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1話 始まりの全校集会

まだ肌寒い風が春の訪れを先延ばしにしているかのような3月15日の朝

「おはようございます。」

「あら、おはようございます。いつも早いわね。」


ご近所さん達に挨拶をしながら道を歩く俺の名前は剣持けんもち 勇斗ゆうと

性格的には、あまり人と話すのが嫌いな方である。

でもなぜご近所さんに挨拶をするかと言うと、それは俺の家がここらじゃ有名な家だからだ。

剣持家は江戸時代から続く、剣持流剣技の本家なのだ。

剣持家に生まれた俺だが、剣術は一切身につかず、俺は中学に入ると同時に道場に行くのを辞めてしまった。

それ以来、人と話すのも面倒くさくなって俺は基本的に挨拶以外では話さなくなった。


ただ、テンションが上がったり、テンパったりすると別人のように口数が多くなり口調も変わる癖がついてしまった。

だから俺は常に頭を冷静に保っていようという事を頭に置きながら日々を過ごしている。


「おーい待って〜」

ふと後ろから声がして振り返ると漫画のようにトーストをくわえて彼女が手を振りながらこちらへと迫ってくる。

彼女の名前は剣夢つるゆめ ひじり

彼女は俺の幼なじみである。


剣夢家は、剣夢流拳技と言う技を使う流派である。

昔から剣持家と剣夢家は対立関係にあり、どちらが本家かと言うのを賭けて、衝突を起こしているらしい。

俺の親父も聖のお母さんとこれまでに1000戦は試合をしているらしいが、いつも結果は引き分けに終わっているという。拳技とは一体どのようなものなのか少し興味はある。


何より俺は、聖のことが好きだ。

だが、漫画やドラマじゃないからこの恋は諦めている。


何故かって?聖にはどうやら彼氏がいるらしいのだ。

だから俺なんかに着いてこずに彼氏と帰ればいいと前に言ったのだが毎日登下校の時、後ろから着いてくる聖に俺はいつも呆れている。


「こんな道中で声をかけるなよ…」ため息混じりにそう呟きながら、彼女が追いついてくるのを電柱にもたれながら待っていた。

「いつも一緒に行ってるのに、なんで先に行っちゃうの〜も〜。」

(お前が勝手に着いてくるだけだろ)そう思いながらも「早く行くぞ」と言うと足早に登校を再開した。


「勇斗くんおはよう〜。」

「えぇ、おはようございます。」


靴箱に靴を入れ教室へと向かう最中も、すれ違う人に挨拶をし席へと着いた。

学校でも愛想笑いをしないといけないとは、とても疲れる。

「うぃっす〜」と後ろから声をかけてきたのは俺の唯一の親友の盾中たてなか まもる

こいつとは小学校からの仲で、唯一会話が出来る親友である。

こいつは昔から名前通り守ることに関しては一流である。

初めは小学校のサッカークラブ、守がゴールキーパーに入ったチームは必ず無失点。それは中学、高校と精度を増し、今では無失点の守護神と呼ばれるようになった。

高校にもスポーツ推薦で合格してしまうほどのいわゆる天才だ。

「おい守、今日は宿題やってきたんだろうな。」

諦め混じりにそう聞いてみると、

「なぁ勇斗、俺がやってくると思うか?今日の分もよろしゅう〜。」

とニヤついた笑顔で答えてきた。

完全に諦めた俺は、宿題を守に渡すとカバンから荷物を取り出し始めた。


(ん?なんだこれ?)

それは入れた覚えのない一通の()()()()だった。

俺はすぐさま封筒の中身を確認することにした。

すると1枚の紙が入っていた。


《この紙を受け取りし者へ》

この紙を受け取ったものは選ばれし者だ。

3月15日に戦いは始まってしまう。

どうかこれを受け取りしものは、日本を守ってくれ。


「ふんバカバカしい。こんな低レベルなイタズラするやつがまだいるのか。」俺は鼻で笑いゴミ箱へと捨て、何も見ていなかったかのように平然と席へ戻った。


ホームルームが始まる時間になっても、担任が教室に来なかった。

「呼びに行ってくる。」

俺がそう言うと同時に、先生が慌てて教室へと入ってきた。


「すまん!今から緊急で全校集会をやることになった。すぐに体育館へ向かってくれ。」

はぁはぁと息を切らしながら、早口で要件を伝えた担任は、どこか焦っているようにも感じた。


全校集会の前体育館の中は、相も変わらずお喋りし放題の無法地帯となっていた。

だが俺はある噂が出ていることに気付き、耳をすました。


(なぁ今日の全校集会の内容知ってるか?)

(いや知らねぇよでも緊急なんだよな?)

(今日、日本が終わるかもしれないって話だと思うんだよな。ネットでも少し話題に上がってたし。)

(はぁ?日本が終わる?なんで?)

(いや詳しくは知らねぇよだか…)

キーーーーーーーーーーーーーーーーン


耳をつんざくようなノイズ音に体育館の中は静まり返った。


「えーそれでは、全校集会を始めます一同、礼。」

教頭の行儀正しい掛け声とともに全校集会は始まった。

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