第1話 最終決戦
これは、幾多ある異世界の中の一つのお話……。
異世界にはよくある、人間と魔族との戦いがここでも起こっていたが、
それも今、ふたりの勇者によって最終決戦を迎えようとしていた……。
ここは魔界のサタン城。その最奥を今、ふたりの勇者が駆け抜けていた。
ひとりは女勇者。姓を瀧川、名を優。桃色の髪を後ろに束ね、ポニーテールにしている。背格好は少し高めでスレンダーといったところか。
いわゆるプレートメイルを装備しているが、兜は着けていない。
もうひとりは男勇者。姓は本明、名を清三郎。金の髪は短く刈り上げ、すっきりした感じだ。背格好はというと2メートルはあろうか。ぱっと見、がたいはいいと言われる雰囲気だが、ムキムキとまではいかない感じだ。
鎧は瀧川優と同じくプレートメイルを装備し、やはり兜は着けていない。
ここまで立ち塞がる敵をおいはらい、駆け抜けてきたが、
ついにサタンの部屋を目にし、それに続く階段のやや手前で歩みを止めた。
サタンの部屋を見上げつつ、優と清三郎は言葉を交わす。
「ついに、ここまで来たわね。清三郎」と優。
「ああ、残る相手はサタンだけだ。この階段を一気にかけ上がるぞ、優!」と清三郎。
しかし、このふたりの勇者をサタンの部屋の中から見つめる者がいた。
それは見た目、人間の女性であるが頭部にはハエの目と触角がついている。そこから白く美しい髪が肩にまで伸びていた。体には、漆黒といわんばかりの黒い服をまとっていて、全身から暗黒のオーラが出ている感がある。そう、ベルゼブブである。
「勇者……。ついにここまで来たのね」
サタンの部屋を薄く開けベルゼブブは言った。
「でも、ここで終わり……。絶対にサタン様に会わせる訳にはいかないわ!」
ベルゼブブは扉の方を向いたまま、
「サタン様はここにいて下さい。必ずや私があのふたりを排除してみせます」
そう言うとベルゼブブは部屋を出ていった。
「それにしてもアザゼルはなにをしているのかしら! こんな時に! 全然姿を見せないで!」と
何やら愚痴っぽいものをこぼしながらベルゼブブは階段の最上段に立つ。
ベルゼブブが待ち構えているとも知らない、勇者ふたり。瀧川優は、いざ、サタンの部屋へ続く階段へ踏み込もうとする。と、
「待て! 優!」
優の肩を抑える清三郎。その時、
「!」
突然、優の目の前に業火が広がる! そしてそれは一瞬にしてふたりの周りを取り囲む!
「いやいやいや……、それにしてもこれは……、ねぇ」
燃え盛る炎を見渡しながら瀧川優は言う。
「やはり、そう簡単にサタンには会わせてくれんというわけか!」
本明清三郎も、ゆっくりと炎を見渡す。
燃え盛る炎を少しの間見ていた優と清三郎。そしてそれを見下すような鋭い視線をどこからか感じ取る。そして、その視線の方を向くと、それは階段の最上段。そこに黒い人影をみつける。その人影はこう言った。
「我が名はベルゼブブ! 今からお前達を排除する!」
ベルゼブブはそう言うと階段の最上段から一気に飛び降り、勇者達の前の業火をも突き抜け、膝まづきながら瀧川優と本明清三郎の前に現れた。ベルゼブブはゆっくりと身を起こす。
そして……、
「え?」
ベルゼブブが上を見ると、
本明清三郎が、持っていた武器を両手持ちにし、そのままベルゼブブに向かって振り下ろしていた!
「先手必勝!」
「のひわはー!」
ちょっと変な声を出してしまったベルゼブブ。が、そこはさすがのベルゼブブ。しっかりと両腕を顔の前で交差させ、清三郎の攻撃を受け止める。
しかし……!
グボンッ!!
身体を起こしきれない半身状態だったためか、清三郎の攻撃を防ぐが精一杯になり、身体が地面に少しめり込む!
「うぐ……、く……! 不意討ちとは卑怯な!」
ふたりの勇者を業火で闇討ちしようとしたことは棚に上げ、不意討ちのことを責めるベルゼブブ。
「おまえが言うなー!!」
「おまえが言うなー!!」
優と清三郎がつっこむ。ちょっと間違えれば灰になっていたのだから当然だ。
「ふんっ!」
さらに力を入れる清三郎。
バッカン!
さらに地面にベルゼブブの身体がめり込む!
「ぐ……!」
不利な体制のせいもあるが、体型でも分が悪かった。そう、ベルゼブブの方が少し小柄なのだ。いうなれば、瀧川優より頭ひとつ分背丈が低い。ともなれば本明清三郎の方が体型的に優位になろう。本明清三郎はその優位を生かし、だめ押しといわんばかりにベルゼブブを押さえこむ。
……勝機!
瀧川優がここぞとばかりに加勢しようとすると、
「優! お前は今のうちにサタンのところに行くんだ! こいつは俺が食い止める!」
本明清三郎は、瀧川優に先に行くように促した。
「ありがとう! 清三郎! 出来るだけ早く戻って来るからね!」
そう清三郎にお礼を言うと、攻撃を受け止めたまま身動き取れないベルゼブブの横を瀧川優は、さっそうと通り抜ける。
「くうっ……、しまった! でも、周りは業火で燃えている! 灰になるのがオチよ!」
そう、周りは業火で燃え盛っている。この中を走り抜けると言うのは自殺行為にも思えるのだが、
ジュッ
なんか、ちょっと燃えるような音とかすかに焦げ臭い臭いがしたが、瀧川優はこの業火の中をしれっと抜けたようだ。
「は?」
ベルゼブブはそれはもう、これ以上はないくらいに目を見開いた。
業火をくぐり抜け、階段をかけ上る瀧川優。
「やったー! でもあついー! 死ぬかと思ったー! 死ぬ気はないけどー!」
どんどん階段をかけ上がる優。サタンの部屋はもう目と鼻の先にある。
「ま……まずい! なんとか、あいつを止めないと!」
焦るベルゼブブ。瀧川優を追いかけたいが、そうはさせじと本明清三郎が押さえこむ。
「ええぃ……! 調子に乗ってぇ……!」
このまま勝敗が決すると思われたが、寸前、ベルゼブブが身を起こしてくる。
「おおおっ!」
驚く清三郎。ベルゼブブはどんどん身を起こしてくる。
そして……!
「邪魔だ! どけぇ!」
武器を防いでいた手を振り払い、本明清三郎を突き飛ばした!!
「どわあぁーっ!」
本明清三郎の体が宙に浮く! そしてそのまま地面に叩きつけられる!
「はぁ……、はぁ……」
自由になったベルゼブブ。
「は、早く後を追わないと!」
初投稿作品です。よろしくお願いします。
表現が稚拙で、幼稚な所があり、文章の繋ぎ方も、強引な所もありますが、どうか、楽しんで頂けると幸いです。
この[お母さんは異世界でも強いのです。(お父さんも強いよ。)]は、[ほのぼのほっこり子育てファンタジー]です。連載していく予定なので、これからも、よろしくお願いします。