デイブレイクの悲劇3
フルボッコだドン!
『黎明の騎士』ユーリィ
見知った声、見知った顔。
そしてより苛烈さを増したその性格。
眉間に刻まれた皺が彼の変化を物語っていた。
「ケイイチロウ…っ」
誰も望まないから来てやった。
そんな風体で彼は…盤面をいじくり回しにやって来たのだ。
「立てよユリ男っ!」
ヤンキーのような品のない蹴り。
だが、僕には不思議と良く響いた。勿論、悪い意味で。
口の端から血液の混ざった唾液が垂れる。全く容赦無い。
「模倣」
模倣するのは幼き日の魔王の姿。
「ハッ!そうやって誰かの真似事をしないと戦えないってか!?笑わせる!!」
そう喚く姿を認める。
しかし、そう。しかしだ。
ケイイチロウよ、君のその台詞は傲慢だ。
魔王にも言ったが…傲慢は君を殺す。
この手には片手には大鎌、片手には細剣。
動きは極地で、成すのは無双。
「破ッ!」
「周りが見えてないな」
後ろから衝撃。
ケイイチロウに気を取られ過ぎて心象解放を忘れていた。
人を辞めた異形、その数多数。
全て切り刻む。
細剣の能力で心象解放を溶融させる。
そして片手の大鎌で切り刻みー動きが止まる。
「おまけに忘れっぽい」
大鎌がゲルに絡め取られていた。
そのまま硬化してしまい抜くのには中々手間がかかりそうだ。
自分の迂闊を憎まずにはいられなかった。
視界に黒い影が映り込んだ。
拳かー!?
ミシリと骨が軋む音。
鼻の骨がやられたらしい。
鈍い痛みが僕を苛む。
痛い。頬の筋肉はビクビクと常に痙攣しツーと無様に鼻血を垂れ流す。
「……」
転がって、転がって。
このザマ。
情けない。
「なぁ?騎士様?どんな気持ちだよ…なぁ?答えろよ、今、どんな気持ち?」
「………」
屈辱の極みだった。
ハッキリ言おう。
このゲス野郎!!死ね!!!
「全部、テメェが親父を殺せなかったからこうなったんだろうが。俺から見ればテメェこそが最低のゲス野郎だ」
思考に空白が生まれた。
ずっと棚に上げておきたかった。
もし、僕が父上を殺していればケイイチロウは捨てられることは無かったのではないか。
そんな事をよく考えた時期があった。
それが、今になって突きつけられた。
しかも本人が直々に!
「鏖殺魔が…今更何を言う!!」
ハンドスプリングで飛び起き行きつけの駄賃にサマーソルト。
しかし感触は無い。
逃したらしい。
「逆ギレかよ騎士様?」
「黙れ…」
「情けないなぁ」
「黙れェッ!!」
動きの極致のはずなのに当たらない。
致命打にならない。
何故、いなせる?
何故、かわせる?
このタイミングなら確実に当たらないとおかしいのに。
ーー化け物が。
あぁ、エクス・マキナが邪魔だ。
コイツらか?
コイツらが僕の攻撃を邪魔しているのか?
卑怯な!!許さない!!
「テメェの負けだ。諦めろ」
低姿勢からのアッパーを狙う僕のにケイイチロウは踵落としを敢行する。
額が割れて血がどくどく流れる。
命が流出してしまう。
戻れ、戻れ、戻れ。
「なぁ、周りを見ろよ」
無気力にダレた俺を乱暴に髪を掴んで顔を上げさせる。
一人もいない。
誰も、誰も。
皆んな等しくいない。
いつもカツを食べてた屋台の名物オジサンも、挨拶すると摘んだ野花を分けてくれた少女も、デイブレイクの先輩で尊敬していた時任さんも、一様にいなかった。
「な、負けだろ?」
「ぁ、…あ」
「あぁ…あああっ!!?」
僕は叫んだ。




