ダーウィンの犬たち
人間を相容れない筈の野生のオオカミが何故、どのように家畜化されていったのかを探求するフェルナンデスの旅。
ダーウィンの犬たち
三好英治
北イタリアのポー平原とアルプスに囲まれるケルボンヌ村の農家で大切に飼われている真っ黒い四ッ目のチワワが暖炉のそばで主人の帰りをいまかいまかと待っている、外は夏も終わり秋を迎えようとしていてアルプスから吹き降ろす風が吹きひんやりとした空気が周囲を包み込んでいる、一方食卓には北イタリアでよく食べられる寒さから身を守る為のバターや生クリームを多く使った濃厚な味わいの肉の煮込み料理が並んでいた、やがて薄暗くなり羊の放牧作業を終えた父親が帰ってくると、「父さん、お帰り」と六歳になる息子がドアーの所まで走って出迎え、後を追うようにチワワも尻尾を振りながら出迎えて母親を含む家族全員で食卓を囲んだ、食事を終え父親と息子とチワワが一緒になって暖炉の前でくつろぎながら談笑をしているとチワワが革製で出来たネズミの人形を噛み始め床に叩きつけるように振り回した、それを見ていた息子が父親に「まるでオオカミみたいだね」と言った、父親は「犬は大昔オオカミだったんだよ」、息子が「ええー、ウソ―こんなかわいい目をしているのにオオカミだなんて信じられない!」、「いや、本当だよ、約二万年前に野生のオオカミ達が狩猟民族の焚火の火で獲物の鹿やうさぎの肉を焼いていると肉の匂いにつられ絶対近ずかない筈のオオカミが森の中から姿を現し、そして取り巻き何時までも、その場を離れようとしなかった、そして人間が食べ残した獲物の骨をオオカミに与える事が引き金となって人間とオオカミの家畜化が世界同時多発的に起こったのが犬の起源とされている、息子は「へぇー、じゃ何故僕のチワワがでっかいオオカミから,こんなに小さくなったの?」と不思議そうに言った、父親は「大昔に人間に飼われている犬の個体の小さいもの同士を掛け合わせ徐々に小さな犬を誕生させていった人為的選択の結果なんだ、「詳しい事は、ほらこのウィキペディアに書いてあるから読んであげるよ」。
(ウィキペディア,わんちゃんホンポ,みんなの犬図鑑、その他より引用)
{1990年代以降に急速に発展した分子系統学の知見に基ずき、2000年代の時点では、犬の祖先はオオカミとする説が一般的である。つまり、人間がオオカミを家畜化(=馴化)し、人間の好む性質を持つ個体を人為的選択または、自然淘汰することで、犬という動物が成立したと考えられている、自然淘汰説(しぜんとうたせつ、英:natural selection)とは、進化を説明するうえでの根幹をなす理論。厳しい自然環境が生物に無目的に起きる変異(突然変異)を選別し、進化に方向性を与えるという説。チワワの起源は定かではありません。中国原産説、キューバ原産説、マルタ島原産説、ヨーロッパ原産説など、実に様々なストーリーが乱立していますが、最も可能性が高いと考えられるのは「メキシコ原産説」です。テチチ 7世紀頃~12世紀頃、現在のメキシコ辺りで栄えた「トルテカ帝国」や、1428年頃から1521年までメキシコ中央部で栄えた「アステカ帝国」では、「テチチ」(Techichi)と呼ばれる小さな犬が飼育されていました。この犬は、死者の魂をあの世へ導き、悪霊を追い払ってくれると信じられていたため、人の死に際して生贄として供されていたようです。遺跡から発見された大量の犬の骨から類推し、この「テチチ」こそが、現在のチワワの祖先であるという説が有力視されています。1519年、スペイン軍を率いたコルテスがアステカ帝国を滅ぼしてしまうと、この地域におけるテチチは、その後数世紀に渡って消息不明となってしまいます。現在のチワワの起源となる小さな犬が発見されたのは、時も下った1850年のことです。
[それぞれの犬種はいつ頃どんな風に育種されてきたか、どんな風に分類されるのかが明らかに]
アメリカの国立衛生研究所が、先ごろ犬の遺伝子研究からまとめられた新しい系統図を発表しました。現在、地球上には350種以上の犬種が有りますが、いつ頃どのようにそれぞれの犬種が存在するようになったかは明らかになっていませんでした。アメリカの国立衛生研究所チームは20年の歳月を費やし、世界各地から犬のDNAサンプルを取り寄せて遺伝子を解析することで犬種の出身地や犬種間の関係性を系統立てて分類し、新しい系統図を発表しました。研究のために集められたサンプルは161犬種1346匹分。愛犬家にとっても興味深い結果をご紹介いたします。犬の遺伝子からわかることは、15000~30000年前、人間が犬を家畜として飼い始めたとされる頃から、人間は犬をその役割によって選択して来ました。狩りの得意な犬、番犬として優秀な犬、家畜と共存して番が出来る犬、可愛らしい犬、それぞれに意識して選び、現在の育種の起源が始まりました。そうして作られてきた犬種を遺伝子の共通性で分類すると、全部で23のグループに分けられたそうです。
分類を見てわかったことの中でも興味深いことのひとつは、牧畜犬やワーキンググループの犬など、同様の役割のために育種された犬種は、必ずしも同じ起源を共有するとは限らないということでした。中でも顕著だったのは牧畜犬のグループです。シープドック、コーギー、コリーはどれも牧畜犬ですが、遺伝子グループは別々の違うものです。人間の生活に密接に関係する牧畜犬は、世界中の様々な場所で多くの回数に渡って選択的な繁殖が行われてきたため、同じ牧畜犬という役割であっても多様な遺伝子グループが生まれたと考えられます。また一口に牧畜犬と言っても世話をする動物が牛なのかヤギなのか羊なのかで求められる資質も違って来るので、その多様性も理にかなっています。猟犬の遺伝子の多様性も同じ理由です。また、もう一つ。現在のほとんどの犬種の起源はヨーロッパまたはアジアであることはわかっているのですが、コロンブスが到着する以前のアメリカ大陸土着の犬の遺伝子は現在のアメリカの犬には見られません。
アメリカ大陸特有の犬はすでに消えてしまったと思われていたのですが、今回の研究でペルーのペルビアンヘアレスドッグとメキシカンヘアレスドッグに、他の犬種では見られない共通する遺伝子が発見されました。このことから、この2犬種はコロンブス以前のアメリカ大陸の犬の血を受け継いでいると考えられます。思わぬ所で発見されたその土地特有の歴史と遺産に研究者たちも犬の遺伝子のロマンを感じたそうです。
犬種ごとの遺伝子を解析して分類することでわかったこと、犬の多様性の理由や出身地の歴史など興味深いですね。ひとつの生物として、これだけの多様性があるのは犬だけなのだそうです。それは人間が手を加えて育種してきた結果であり、犬と人間の結びつきの深さを改めて思い知らされます。そしてまた、人間が作り出した生き物であるからこそ犬に対して人間は責任があるのだということも強く感じます。}
父親は息子に読み終えて話し始めた、「昔、この森の奥にとっても頭のいいフェルナンデスという名前のオオカミが住んでいた、フェルナンデスはとても若々しく勇敢でケルボンヌの銀狼と呼ばれていて、ある日、崖っぷちで青白い月に向かって遠吠えしていると眩い銀色の毛並が風にゆれ月夜に照らされると、まるで最強の森の王者のようだったんだ、しかしオオカミが人間の放牧している羊や飼っているニワトリを襲うため害虫として駆除され、今や北イタリアには野生のオオカミは100頭足らずの絶滅危惧種となっていた。オオカミは足が遅くなかなか上手く狩りができないため獲物に有りつけず、いつも飢えていた。ある日、フェルナンデスとその仲間たちが狩りに出かけ、いつものように鹿たちを追い込み先に待ち伏せしている仲間と挟み撃ちで狩りをする手法だった、しかし、その日はフェルナンデスが追い込む内に脇から逸れ必死に逃げる一匹の子鹿を追いかけ木々の間の岩場まで来て、その小鹿を追い詰めて身動きできない状態にし、いつもだったら前足の一撃で殺していたのに小鹿の透き通った目で恐怖におびえ震える体から生かしてくれとの叫びが聞こえてきた、フェルナンデスは静かに後ずさりし岩場から出ていった、それを見ていた仲間が狩りを終え住みかに帰ってからオオカミの長であるアルファーに報告した。アルファーは激怒しフェルナンデスに、「貴様、食べ物を待っている子供達をどうするつもりだ、我々には情など一切必要ない我々の仲間は今や、この森に100頭足らずしかいない、それが分かっていて貴様は獲物を逃がした裏切り者だ、貴様は人間に媚びへつらう犬になればいい、今すぐここから出ていけ二度と帰って来るな。」、フェルナンデスは自問自答した自分自身の優しさがこのような結果になってしまった、しかしアルファーから犬にでもなれって犬は我々の行きついた先の姿じゃないか、プライドの高い野生のオオカミが人間に馴化され媚びへつらうという事は、きっと理由が有る筈だと思った、フェルナンデスはどうせ一匹オオカミになったんだ旅をして我々の仲間がプライドを何故すてたのか確かめに行こう、前から聞いているアルプスを越えたパリの都に沢山の犬がいると・・・フェルナンデスの疑問を解く為の旅が始まった・・・アルプスの麓を山頂に向かっていると牧場があり、その草原を進んでいるといきなり遠くからけたたましく鳴きながら突進してくる一匹の犬に出くわした、フェルナンデスの前に立ちはだかりワンワン吠えながら、「もう、これ以上なかに入るな」と一喝した、フェルナンデスは、「貴様、俺がどこへ行こうとかってだろ邪魔するな!」と言うと、「いやー、そうはいかないご主人様の命令だ、俺は羊たちを守らなければならない通す分けにはいかない」と強い口調で言い放った,フェルナンデスは、「どうしても、アルプスを越えて俺はパリの都に行かねばならない、昔、俺たちから離れ今や人間の奴隷になってる犬たちに、何故、オオカミを捨て人間にすり寄って行ったのかをどうしても聞きたい」、「奴隷って、どういう意味だ、僕だってボーダーコリーという犬種だ、俺の先祖がオオカミだなんて信じられない、だっておれは羊を追いかけるのに足がとっても速いんだオオカミは足が遅いんだろう、ご先祖さまから聞いているのは昔は北極に近いところでトナカイの牧畜の見張りを行っていたようだ、8世紀頃、北欧スカンジナビアからバイキングによってイギリス北部のスコットランドにわたり、もともといた牧羊犬との交雑が繰り返され、現在のボーダーコリーに近い形になったようだ、スコットランドの方言でCollieとは牧羊犬の意味だ、貴様、分かったか、とにかく、ここから出て行ってくれパリの都は北の方角でこの道を行けば頂上にたどり着ける。」、フェルナンデスは「有難う」と言ったら、ボーダーコリーは、「幸運を祈る」と一言言って見送った。フェルナンデスはただひたすら頂きをめざした、頂上に近ずく程気温は下がり寒さに強い筈のフェルナンデスも非常にこたえた、やっとの思いで頂きに到着したが小雪が舞い散り強烈な風で景色どころか視界さえ見えなくなってきた頂きを超え、ただひたすら下りの道を前に進むだけだったがどのくらい歩いただろうか、やっとの思いで小さな穴倉を見つけ緊急避難をした、フェルナンデスは寒さと空腹に襲われていたが暫くして眠りについた、眠りの中でフェルナンデスの体を揺り動かす何かの気配を感じた、フェルナンデスの目の前に大きな毛の深い犬が見下ろしている、「貴様は誰だ!」、「俺か?ただの犬だ、この先の聖ベルナール僧院で暮らしている、そんな事はいいから、まぁ、とにかく俺の首に下げている樽のラム酒を飲め、直ぐに温まるから」、フェルナンデスは、「てめぇらのお慈悲は一切受けない」、「頑固な事を言わないで、このままだとお前は飢えと寒さで死ぬぞ、それでもいいのか、さぁー、このチーズも一緒に食べるんだ」、フェルナンデスは飢えには勝てず樽のラム酒とチーズにむさぼりついた、フェルナンデスは、「なんて旨い酒なんだ、本当にありがとう」、と感謝の言葉を言った、「ところで、お前は何処へ行くつもりなんだ」、「俺は都に行く、俺の仲間が本当に自分らの気持ちを捨てて何故人間に仕える事ができるのかを知りたいんだ」、「知ってどうする?」、「そりゃー、人間を受け入れない野生のオオカミが何故、家畜化されたのかを知りたい」、「俺も犬だ、ご先祖様から聞いているのは我々の犬種のセントバーナードは聖ベルナール(Saint Bernard)僧院を英語読みしたもので、聖ベルナール僧院はイタリアとスイスの国境近くのアルプスの山中にある僧院でグラン・サン・ベルナール峠という名のこの道は古くから重要な交通路で冬は大変厳しく20mを超える積雪に気温はマイナス30度になる地域だ、冬になれば到底、馬を使う事ができず急ぎの旅人は徒歩で山越えをするしかなかった、われわれの先祖犬は、ローマ帝国が連れていた軍用犬のモロシア犬で、このあたりに来たのが紀元2世紀頃、当初は番犬として飼われていて数少ない山中の農家などに飼育され使役犬として働いていた、17世紀に入って深い雪中でもひるまずに進む体力や勇気、軍用犬として身に着けた探索能力が認められ聖ベルナール僧院へ寄贈された犬たちが現在のセントバーナードの基礎になった、聖ベルナール僧院は遭難者の救護所の役割も果たしていたため20世紀までに2000人以上の遭難者を救護してきたんだ」、「なるほど、君を尊敬せざるをえないねぇ」、「少し、待っていろ」と穴倉を出て行った、暫くして戻ってくると「ほら、その恰好じゃ都に入れない、さぁー、首輪と服を持ってきたぞ」、と首輪は前にセントバーナード付けていた物で服もお古で前足と後ろ足を通す四つの穴があいている真っ赤な生地に両サイドに白い十字模様が入っていた、「これで寒さもしのげるし首輪を付けていれば犬そのものだ」、と誇らしげに言った、セントバーナードのお蔭で元気を取り戻し再び都に向かった、相変わらず雪が降っていたが服のお蔭で寒さを感じなくなった、元気を取り戻したフェルナンデスはあっというまに下山した、レマン湖の畔を通りジュネーブという町に来た、通りを歩いていると見慣れない車が通る度に振り向き怯えた、フェルナンデスの周りを人が行き交い、ただただ人の視線が気になった、暫く歩くうちに広い芝生がある大きな建物の前まできた、案内板には国際連合欧州本部と書いてあった、建物の前までくるとスラッとした真っ黒い斑点を散りばめた犬がリードに結ばれ座っていた、主人を待っている様子だった、近ずいて「そこで君は何をしてるんだい」、「お前こそ、何をしているんだ、お前は犬じゃないだろう、いくらそんな恰好したって直ぐに分かるんだ」、「いやぁー、俺は犬になったオオカミを探す旅をしている、アルプスで聖ベルナール僧院のセントバーナードに助けてもらった、ところで君は?」、「おいらはダルメシアンだ、昔、ジプシーや旅商人の犬として各地を回っていた、馬と共に走り荷物の護衛をすることがダルメシアンの務めだったが、他にも番犬、猟犬、ネズミの駆除など、人間生活に近い所で様々な役割をこなして旅する人々の伴走犬としても活躍してたんだ、ところで、いまから何処へ行くんだい?」、「都へ行く」、「都って、パリ」、「ああ、そうだ」、「パリって、まだ遠いぞ、とにかく、この前の道を北西に進んで行けば辿りつける、頑張って!」と送り出した。暫く歩くと木々に囲まれた大きな公園にやってきた、ブルゴーニュ地方 モルヴァン自然公園と書いてある、とてつもなく大きな公園でこの道を抜けないとパリには着けないフェルナンデスはとにかく北西の方向を向いて歩き続けた、公園の中心部に来ると噴水がありベンチに一人の老人が座っていた、その横には飼い主に寄り添い微塵も動かず姿勢を正しく座る犬がいた。フェルナンデスは、「君はここで日向ぼっこをしているのかい?」、「私は、この主人に仕える忠実な犬セント・ジョンズレトリバーです、ご主人さまの散歩に同行し目の見えない主人をエスコートする介助犬です。」、「ところで貴方はどこから来たの?」、「俺はアルプスを越えて来た、北イタリアのケルボンヌ村から来た」、「じゃあ、大変だったでしょう」、「いやぁ、そうでもないよ、途中、君たちの仲間が助けてくれたし、これからパリに行って色んな犬たちに合いに行くんだ、犬たちのご先祖がオイラだ」、「じゃー、貴方はオオカミなの?」、「そうだよ、良く知ってるね」、「オオカミはパリには入れてくれないわよ」、「だから、分からないように首輪と服を着てるんだ、ところで君は?」、「私のご先祖はニュウーファンドランド半島から来たの、16世紀頃、この地域の入植者が連れていたセント・ジョンズレトリバーが祖先でニュウーファンドランドという犬種は、同じ地域でこのセント・ジョンズレトリバーと大型のマスティフの交配がベースになって生まれた犬種がラブラドールレトリバー同様、泳ぎ上手な水猟犬として知られている、また、祖先犬であったセント・ジョンズレトリバーは黒の毛色しかなく、チョコレートやイエローの毛色が生まれるようになったのはずっと後のことだった、セント・ジョンズレトリバーの賢さ、穏やかさ、実働能力の高さ、性格の良さでラブラドールレトリバーはアメリカとイギリスを中心に人気が高まり世界中に広がり世界で最も飼育頭数の多い純血種となった、また盲導犬としてラブラドールレトリバーを最初に使ったのはイギリスでした、現在では介助補助犬、麻薬探知犬、災害救助犬など、人間の近くで沢山のラブラドールレトリバーたちが能力を発揮して働いています」、とその時、飼い主が「君の友達かい?」、ラブラドールレトリバーは「はい」と答えた、すると飼い主が持っていた袋に入っているクッキーを出し,老人の手の上に置いたクッキーをむさぼり食うフェルナンデス、それを見ていたラブラドールレトリバーが20000年前に起きたオオカミから犬への家畜化の始まりの再現だと思った、フェルナンデスの旅がまた始まった、暫くしてパリの都が見えてきた、かなり大きな町で歴史を感じさせる風格を漂わしている、世界でもっとも美しいとされるシャンゼリゼ通りに出た、通りには沢山の店が出ている歓楽街だ、ふと見るとカフェのテーブルの横に座る、いかにも気位が高そうな、おでこには白いリボンを付け独特のトリミングでカットされた毛並をしている、フェルナンデスは、「一体全体何て恰好をしているんだい」、と思わず聞いてしまった、「何いってんのよ、あんたの方がダサイ恰好をして、このヘアーメイクが最新のフアッションよ、これが出来るのはフランスの国犬のプードルだけよ、私の先祖の発祥はロシアまたは中央アジア北部であり、16世紀までのプードルは現在のスタンダードプードルかそれよりやや大きいサイズだけ限られており使役犬として荷車を引き、水猟犬としてカモ狩りに従事するなどの働きをしていた、胸回りや足先など体の一部を保護するための被毛を残してカットされる独特のトリミングは水猟犬としてのニーズから行われたのが始まりとされている、17世紀に入る頃になると、小さく作られたトイプードルがフランス上流階級の間で愛玩犬として人気を博すようになり賢く訓練性能が良く人に親しむプードルたちはサーカスで芸を見せたりトリュフ探しに使われたりするなど様々な目的で使役され、その場に合った改良をされてきたものと考えられるって事、分かった」、「だということは君がこの町に一番似合てる犬って事か」、「そう、その通り、ところであんた、どこから来たの」、「北イタリア」、「あんたって本当にダサイ恰好ね、早く国に帰りなさいよ」、「いやぁ、まだ帰れない」,と会話をしていると向こうの方から3頭の大きな犬が近ずいてきた、「見慣れない顔だな何処のものだ」と問いかけてきた、「北イタリア」と返事を返すと「俺たちは、この町を守るパトロール犬だ、最強の犬と言われているジャーマンシェパードだ、我々は19世紀末から20世紀初頭にかけて、第一次世界大戦の少し前に我々の犬種を作り出すにあたって世界中の優秀な使役犬が候補となり基礎犬として選ばれたのはドイツの農家で古くから飼育されてきた牧羊犬だった、現在のジャーマンシェパードと区別するために原種を意味するオールドを冠にしてオールドジャーマンシェパードと呼ばれるこの牧羊犬は、牛と羊の牧畜管理はもちろんのこと荷物を引いたり番犬となったり物を回収したりと多様な働きを見せた、その知的能力と運動能力の高さに目を付けたドイツの軍人・ステファニッツ氏により繁殖計画がなされ、新しい犬種の作り出しが始まり徹底的な作業性の向上と訓練性能の向上を目的に交配を繰り返した結果、生まれたのが我々だ、ところで貴様は犬じゃぁないな」、とフェルナンデスに吠え始めた、フェルナンデスは3頭の吠えて威嚇する勢いに負け、その場を逃げ出した、その後をジャーマンシェパードが追いかけ追跡劇が始まった、フェルナンデスは歩いている人の足元を掻い潜り懸命に逃げた、その後を必死で追いかける3頭のジャーマンシェパード,ルーブル美術館の前をぬけセーヌ川の橋を渡り、そしてフランス国会議事堂を左に曲がりエッフェル塔の下までフェルナンデスはやってきた、逃げ場を失いエッフェル塔の階段を駆け上がり第二展望台までやってきた、裏のドアーを開けたところに展望台の屋根に上がる為の階段を伝い閉まっていた上部の鉄の蓋を頭で押し上げ、そして出た後に蓋を思いっきり締めた、蓋の下からは3頭のジャーマンシェパードのけたたましい鳴き声が聞こえきたが暫くすると泣き止んだ、フェルナンデスは強く風が吹く中、恐る恐る展望室の屋根の先まで出ると一面パリ市街の壮大なスケールの美しい景色が広がっていた、ふと下を見ると四方に広がる通りから徐々に集まってくる何かが見えた、列をつくり、まるで蟻んこが集まるように何万頭もの数がこのエッフェル塔の下に集まってくる様子は本当に異様な光景だった、よく見るとそれは犬の大群でパリの街にオオカミが出たとの噂を聞きつけパリ中の犬が集まり始めている、その中にはオオカミの風貌の柴犬、黒い舌が持ち味のチャウチャウ、4500年前のエジプトの壁画にもあらわれるバセンジー、猟犬でも名高いアフガンハウンド、古い歴史を持ち非常に美しい犬サルーキー、アラスカの先住民が昔から使役犬として飼っていたアラスカンマラミュート、シベリアでソリ犬として3000年以上も世代を重ねてきたシベリアンハスキー、真っ白い厚い毛を持つサモエド、ラサ・アプソとペキニーズという犬の交配によって生まれたシーズ、犬の中で足が最も速い最速犬のグレーハウンド、ファレーヌが突然変異を起こし、まるで蝶のような耳になったパピヨン、ローマ時代からウサギ狩りの猟犬として有名なビーグル、イギリス原産で、とても骨太でガチガチの筋肉質に凶暴そうな風貌のマスティフ、家畜や家族を守る番犬として活躍した犬で警戒心がとても強いグレート・ピレニーズ、ドイツ原産の牛追いや猟犬としても重要されたボクサー、イギリス原産で闘技で重用されたブルドック、カナダ原産で海難救助犬として活躍していたニューファンドランド、その他のあらゆる種類の犬が集まり、フェルナンデスの方をじぃーと見上げている、やがて暗くなりフランス国旗の三色の色でライトアップされたエッフェル塔、フェルナンデスもスポットライトで明るく照らしだされた、上空には青白く光る満月の月がエッフェル塔にかかっていた、フェルナンデスは下に向かって叫んだ「ダーウィンの犬たち、俺こそが君たちの祖先だ!」、そして月に向かってフェルナンデスは何かを訴えるように遠吠えを始めると下にいる犬たちも同じように遠吠えを始めた、その鳴き声はパリの町を駆け巡った。
終わり
今や、北イタリアに暮らすフェルナンデスの仲間たちは僅か100頭に激減し、20000年前にオオカミから人間に家畜化されたダーウィンの犬たちが繁栄を遂げている、一体全体、進化は何を意味するのか、答えはオオカミの優しい気持ちから出る知性そのものではないだろうか。