天使の嘲弄
『客人』杉原清人
「おや、どぉぉぉおしてぇ?オルクインジェがこぉぉぉおんな所にいるのdeathかねぇ?」
狂気の瞳が俺を射抜く。
どうにか竦みそうになるのを堪えて睨み返す。
俺がオルクインジェ?
冗談もほどほどにしろ。
…いや、待てよ?もしかして智人か?
それなら納得もできる。
しかし違う場所で活動しているオルクインジェか。不気味だな。
「ったく、ネーミングセンスの無さは清人の親父ギャグ並みだなァ」
「余計なお世話だ」
そう言われる程センスが悪いつもりはない…無いが…無自覚なだけだろうか。
ルピナスなら笑いながらスルーするよな。
成る程、センスが無いのは認めよう。
芝居芸人じみた大袈裟な動作でアルクィンジェと名乗る狂人は首を垂れる。
「まぁ、セラフィム同士よろしく…death」
すぐさま面を上げると体を捩り、くねらせ体を後ろに反らす。
何なんだコイツは。
「何なんだ、コイツ」
「敵だろォ?簡単じゃねぇかァ」
セラフィム…。実態は不明だが先手は頂こう。コイツ相手に後手に回れば不味い気がする。
天地深夜を顕現させると直ぐに肉薄する。
一歩、気付かれてはいない。
二歩、まだまだ。これなら柄での突きでも仕留められる。
戦化粧に血を求め(ブラッディ)内蔵の天地深夜の特性。それは色合いの変化に伴い俺の動きをより強く、早くなる。
茜色の刃は急速に赤みを増し、間も無く紅に染まる。
これなら行ける。
知っていたか?
この世界では決め技ですら即座に放たれるのだ。
開幕オチと言うのだったか。
そこら辺はあまり詳しくないが。
基本は遅延戦闘は余りない。
…遅延戦闘は余り無いが俺は開幕したら一撃で殺せないと自滅するがな。
「咆哮神託怨嗟ッ!!!」
俺がユーリィに放った災厄の刃を今度は全力でアルクィンジェに向けて放つ。魔族の力で強化された一撃だ。辺獄に行く事すらなく死んで逝け。
が、それだけでは終わらない。
「出ろっ!」
天地深夜を消し、代わりに出すのは無数のナイフ。戦化粧に血を求め(ブラッディ)の恩恵は消えるが仕方がない。確実に殺しておきたいのだ。
下手に次を想定するくらいならこの場で殺すのが安心だと心得ている。
オーバーキル様いらっしゃいだ。
心象から無限に湧き出すナイフの顕現させーその全てをアルクィンジェに向ける。
「死ね」
投げる、投げる、投げる!!
ハリネズミになれ!!
「ンンッ?良くないdeathねンんんんんんッ!」
え?
後ろにー?
気配は無かった。転移か?
だとしたらいつ?無傷ではないか。
クソ、天地深夜を放棄した事が悔やまれる。
対策、反撃、いずれも望めない。
抜かった、のか?
感じたのは熱と乖離感。
遅れての理解。
痛い。
痛い、痛い痛い痛い痛いいたいイタイ!!
ヌルリと嫌な感触、血だ。
ささ、れた?
当然だ。立場が逆なら刺してる。
「清人ォ!!撤退だァ」
あれ?
おかしくないか?
だんだん、体が熱く…。
理性の鎧が剥がれ落ちるみたいな。
そして、異音。
切断音ではない。ひしゃげる音?
体が裂ける。
「ンん?これはオカシイdeathねぇ。私ぃ死ぬ可能性あるんですかぁぁぁあ!!!?」
何か、楽しくなって来た。
気分が高揚して仕方ない。
久しぶりに鏖殺したくなってきた。
「羽目を外し過ぎだよお兄ちゃん」
「イ、リップ?」
それからの事は良く覚えていない。
微かに覚えているのは俺のケロイドの上に眼球を埋め込んだような皮膚が広がる光景とーリリップの黒く染まった爪がアルクィンジェの胸を貫いた姿だった。
リリップの爪は魔獣の鉤爪にも似ていたっけ…?
眠い、や。




