語られた悲劇1
『??ー?ー??』臣圭一郎
時間は遡る。
「ユーリィの説得だぁ?」
「あァ、テメエ以外適任がいねぇだろうがァ」
大将を見送った後、残った俺とティアの姐御はユーリィの説得について話し合っていた。
「けど、俺を信じるか普通?俺はあいつを今でも親友だと思ってるけど、あいつは違うだろ?俺を憎んでる。どうしようもねえ」
「…清人が死ぬゥ」
は?大将が死ぬ?
「姐御、何の冗談だ?大将を貶めてるなら流石にキレるぜ?」
「事実だァ。外神が敵なんだ普通死ぬだろォ」
じゃあ、何で行かせた。
ティアの姐御の行動にはボロがあり過ぎる。
最初から三人で向かえばいいじゃねえか。
俺のEXのコックピットには余裕があるのは姐御も承知している。
なのに大将を一人で行かせる意味がわからない。いざとなったら姐御の『機械仕掛けの週末』を起動すればいい。
大将を失うよりかは余程マシだ。
「…神格封鎖特異点、残影叫喚ヘルヘイム。それが今回の異変の原因だァ」
「神格封鎖特異点…まさか」
「あァ、俺は完全にお荷物になるゥ」
「じゃあ俺の単騎なら…」
「それも難しいィ。これを見ろォ」
一枚の手紙だった。
差出人はアッシュ・グレイツ。
デイブレイクの第十三位。
ただ、その内容は最早人の書けるような文では無かった。
『おじちゃんは凡ゆる次元に偏在できるから今もお前達を見ている。ちょいと危ない親子喧嘩するだけだ。手を出すな。手を出したらヘルヘイムがどうなるかわかるよな?喧嘩終わったら呼ぶからそれまで自重しろよ?』
脅迫よりも薄ら寒いものを感じた。
「…ユーリィなら権限で死に体の清人を回復出来るはずだァ。だから…」
「俺の責任、か」
ユーリィと決別したあの日に想いを馳せていると無粋にも手紙のさっきまで無かった一文がいつの間にか加筆されていた。
『そろそろ来ないと清人死ぬぞ?』
「クソが!御構い無しかよ!!」
自棄を起こしたようにEXを起動しそのまま飛翔したのだった。
◆◆◆
時間は戻る。
「…圭一郎、ユーリィの説得頼めるな?」
「ああ、任せてくれ。これは俺の責任でもある。話すのがスジってもんだよな」
大将の提案は変わらない。
だが、それは俺にとっては酷な事にかわりない。
俺は無辜の市民を皆殺しにした。
ユーリィの父親も。
「仕方ないな…大将。ちょいと時間をくれや」
◆◆◆
『束縛の騎士』ユーリィ
彼等が戻ってきた。誰一人として怪我を負っておらず勝利したのが良く分かる。
今度は何をした?
虐殺か、将又強奪か。
およそ喜ばしい事では無いのだろう。
反抗的な目付きで睨むと首元をケイイチロウに掴まれそのまま引き摺られた。
連れられて来たのは客間。
ここで今から何をするのだろうか。
「取り敢えず、聞き流しても良いからそのままでいてくれ」
「……」
「今から話すのはあの虐殺の背景だ」
ケイイチロウは重々しく口を開いた。




