魔王の近況報告
『魔王』杉原清人
さて、俺がしてきた事で語れることは決して多くはない。
デイブレイクを徹底的に叩き、各地の知恵の盃を尽く奪い去り、阻むセラフィム共を血祭りにあげたくらいだ。
そんな俺なのだが月日が流れ若干ながらも背が伸びた。髪も伸びて肩までかかるくらいになった。
戦いが激化するにつれて二つ名も沢山増えた。魔王、初撃逃し、斬遊、嫉妬、性別…最後のやつは何だろうか。
侮辱か?
あ、そうだ。一つ忘れていた。
俺はオミ王国を配下に加えて今は大戦争の真っ最中である。
何故デイブレイクを執拗に甚振るのか。一つは時任を困らせたいという極めて私的な理由から。
そしてもう一つはデイブレイクが特異点であるからだ。
デイブレイクの前身、デイブレイク・シーカーズ。
元は異能を集め、異能を研究する目的でサフィール・クライネ氏を中心として結成された団体だ。
しかし、リーダーとなったサフィール氏が死亡し、その娘であるリリップが形式上のリーダーとなるが、リーダーとは言えその頃のリリップは幼児であり、世話等は全て時任が行っており時任が実質のリーダーとなる。
それから時が経ち、幼女となったリリップは突出した才能と優れた人間性によりリーダーとなるが…。
時任がそれではつまらない、と。
苛烈な罠でリリップを絶望させ魔獣に変貌させ追い出し、結果的にデイブレイクは魔族根絶を掲げる集団としての側面が強くなる。
事実魔獣の被害は年々増えており、現地の人間はこれを危惧しデイブレイクを肯定的に迎えた。
そして魔族、魔獣を嫌う風潮が蔓延、固定化され。
同時期に時任は惟神の使いとなり知恵の盃の回収、保持を任じられるかわりに地上に於いての揺るぎない地位を確立した。
時任は地位を確立する事に固執してリリップを棄てたのだ。とんだゲス野郎…ゲス女だ。
時任を困らせたいと思うのは当然だろう。と言うか、死んで貰いたい。
知恵の盃の回収の邪魔だし害にしかならない。
二つ目だがー、デイブレイクは最初から十二の知恵の盃を有していた。
ティアが言うにはデイブレイクには宇宙の最果てからでも知恵の盃を呼べる力があるらしい。
そもそも知恵の盃同士は引き合うのだ。かつて十二個もの知恵の盃が集った場所だ。俺が十個程度奪っても余裕で補填されていた。
態々この世界から飛び出して知恵の盃を探すのより効率がいい。
俺は周囲を見渡す。
ここは元呪怨領域リリップ。
デイブレイクに程近いここからならデイブレイクの戦禍も良く見える。
「ったくよォ、テメェは何でいつも一人でムチャすんだかなァ。俺には分かんねぇなァ」
セラフィム相手に心象解放した反動でしばし足止めを食らっている状況でもある。名前は確か…カルクィンジェだったか。
殺し愛とかを声高に主張するキチガイだった。
まあ、どうでもいい。
事は案外順調に運んでおりますよ?




