39.二人の病人
「…ぐしゅ、風邪引く予定は無かったんでしゅけど…」
「ホントにごめんなさい…」
「謝らなくていいでしゅ。あの時の私の判断でしゅし。」
あの後、強風はロイカがコントロールして防いでいたものの冷たい雨は体温を奪っていった。ミンティー達のいる場所に戻る頃にはすっかり寒さに震えていた。その様子をみて水精霊だったらしいリッダさんが、雨をしのがるように力を使ってくれた。とはいえ既に風邪をひいていたのだろう。
翌日家に帰ると、二人の病人はミンティー姐さんに強制的にベットに連行されて来たのだった。
抗う事も出来ず、病に侵された二人は大人しく並べられたベットの上で休んでいる…と言いつつも暇で仕方なく、ベットの上の隣人は互いに話し込んでいた。
ぽつりとマヴィムは話しだす。
「…なんとなく、ミンティー姐さんに置いてかれたような気がして。追いかけなきゃって思ったの。…今でも私はここが故郷ではないから、ひとりぼっちが怖いだけなのかもしれない。」
「マヴィムの故郷…でしゅか?」
てっきりリラの森出身だと思ってましゅた。
そう返したロイカに違うわ。とマヴィムは首を横に振った。
「ここのリラの森出身じゃないのよ、私。白神街のすぐ隣の森出身なの…酷い戦乱の世の中で、私はほんとの姐さん達をうしなってしまったの。」
「…惨めだった。森を歩き回ってたところをミンティー姐さんに拾われたの。」
「また、置いていかれたらどうしよう…って思っちゃったの。」
私も馬鹿よね、ミンティー姐さんがそんな事するはずないのに。毎年毎年帰ってくるのに、私だけがいつも送り出す側だったから、今年はロイカが増えて三人でもやっぱり私はお留守番だったから。…頭では私は風の精霊でないなんてわかってたのに。」
乾いた笑いをマヴィムは目の塩水と共に枕の上にこぼした。
…一人置いてきぼりが恐ろしいのは、私も知ってましゅ。
ロイカはただ、そっとマヴィムの手をぎゅっと握った。
*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*〜〜〜*
「入るね?タマゴ粥できたよ…ちょっと、二人とも病人なんだから大人しく寝てなさい。」
湯気の立つ2皿のタマゴ粥。
「…マヴィム、確かに風の精霊でも水の精霊でもないのにあの場に行ったこと良く無かったよ。勿論、私の留守を任せた事を放棄した事もね。…でもって、何故そのような事をしたの?」
「ご、ごめんな…さい。」
震えた声で謝罪の言葉をマヴィムは述べた。小さく頼りげのない声だった。
「一度だって私の言う事聞かなかった事なかったマヴィムだから、余程のことだったのでしょ?」
ミンティーは両手をマヴィムの手に重ねた。
「だから、今回のことはもうこれで終わり。…ところでさっき二人で何、話してたの?」
マヴィムは少しロイカに目配せをした
ーーさっきの話はミンティー姐さんに話すには恥ずかしいから内緒。
「大した事は話してませんから。ね、ロイカ。」
「そうでしゅね。」
「二人とも仲良いじゃない。」
…よかった。ミンティーは小さく呟いた。
お読みいただきありがとうございます。




