あばれたよ
そこには一際大きな口がいた。
毒々しい緑色の唇。並ぶ歯は血でぬらぬらといやらしい光を放ち、口内は所々に肉片が認められ何かを捕食したのであろうということを容易に想像させた。
「ERRY!!」
先ほど惨殺した口に似た取り巻きは文字通り口々に囃し立てる。
「煩い」
大鎌をひと凪してから構えるとその口々を睥睨し跳躍ー、そして大鎌を上段から振り下ろす。
刃物の舌は俺を切り裂くべく殺到するが。
「咆哮」
不可視の音の刃が一切を切断する。
一層気が高ぶり錆色の刃は快楽を叫ぶ。
快楽を叫べば叫ぶ程に熱く、熱く不可視の音の刃を量産するのだ。
クツクツと喉の奥で反響するような笑いが漏れる。ああ、全く嫌いじゃない。
ただ殺めるだけ。案外悪くはない。
ルピナスはこんな俺でも側に居てくれるという確証がある。ならば殺めることに躊躇いは、無い。ルピナスの前に敵の屍を積み上げるそのさまは古強者のようで気分が格別に良いのだ。
故に俺は嗤いながら雑兵を狩る。
粗方の取り巻きを処理が終わり後は緑色の唇を殺すという時、それは起きた。
突如緑色の唇が爆発四散したのだ。
「は?」
突然の爆発四散に驚き目を丸くしていると残骸からおどろおどろしい紅い球体が浮かび上がった。それを手に取ると体にその球体は取り込まれ一種異様な実感を伴う激しい全能感が俺に襲いかかった。
それは誇張無しに世界を改変する事すらやってのけれるという純粋な自己理解。
つまり俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が。
「エンヴィー!!」
声がする。何だか知っているような。安心するような声。焦っているように感じる。あれ?何かが可笑しい…。
「しっかりして!」
オカシイ、おかしい!!
この感覚を俺は知っている!
大急ぎで知恵の盃を呼び出す。
「エンヴィー、今度は何を願うんだァ?呪核かァ?呪核だよなァ?呪核なんだよォ」
「対価は」
急いでいる時は手短に。
「要らねェ。これは俺にとっての得よォ。この上差し出させる程鬼畜じゃねェつもりだァ」
まあ、ーーーがどうにかするんだろうがよォ。
そんな言葉が聞こえた気がした。
しかし、そんな事は気にならない。
気を鎮め、知恵の盃の力で正気を保つ。
俺は一体どうしてしまったのだろうか。