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第3話 親子喧嘩は犬も……?

「あの……、お義父さん。困ります、あまりライラを甘やかされては……」


「そうだよ、父さん! どうしてそう父さんはライラに弱いんだ!!」



 レイラさんとゲルファさんは一緒に立ち上がると、ライラちゃんを可愛がりすぎないよう、グラジさんに注意をします。何故なら、グラジさんのその孫娘のあまりの溺愛ぶりは、両親であるレイラさんとゲルファさんにとっては、ひとつの悩みの種でもあったからです。


 しかし意見されたのが堪にさわったのか、グラジさんは孫娘を抱っこしたままレイラさんとゲルファさんに反論をします。



「なんじゃ、なんじゃ? まるで儂が孫娘を可愛がるのが悪いような言い方じゃな? 大体、レイラさん。ライラちゃんがひとりで外に遊びに行こうとしたのも、あんたが母親としてライラちゃんの気持ちを察してやれんかったからじゃないのかい?」


「……そ、そんな事はありません! 私は、娘の事を……、ライラの事を自分の命よりも大切に思っています!!」


「そうだよ! レイラは良くやってくれているよ! それなのに、父さんは何でいつもレイラに強く当たるのさ!」



 レイラさんとゲルファさんの言葉が口火となり、親子喧嘩が始まってしまいます。この家ではいつものことですが、ライラちゃんは、喧嘩するお母さんやお父さん、おじいちゃんを見たくありません。



「ねーねー、おじいちゃん……」


「おお、ライラや。すぐ終わるからちょっと待っていなさい」



 ライラちゃんは喧嘩を止めようと、グラジさんの胸元をくいくいと引っ張り話しかけますが、グラジさんはその気持ちに気づかずライラちゃんを床に下ろしてしまいました。


 ライラちゃんはグラジさんのズボンの裾を掴みながら、ただ呆然と、三人の喧嘩の様子を見つめます。



「そうは言うがのぅ……、レイラさんや? ライラちゃんがいつも儂に甘えて来るのは、レイラさんが母親として頼りないからじゃないのかい?」


「そ……そんな事……、無いはずです。私は、ライラがひとりでどこまで出来るか、怪我をしないかどうか、母親としてちゃんと見守っているつもりです!」



「父さん、いい加減にしてくれ! レイラは娘を……、ライラの事を大切に想っているよ!! 大体、さっきから甘やかすのが正しいみたいな言い方しているけど、父さんのは甘やかすのを通り越して、過保護になっているじゃないか!!」



 息子に痛いところを突かれたグラジさんは、怒りのあまり顔を真っ赤にさせ、その矛先はゲルファさんに向かいます。



「な、なんじゃと!? 儂のどこが過保護じゃと言うんじゃい!? ただ、可愛い孫娘の言うことを全部聞いて、遊んでやっているだけじゃろが!?」


「それを世間一般的になぁ、過保護だって言うんだよ!! 何度同じこと言わせたら解るんだよ!? いい加減に気づけよ! このもうろくジジイ!!」


「あ、あなた……、それにお義父さんも落ち着いて……」



 息子に『もうろくジジイ』と言われたグラジさん。更に頭に血が昇ります。加熱する親子喧嘩をレイラさんは懸命に止めようとしますが、グラジさんとゲルファさんの口は止まりません。



「……い、……いい、……いいいい言うに事欠いて、もうろくジジイとは何事じゃあ!? 親に対してその言いぐさはなんじゃあ!? こん、馬鹿息子がぁ!?」


「もうろくしているジジイをもうろくジジイと言って何がおかしい!? そんなんだから加齢臭もするし、口も臭いんだろうが!?」


「……お、お義父さん、とにかく落ち着いて下さい……。あなた……今、それ関係無い……」



 言ってはいけない事を次々に口にするゲルファさん。とかく血の繋がった息子や娘というものは、身体的弱点を突いてくるものです。レイラさんはもう喧嘩を止めるので精一杯です。



「な、ななな……なんじゃとーー!? 儂の口が臭いなんぞ、あるはずなかろうがーー!? 第一臭かったら、ライラがはっきりと言うとろうがーー!!」


「ライラは優しいからな、親父が傷つくと思って言わなかったんだろうよ! そんな事にも気づいてやれないなんて、やっぱり親父はもうろくジジイだな!!」



 もはや収拾がつかなくなってきた親子喧嘩ですが、そこに割って入ったレイラさんの一言が事態を沈静化させます。



「……あら? ライラは……?」


「え? ライラ、居なくなったのか!?」



 ゲルファさんはレイラさんと一緒に辺りを見渡し、ライラちゃんを探します。しかしグラジさんは年の功なのか、そんなふたりを見ても焦らず自分の足元に手を添え、ライラちゃんの頭を撫でます。



「ふたりとも、何をそんなに慌てとるんじゃ。ライラならほれ、ちゃんと儂の足元に」


「居ないから慌てて探してるんじゃないか」


「ほ……?」



 ゲルファさんの言葉を聞いたグラジさんは「何を馬鹿な」と、見事に空を切る右手を笑顔で二度見、三度見します。そして、やっと真実を知ったグラジさんは大声をあげ、あわてふためくのでした。



「うおぉーー!? ライラーーーー!!!! どこ行ったんじゃーー!?」


「遅いですよ!!」

「遅いよ!!」


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