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哀しきチート

精神力チートってあるよね。

あれって最早狂気だよね。却って。

てな訳で70話目だぁ!よっしゃ!

ハッピーにしないと…。

『半壊』杉原清人


「……」


気まずい沈黙が流れていた。

勿論、原因は俺だ。だから自責の一つもしたくなる。

けれど、リリップの手前そんな事は出来る訳がない。

失敗を悔いてはならないのだ。

ひたすらに繕い、繕い、繕い。

誤魔化すことすら出来ない。


「…お兄ちゃんには心象解放は無理だね」


冷たい声だった。試すような口調ではなく諦めたような…呆れたような声だ。


「心象解放には通称『哀しきチート』が必要なの。これはお巫山戯でもなく本当よ。その『哀しきチート』、何だか分かる?」


問いの意図が分からない、読めない。

何だ?リリップは俺に何を伝えたいんだ?


「凡ゆる狂気を呑み込む正気。それが、『哀しきチート』の正体。それで魔獣の力を縛り付けるの」


何だか拍子抜けした気分だ。

要するに、精神力か。となれば俺には無理と言うのも頷ける。


「分からないの?どんなに辛くても涙を流せないし、正気は感情の起伏すら呑み込むのよ」


感情の、起伏?

大袈裟な話になって来た。


「成る程なァ、確かに『哀しきチート』だなァ。現状に問題が起きてもなまじ強い正気のせいで自棄にもなれねえェ。諦めすら半ば奪われるのかァ」

「そうよ」


言っている意味が分からない。

とー唐突にリリップは俺を殴り飛ばした。

ほんの刹那の挙動を呆けていた俺は見逃し鼻から血をツウと流しながら後ろに倒れる。


「な、何をする!」


瞬時に戦闘に意識を切り替える。


「やっぱり駄目。ねぇ、お兄ちゃん。私を見てみて」


面を上げ、リリップの寒気がするような端正な作りの顔を見る。

表情、雰囲気、何も変わらない。

無感動に、無感情に殴ったのがありありと分かる。

これが正気だと?

違う。これこそ狂気の沙汰ではないか。

…正気は行き過ぎれば狂気と等しい?

それを自ら進んで行うのか?


怖い。


そう、これは純粋な恐怖。

これは最早人間ではない。

強い力を持つ人間ではない何かだ。

自分が人間を辞める姿を想像しー。


「ッ!!」


震えた。

力の代償は余りにも大きい。

けど。けれど、俺はルピナスを誕生させる為に手を尽くさなければならない。

知恵の盃を回収する為の力が要る。

襲撃する神やセラフィムを打倒する為の力が要る。


ルピナスの為でも俺は俺でありたいのか?


馬鹿な。

ルピナスの為なら命すら惜しくはない。

そうだ!今更何を怯える!!

俺は罪過を背負いながら幸せになる!!

そう決めたじゃないか。


「ウジウジし過ぎだァ。馬鹿野郎ゥ。テメェには選択肢なんてないんだよォ。強くなれェ!ひたすらに強くなれェ!そんでルピナスを迎えるんだよォ!!」


本当にそうだ。今回は感謝する。

知恵の盃のエールは受け取った。

俺の幸福は数多の犠牲の上に成り立ってる。

けどそれは皆んな同じ事だろう。

米を食べる幸せは農家の時間と能力、そして植物という命を犠牲にして、対価にして初めて得られるのだ。

誰もがそれを意識しない。

ただ、俺の場合は犠牲、対価が髑髏なだけで大差はない。


「そう、だな」


鼻血を流しながら両手で頬を叩く。

気合い注入完了。

人外結構。こうなりゃ自棄だ。


「さっきよかマシな顔になったじゃねぇかァ」

「先ずは顔を洗った方が良いわ。折角良い顔になったんだから血は落とすべきよ」


全く、かっこつかねえな俺は。


ま、醜態を晒すのが俺らしいか。

個性は人それぞれ、かっこ悪いのもご愛嬌ってな。


「ンンッ!良くない!良くないなァァァァッ!!?」


空が、割れた。

空間が歪み、深淵が覗きー。


「敵の強化を黙ッッッて見過ごす馬鹿がァいるんdeathか?ンンン〜?」


アルクィンジェは再び現れた。

ね?ハッピーだったでしょ?

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