第2話 面倒なクラスメイト
編入初日、さっそく俺エルドは生まれも育ちも騎士の家というエリート三人組アン・ドレ・アルに絡まれていた。
俺からしてみたら子狡い手どころか剣技のけの字も使えない。ケンカを売るならもっとマシな相手を選んだ方がいい。
「あれはたまたま拾った剣の性能が良かっただけで命拾いしただけだから買いかぶらないでくれ」
と『自分の魔法で精製した』という点だけをはぐらかして正直に白状した。が、学園という閉ざされた世界において独り歩きした噂話ほど否定するのは難しい。
「嘘つくな!お前の実力確かめさせてもらうぞ」
とアンが勇んで挑戦状を叩きつけてきた。なんと答えたら正解だったのか是非教えてもらいたいところである。
プライドの高い騎士様もどきの学園は非常に面倒だ・・・まだ育ててる薬草にブツブツと一日中話しかけていた元同級生のリフールの方がましだ、と思っていたらーーー
「アン、そこまでだ!朝のクラスルームが始まるから席に着け」
そう言って制止させたのはクラス委員長のラヴァエル。この名門帝都ガーディス学院の中でもさらにエリートの集団であるSクラスのトップである。正直助かった。
「ありがとう。助かったよ、えっと・・・」
「ラヴァエルだ。君のためではないので礼は不要だ」
あっそう・・・。なんか殺伐としてるなぁと内心ドキドキしつつも、入学1発目からのいざこざは有耶無耶になって終わった。
☆
しばらく待っていると先生がやってきた。
「それでは、朝のホームルームを始める。まず最初にみんな知っていると思うが本日より我がクラスに転入生がやって来た。エルド君、前へ来て自己紹介を頼む」
「はい」
先生に促されるまま俺は教室の前に出て自己紹介をさせられる。俺はこの自己紹介というものがメチャクチャ苦手である。
何を言ったらいいかわからないし、変に目立つ可能性も大とくる。そんな罰ゲームイベントを乗り越えるべく無難な言葉を慎重に紡ぐ。
「本日より帝都ルビス魔法学院から帝都ガーディス学院に編入しましたエルドです」
「両親に迷惑をかけないようにそれなりの成績で卒業出来るよう頑張ります・・・・・」
なんか俺的に冗談を含ませた二言目の文を口に出した瞬間にクラスがピリついたことを直観的に感じた。
俺なんか言葉間違えた・・・?
「これからよろしくお願いします!」
パチ・・・パチ・・・パチ・・・・・
と2~3名の拍手がまばらに響いて俺の自己紹介は終わった。
それと同時に俺の学校生活も終わったと自覚した。
針のむしろの中で朝のホームルームが終わった。
うなだれている俺の所にクラス委員長ラヴァエルが現れた。
「エルド君。これからよろしくね」
さわやか金髪王子みたいなラヴァエルから握手を求められた。
なんだよ天使かよ。救いの手差し伸べてくれたよ委員長。一生ついて行くわ。
と慌てて俺も席を立ち握手を返すとーーー
「まさか、皆が一流の騎士を志して切磋琢磨するこのSクラスに"それなり"なんてやる気のない事を言う奴が来るなんて思ってもみなかったよ」
耳元で突然の小さな声の斬撃を放ってきた。同時に俺の身体が宙を舞い、気が付いたら机に仰向けに寝ていた、痛みが全くないのだから凄い技術だ。
その一連の流れを見ていた周りの連中はクスクスと笑っている。
(この学院の連中めんどくせええええええええええええええええええええええ!!!!!)
俺の心の叫びは虚空に消え、長い初日はまだまだ終わらない。
コミケでのサークル出展も終わりました。
まさかまさかの嬉しい感想頂けましたので予定はなかったのですが
こちらの作品の連作を再開しようと思います。
再開直後に胸糞ですがどうか続きをお待ちください。