始まりの魔王
後半戦開始です
彼は言った。
自分と大勢の人間が同じ天秤にかけられているならば間違い無く天秤は大勢の人間に傾くだろうと。
しかし、解せない。
らしくない。
魔王は得てして傲慢を絵に描いたようなもので自己を下に見ることはしないものだ。
確かに顔立ちはほっそりとしておりそこまで気性が荒いとは思えないしあまりにも少女然としている。
けれど、二言目でその印象はガラリと変わる。
彼女と世界が同じ天秤にかけられるなら必ず俺が彼女の方に天秤を傾けてやる、と。そう言った。
彼女が誰を指し示すのかは分からない。
けれど一つ分かること。
それは、彼もまた魔王だと言うことだ。
◆◆◆
五年という月日が流れていた。
因果律の捻れから大地が割れ、海が干上がり、転生者達の楽園はディストピアと成り果てた。
このままでは五年もしないうちに世界が崩壊しそうな様である。
神々は動きを強め下っ端の神が出張ってくる事態へ悪化した。
ジハードだ。
しかし、それをことごとく単身で退け武功を挙げたのは一人の少年、否。
他者を束ねる事なく孤独に王となったものー、即ち魔王。
数多の知恵の盃の欠片を保有するその魔王は決して冷たい玉座に座ることはない。
魔王には決して安息は訪れないー。




