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世界の何処かの診療所  作者: 青嵐
1章・薬師の弟子
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29.黒紙所持者

29話目です


「えっと、ここでしゅね?」

大きな白い門である。その奥からは何も音が聞こえない、中をここからうかがい知る事は不可能のようであった。


「うん、私達はここまでしかついていけないから…そこの門番に黒紙を渡せば入れてもらえるよ。」

隣に並んでいたリティア様はロイカの背後に回るとそっと背中を押し出した。


「リティア様…私がここに来て初めての患者様でしゅ。転生してここに戻って来たらリティア様の病気をちゃんと治療しましゅから、元気で待っていて下しゃいね。それからーー」


ロイカとリティアが4.5歩前に出ている感じで、ちょうど二人の保護者達は少し後ろに控えていた。角度的に保護者からは何も見えない位置である。


ごそごそとポケットから取り出した小瓶をリティア様に差し出す。


ここに来る日の早朝、ポケットの中に入っていた例の小瓶を発見したのだった。


…あの時思わず入れてしまった物でしゅ。あの中の4本は蘭娥様にあげるつもりでしゅたのでこの一本ぐらいは好きに使ってもいいでしょう。


ディリア様に悟られないように早口の小声で話す。


「私が持っていても仕方のない残りものでしゅのでリティア様にあげましゅよ。取ってきたモノでしゅし効力があるかはわかりません。…使う使わないは自由でしゅけど、中身はわかってましゅよね?」

「秘薬、よね。でもー」


リティア様は戸惑いの色を浮かべたがそれには構わずロイカは小瓶をロイカの手に押し付けた。

「ディリア様を悲しませたくはないでしょう?…ホントに死にそうになって藁にも縋るつもりで飲む最終手段として持っていてくだしゃい。」


やがてリティアは小瓶を手のひらに握って、たしかに縦に首を動かした。


それを見届けるとロイカは蘭娥の方へもどって一礼した。


「ディリア様も転生した後にお会いしましょう。」

「そうだな。」


くるり、方向転換をして蘭娥様の方に向き直る。


「それから蘭娥様、ありがとうございましゅた。…秘薬の話なんでしゅけど律儀に二人で半分って話でしゅたけど…要らないので勝手に研究にでも使って下しゃい。また会う日まで。」




蘭娥が知らないにしても、既にロイカは一本拝借しているので遠慮ではないし、ましてや必要なものでもないので4本ともをあげてしまうのは別段惜しくない。

「そうだな。…暫しの別れだな。」


差し出された小瓶、躊躇いがちに蘭娥様は二本の未開封の薬を受け取った。


すべき事は済んだので門の方に向き直る、未だ背を向くリティアは微動だにしない。


「…ありがとう、ロイカちゃん。」


固まったままのリティア様を追い越した時、小さな声が聞こえたような気がしましゅた。


お読みいただきありがとうございます。



…ちょっと投稿遅くなりました、現実世界が忙しい…。

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