44.残された神2
44話目です。
ノックをしても一向に返事がないので扉を押し開く
…お、重い…。
「なんだ、開かないのか?」
笑いを殺した蘭娥が扉に手をかけると、簡単に扉は開いた。
「…開きましゅたよ3mmぐらいは。」
「それは開いたとは言わないんだ。ククッ…」
蘭娥の口元から笑いが漏れ出る。
ロイカは現在、己の顔が酷く仏頂面になっているんだろうなと感じた。
…少しでも開いたなら、開いたのでしゅよ。
扉を開けると二階部分へと続く大きな階段が真ん中にどん、とあった。
「ディリア様はどこにいるのでしゅか?」
「おそらく、こっちだな。」
蘭娥は正面の階段を登ることはせず右側のアーチを潜る。
「こっちは陽塔…リティアの住居なんだが。…ああほら、居た。ーディリア」
三階部分まで進むとリティア様の部屋らしく可愛らしい戸棚と机、それからベットに腰掛けて虚空を見つめるディリア様がいましゅた。
おもむろにディリアはこちらを向いた。
その顔が、あまりにも生気のないけれども、目は酷くギラついて黒い煙のようなものを周囲に纏うものだからロイカは思わず唾を飲んだ。
…怖い、でしゅ。
「ロイカから話があるそうだ。」
蘭娥がそう言ったことでディリアの畏怖で動けなくなっていたロイカはここに来た目的を思い出した。
「お久しぶりでしゅね、ロイカでしゅ。私からリティア様に関してのお話がありましゅ。」
「リティア…?」
ロイカはうなずく。
「私が転生する前、見つけた秘薬の一本をリティア様に渡しましゅた。…私の飲みかけでしゅたが、あれは本当に秘薬だったのでしゅ。効果は記憶を保持した転生…だと思いましゅけど。」
蘭娥は大いにうなずいた。
「それに関しては納得だな。神の御印の効果は記憶に関与しない、魂の深いところで神との繋がりが残るだけだ。神と人との約束ー…契約でさえ、転生後の記憶は関与はない。」
「リティアは…っ、還帰ってくるのか…?」
ディリア様はギリとはを食いしばって、ロイカの両肩を強く掴んで大きく揺らす。
「…っ!い、痛い…でしゅ。」
それを見るなり蘭娥は二人の間に割り込むと、「今日のところは、お終いだ。ロイカ、約束通りだからな。それからディリア、次回会う時まで頭を冷やしておけ。」
そう言った蘭娥はロイカを背に庇って、ディリアの耳に口元を寄せて囁く。
「ロイカは脆弱な精霊さ。…傷つける事はこの一柱、蘭娥がゆるさない。」
言い終えた蘭娥は踵を返すとロイカの手を取った。
「…ロイカ、帰ろう。」
「…でも。…でしゅが約束でしゅたね、帰りましゅ。」
後ろが気になって、半ば蘭娥に引きずられように部屋を出る。
チラッと後を振り返ると一歩も動かず俯く神がいた。
「…そうだな、それが安全だ。」
そんな悲しい事をいう神の、神殿を後にした。
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