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瀧川おばさんとベルゼブブおばさんのほっこり異世界子育て騒動  作者: ネオ・ブリザード
第二章 勇者ふたり、次の日も魔界に遊びに行く
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第3話 恵ちゃんの通う『魔法学校』

 お出かけの準備を済ませ、庭に出る瀧川優と卓人。誰かを待っているようだ。すると、隣の家から、清三郎と恵ちゃんが出てくる。


「すまん! 優、待たせたな」

「おはよう……ございます……」


 遅れたことを謝る清三郎と、挨拶をする恵ちゃん。どうやら、四人でお出かけのようだ。


「おはようございます! 恵お姉ちゃん!」

「おはよう、卓人くん」


 卓人が恵に駆け寄って挨拶をすると、卓人の頭を撫でながら挨拶を返す恵ちゃん。

 四人の服装はというと、瀧川優と清三郎は、プレートメイルを着けている。卓人は普通の服装。恵ちゃんは、よく、魔法使いが使う三角帽子をかぶり、ローブを着て、その上からマントを羽織っている。


 瀧川優は、恵ちゃんの前に屈むと、


「おはよう、恵ちゃん。魔法学校の方はどう? 楽しい?」

「ふつう……です」


 瀧川優の質問に、恵ちゃんは目を反らして答える。


 この異世界には、魔法学校が存在する。他にも、剣術学校、防術学校等、多種多様の学校が存在する。中でも、農耕学校は、ここ、バルカス王国において、スプリハルの街にのみ、設立されている学校である。


 それぞれの学校に通えるようになるのは、八歳から。恵ちゃんの通う魔法学校は、魔法の使い方を教える施設。この異世界も、他の異世界同様【火属性】【氷属性】【風属性】【土属性】といった各属性の攻撃魔法や、負傷したり病気になった身体を治療する【治癒魔法】が存在する。しかし、他の異世界に存在する魔法に対して、この異世界の魔法は少し異質かもしれない。


 普通、各属性の攻撃魔法というのは、自然界に存在するもの、例えば、火属性の場合、火山のマグマを呼び出し、それを魔族にぶつける、等が挙げられる。そしてほとんどの場合、各魔法の強さによって固有名詞がつけられるがこの異世界にはそれが無い。各魔法の強さに対して、固有名詞が付いて無いのだ。どういう事なのか?


 攻撃魔法の基本は全て同じだからである。

 火属性の場合は小さな炎を、氷属性の場合は小さな氷玉を作り出す事から始まる。そして、それらを大きくして威力を高めていく。ひとつの属性を修練し、極めれば、業火をも生み出すことも出来るようになる。


 感覚としては、最初は水道の蛇口から水がチョロチョロ出ている。そして、水の威力を高めるために蛇口のハンドルを回す……。すると水が勢い良く出てくる。そんな感じだ。だが、業火を生み出すようになるには、人間の寿命では不可能と言われている。


 とはいえ中には「◯◯ファイヤー!!」とか「◯◯サンダー!!」とか、魔法に名前を付けている者もいるが、あれはただ、高威力の魔法を使えるようになった魔法使いが、格好つけているだけである。


 ちなみに、この【四属性】を組み合わせれば、ほぼ全ての魔法を繰り出すことが出来る。これを、この異世界では【混合魔法】と呼んでいる。


 混合魔法だからと言って、別段、極端に強力な魔法になる理由ではない。例えば、吹雪を起こすにはどうするか? それは氷属性と風属性を組み合わせる。まず、氷属性で氷を作り出す。それを風属性で氷を吹き飛ばせば、吹雪の完成だ。氷属性の部分を火属性にすれば、灼熱の風が出来るし、土属性に変更し、岩を粉々にして吹き飛ばせば、どこでも砂嵐が巻き起こせる。


 間欠泉だって混合魔法で思いのまま。最初に、土属性で地面に亀裂を入れ、氷属性で巨大な氷を地面の亀裂に埋める。それを火属性で熱湯になるまで溶かし、最後に風属性で熱湯を巻き上げ噴射させれば間欠泉の出来上がり!使いどころが無いとか言っては駄目です。


 雷魔法が無い? それも混合魔法におまかせあれ!! まず、空中に氷属性で細かい氷を大量に出します。次に火属性で大量の細かい氷を、溶けるか溶けないかのいい感じで温めます。すると、水玉と氷が空中に浮遊します。最後に風属性で思いっきりかき混ぜれば、水玉や氷同士が接触し、静電気が発生、帯電し始めます。後は、どんどんかき混ぜれば帯電した電気は逃げ場がなくなり地面に落雷する……。はい! 雷魔法の完成です!


 ……申し訳ありません……。話がそれましたね。話を元に戻しますね。


 ……あ、治癒魔法の説明がまだでした。


 治癒魔法に関しては、更に異質かもしれない。

 普通の治癒魔法は、まず、負傷した者に治癒魔法をかける。そして、負傷した者の回復力は、その魔法をかけた魔法使いの魔力に依存する。だが、この異世界の治癒魔法は、負傷者の自然治癒力を速めるものである。


 若い体力のあるもの、身体を鍛え上げている戦士や騎士は、それなりに熟練した治癒魔法を魔法使いにかけてもらうだけで、速く治る。しかし、体力の落ちた老齢の者や、普段、身体をあまり鍛える機会の無い魔法使い等は、同じ治癒魔法をかけても、完治に時間がかかる。つまり、完治にかかる時間は【自然治癒力】と【治癒魔法】の相乗効果によって決まる。


 更にいえば、重症度によって、治せるものと治せないものも出てくる。例えば骨折をした場合、時間をかければ治癒魔法で治すことができる。しかし、腕を切り落とされた、等の場合は時間との勝負になる。直ぐにその切り落とされた腕を身体につけ、治癒魔法をかければ時間とともに、腕は元通りに繋がる。だが、切られた腕を放置し、壊死してしまうと腕は二度と元には戻らない。


 そして、他の異世界にはほぼ存在し、この異世界には存在しない魔法がある。それは、死者を蘇らせる【蘇生魔法】だ。この異世界では死んだら二度と、生き返る事はできないのだ。そういうこともあってかほとんどの国や街では、治癒魔法を総称して【魔法医学】と呼ばれている。


 恵ちゃんは、その魔法医学を魔法学校で勉強している。


「最近は何を勉強しているのかな?」

「いろいろ……で……す……」


 瀧川優の問いかけに恵ちゃんは、帽子のつばを両手でギュッと掴み、目元までおろして目を隠すと、小声で返答する。瀧川優に対して、恵ちゃんはいつも人見知り感を出す。


「恵、瀧川さんに失礼だぞ? ちゃんと顔を見て挨拶しなさい」


 清三郎が恵ちゃんをやんわりと叱るが、恵ちゃんは帽子で目を隠したままだ。


「大丈夫よ、気にしないで」


 と、瀧川優は清三郎に声をかけると、そのまま腰をあげ、


「じゃあ、皆、準備も出来たみたいだし、そろそろ出発しようか?」と、皆に問いかける。


「そうだな、忘れ物も無いみたいだし、そろそろ出かけるか」


 清三郎が答える。すると、瀧川優は右腕を高らかに挙げ、


「よーし、じゃあ、みんなで魔界にしゅっぱーつ!!」と言った。


「しゅっぱーつ!!」卓人もつられて元気良く声をあげる。


「しゅっぱつだー!!」清三郎も右腕高らかに挙げる。


「しゅ……しゅっ……ぱつです……」恵ちゃんは、小声で言った。


 いや……、卓人くん、普通の服装なんですけど……? 本当にそれで魔界にいく気ですか?


「ねー、お母さん。魔界ってどうやって行くの?」

 と、卓人くん。


「んー? えっとねー、まず、クナンの洞窟に行くんだよー?」卓人に教える、瀧川優。


 どうやら、本当にこのまま魔界に行くようです。

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