表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瀧川おばさんとベルゼブブおばさんのほっこり異世界子育て騒動  作者: ネオ・ブリザード
第二章 勇者ふたり、次の日も魔界に遊びに行く
18/24

第12話 そして一段落

 ベルゼブブはようやく気を落ち着かせると、さたんちゃんに声をかける。



「申し訳ありません。このベルゼブブ、サタン様にお見苦しい姿をお見せしました。でも、もう大丈夫です」



 そして、さたんちゃんの頭を優しく撫でると、闇騎士隊の方へ振り向き威厳を見せようと、気丈に振る舞う。



「よいですか!? 今後、このようなことは無いように!! 次はありませんからね!?」


「ははーっ!! 申し訳ありませんでした!!」

「ははーっ!! 申し訳ありませんでした!!」



 闇騎士隊の反省の念を見届けたベルゼブブはやんわりと、声の調子を落とす。



「では後は皆、通常警備に戻ることを許します。ゆめゆめ、油断してはなりませんよ?」


「はっ! ではこれより闇騎士隊は、ベルゼブブ様の命により散開いたします!!」



 デスナイト隊長はそう告げると、漆黒の一団はサタン城に三々五々に散ってく。


 隊員が散開していく中デスナイト隊長は歩みを止め、ふたりの勇者に背を向けたまま、ぼそりと呟いた。



「我々……いや、私は貴様達を認めたわけでは無いからな……」



 その声は勇者達に……、まして、ベルゼブブの耳にも届くことは無かった。



 ベルゼブブは漆黒の一団が視界から消えるのを確認すると「はぁ……」と深く溜め息をつき、事態を収拾できた事に安堵する。

 ……と思ったのも束の間、ベルゼブブは勇者達に振り向き様に指を差し、叱咤する。



「何をやっているのよ!? 貴方達は!?」


「おおぅ……!」

「おおぅ……!」



 突然、怒声を浴びせられた瀧川優と清三郎は驚いてしまい、身体をびくりと震わせてしまう。



「本当に昨日の今日でサタン城に来るなんて!! 一体何を考えているの!? 魔族の中には人間に不信感を抱いてる者はまだいるのよ!? 少しは緊迫感を持ちなさい!!」


「す、すみません……」

「す、すみません……」


「今回は何とかなったから良かったけど、何かあってからじゃ遅いのよ!? 子を持つ親である貴方達なら解るでしょ!?」


「お、仰る通りです……」

「お、仰る通りです……」



 瀧川優と清三郎は、ベルゼブブに深々と頭を下げて陳謝すると、清三郎が一歩前に出て、両腕を広げながらお礼を述べる。



「しかし、今回はベルゼブブさんにお骨折り頂けたお陰で、本当に助かりました」


「……あ、いえ、サタン城を預かる者として、当然の事をしたまでですから……。私も、少し言い過ぎました」



 両手の平を清三郎の方へ向け、頬を赤らめるベルゼブブ。



「私達も、少し軽率でした。あり……」



 清三郎がお礼を述べていると、右腕をくいくいと引っ張る少女がいる。



「……なんだ? 恵?」


「お父さん、ちょっといい?」



 恵ちゃんの呼び掛けに答える清三郎。



「……ああ、すぐ行くから、少し待っててくれ。……優、すまないが、少し外すから後を頼む」


「分かったわ!」



 清三郎は瀧川優にその場を任せると、恵ちゃんと一緒にその場を後にする。



「……どうしたんだ? 恵? 何かあったのか?」


「うん、あのね……」



 恵ちゃんはベルゼブブを深淵を覗くような目で見つめながら、清三郎に問いかける。



「お父さんは、あの女の人のこと、どう思っているの?」


「……もしかして、ベルゼブブさんの事言っているのか? どうって……まあ、素敵な女性だなあ、とは思うけど……。どうしてそんな事聞くんだ?」


「……ふーん、好みなんだ……」



 そう言うと、恵ちゃんは小走りで瀧川優とベルゼブブの元に戻っていった。



「……恵?」



 そのうしろを、清三郎は不思議な顔をしながら追って行く。


 清三郎親子が瀧川優の元に戻ると、ベルゼブブに怯える卓人くんがいた。


「あのおばさん、怖いよー!!」


「大丈夫だよ、卓人! あのおばさん、怖くないよー!」


「ごめんね、おばさん、怖がらせるつもりなかったの!」



 現状を把握するために、清三郎が尋ねる。



「どうした? 卓人くん、どうかしたのか?」


「ああ、清三郎。ほら、ベルゼブブさんが私達に大声出したから、それで卓人が怯えちゃって……」


「……なるほど」



 ベルゼブブに怯え続ける卓人くんに向かって、さたんちゃんが声を上げる。



「べ、ベルおばさんは怖くないよ! すごく優しいもん!」


「サタン様……」



 ベルゼブブが悪者扱いされている感じがするのか、気が気でなくなる。

 瀧川優はそんなさたんちゃんに、卓人くんを顔合わせさせようと奮闘する。



「ほーら、卓人ー? あの子は怖がってないでしょー? 卓人だけ怖がっていると、かっこ悪いぞー?」


「あの、私はもう大丈夫だから、あんまり無理強いさせないで……」



 卓人くんを何とかなだめようと懸命になる瀧川優に、ベルゼブブはおたおたするばかり。

 そんな中、瀧川優は「……あ、そうだ」とある事を思い出すと、ベルゼブブに問いかける。



「ベルゼブブさん。聞きたいことがあったんだけど……」


「……何?」


「……和平の件なんですけど、魔族の皆さんには伝わっていたんでしょうか?」



 その質問に、ベルゼブブは驚愕の答えを返す。



「……あ、ごめんなさい……。忘れてた……」



 その言葉を耳にした瞬間、瀧川優は目から滝のように涙を流した。



「伝えておいてよー!!」



 そんな光景をサタンの部屋から一部始終、見ている者達がいた。

 一郎くん達と、アザゼル親子だ。



「すっげー! 母ちゃん、かっこ良かったな!!」



 母、ベルゼブブの勇姿を見た一郎くんの目はキラキラと輝いていて、心を踊らせていた。



「でも、何ですか! あの男の子! 母さまのことを怖がるなんて! すごく頭にきます!」


「そうだよね! 次子ねーちゃん! おれ、あいつに文句いってくる!」


「まって、ひろしちゃん! 次子も一緒に行きます!」



 ひろしくんと次子ちゃんはそう言うと、勢いそのままにサタンの部屋を飛び出していく。



「あ! 待つんだ、ふたりとも!! ちゃんと部屋の中で待っていなさい!!」



 アザゼルは外に飛び出したふたりを止めようと腕を伸ばすが、次子ちゃんとひろしくんはするりとその腕を抜け、ベルゼブブの元に駆け出してしまう。



「ああ……もう。大人しく待っているように言われているのに……。リザベル? 何か気になるのか?」



 アザゼルの声が耳に入らないのか、リザベルの目はある金髪の少女に釘付けになっていた。



「……あの娘、私と同じ匂いがする……」



 リザベルはそう言いながら、鼻につく匂いを感じていた。

 その匂いは、どんどんサタンの部屋に充満していく。



「そう……、何かこう、とても臭う…………、ん?」



 その時、一郎くんが衝撃の事実を口にする。



「リザベルねーちゃん、末子のおしりが濡れているぞ」



 鼻につく臭いの正体は末子ちゃんのおもらしだった。

 リザベルは末子ちゃんをおんぶしていた為、背中がそれは大変な事になっていた。

 だが何故か、慌てるのはおぶっていたリザベルではなく、父親であるアザゼルだった。



「うおー! ほ、本当だー!! リザベル、早く末子ちゃんを下ろすんだー!!」


「パパ! 私は大丈夫だから!! それよりもパパは四葉ちゃんを見ていて!! おしめは私ひとりでもできるから!」



 こうして勇者達にとっては骨折り損な、魔族達にとってははた迷惑な騒動は、ひとまず幕を下ろす。

これにて、第2章は終了になります。


最後まで目を通して下さった皆様、本当にありがとうございます。

お楽しみ頂けたなら、嬉しく思います。


そして、子供達にきゅん♪と来ていただけたなら、ブクマ、評価の方をよろしくお願いします。


第3章も執筆に入っていますので、皆様に喜んで頂けるような、内容の濃い小説を書けるように邁進致しますので、応援、よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ