手紙を読み始めた。
「勇斗へ。やっほー元気にしてるー?みんな大好きお父さんだよ。
っとまぁ冗談はこのくらいにして、この手紙を読んでる時には俺は死んでるのやら死んでないのやら。まぁ色々と知りたいことはあるとは思うが、まずお前さんに家宝の秘剣斑目をやる。
あれは代々受け継がれて来たが、それを抜いたものは居ないという。だがお前さんが小さい頃になんと秘剣斑目を抜刀して遊んでたんだ。俺ですら抜刀出来なかったのにな。刀に認められたお前さんなら、上手に使いこなせるだろう。
1つ技を教えてやろう!その名も刹那切り。コツとしては相手を切る意識ではなく空間を裂くイメージだな。素早く刀を抜き、素早く刀を納める。まぁ最初から出来る人は少ないがお前さんならやれると信じてるよ。
あとな、母さんなんだけど、実は天使なんだ。もー可愛くて可愛くてしょうがないんだが、油断して母さんは連れてかれちった。てへぺろっ。居場所は分かってはいるが、この手紙を奪われる可能性も無くはないから書かないでおく。ただ全てを知りたいならお前さんの学校の校長に聞くといい。選ばれたなら教えてくれるはずだ。これだけは言っておく。味方を見誤るなよ。案外近いところに敵はいるもんだ。最後に、剣になる心を忘れてはいけないぞ。これは、剣持家が家宝と共に教えられてきた心だ。風邪はひかないようにな。それじゃ手紙はここで終わる。みんな大好きお父さんからでした〜。」
手紙はこれで終わりだ。親父の真面目なんだか不真面目なんだか分からない手紙はやはり笑ってしまう。
「なぁ勇斗。この手紙っていつ書かれたんだ?これだと今日より前に天魔兵達の存在を校長先生とかは知っていたかのようじゃん?」
守るの言うことはもっともだ。
この手紙が今日書かれたんじゃないとしたら、親父や校長達は、既にこうなることを予測もしくは知っていた事になる。
「俺もそれが気になって、この手紙にも校長に聞けって書いてあるから学校に戻るところだったんだ。」
ふと羅門刑事が後ろを振り向き、「おい、坊主。学校着いたら刀を返そう。だが使うのは禁止な。もし仮にその天魔兵とやらに会った時だけ使っていいぞ。」
刀を返してもらえるのはありがたいことだ。まぁ腰にさげてるだけでもそれだけで少しは牽制になるだろうから。
「ねぇねぇ、この手紙ってさ文字と言うより記号に見えない?五十音表だけで読めちゃうんだもん。」
聖の問いかけも俺が気になっていたところだ。この親父の手紙はこの五十音表だけで全て読めてしまう。つまり漢字とかが無いのだ。
この手紙にはまだ何か謎が隠されている気もするが、まずは校長に話を聞くのが先決だ。
「前田、学校まで後どのくらいだ。」
「この角を曲がった突き辺りですね…あれ?」
前田刑事がふいにすっとんきょんな声を上げ、パトカーを止め、外へと出ていった。
続け様に羅門刑事、そして俺達も外へと出て、その異様な光景を目の当たりにした。
「学校は…どこにあるんだ?」
羅門刑事がまるで魔法でも見たかのように驚いた声で呟いた。
そう、学校が消えていたのだ。
学校の門はあるが、そこから先には何も無い。そう天魔兵が襲ってきたとかなら校舎の瓦礫などが残っているはずだが、草1つ見当たらないのだ。
「とりあえず門の所まで行くか。っとその前にほら刀だ。しっかり持っておけよ。」
羅門刑事から刀を返してもらった。
腰に納めて、気を引き締めて俺達は門へと向かった。
「ほぇ〜キレイさっぱり平地だなぁ。」
守が門の先を見て驚いている。
「坊主達の学校は確かにここで合ってるよな?」
羅門刑事が改めて質問をしてきた。
「確かにここです。いつも通ってる通学路だから間違いないです。」
聖が羅門刑事に答え、俺の方を見てきた。
「勇斗、どうなってるんだろ?」
「まぁ、まだわかんないけど色々見ていこうか。」
まず初めに、門へと続くこの道、そして学校の門、ここには特に変わった様子は見られない。
いつも歩いているただの通学路だ。
次に、門の内側。まぁ見たらわかるけど何も無い。だが校舎がこんな短時間に消えるだろうか?それも影も形も残さずに。唯一考えられる事はあるが、確かでは無いためまだ話せない。
さて、門をくぐり地面を少し触る。土が少し他より温かい場所がある。そしてなにより、門の内側の地面の土が少しもりあがっているところを見ると、俺の考えは確信に変わる。
まぁ、普通ならありえない状況だが天魔兵やらありえないものが出てきてる今ありえなくもないと思う。
みんなを門の外へと呼び出し、俺は話し始めた。
「まぁ、とてつもないこの状況なんだが、またありえないことを言う。学校はおそらく下だ。」
俺は地面を指さしながら話した。
「待って勇斗君。下って地下のことかい?そんな校舎を入れれるほどの広さって作るだけでも何年もかかるよ!?」
前田刑事はお手本のような驚きっぷりで俺に言った。
「そうなんです。何年もかけて作るような巨大地下をまさに何年もかけて作っていたのでしょう。まさにありえないことですが、今日この天魔兵が現れることを、何年も前に知っている人たちがいたとしたらどうでしょう?」
「あっ…。」
一同は多分同じ人物を思い浮かべただろう。
「そう。それはまさに親父の手紙や今朝の緊急の全校集会を開いた校長先生です。」
「でもよ、仮に地下にあるんだとしたらどうやって行けばいいんだよ。」
守がブツブツと文句を言うように言い放った。
「安心しな。1ついつもと違う違和感を見つけたから。」
そうして俺は、門の方へと近づき、ある1つの場所を指さした。
そこには、家についているようなインターホンが備えられていた。
「もしかして、これを押すってこと?」
聖がもはや当たり前のことを聞いてきた。
まぁ、押さなければ何も分からないので先に押しても良かったんだが何が起こるかも分からないので後回しにしていたのだ。
「そゆこと。とりあえず押すよ。」
そう言いながら俺はインターホンを押した。