謎かけ
『客人』杉原清人
「眠れる騎士団?」
「知らないみたいね、お兄ちゃん」
「あと何でお兄ちゃん呼びなんだァ?ハナから馴れ馴れし過ぎやしねえかァ?」
「知恵の盃は黙ってて」
知恵の盃は引き下がる。
珍しい事もあるものだ。俺相手に引く事など一度たりともなかったと言うのに。
「いい、お兄ちゃん。眠れる騎士団はデイブレイク・シーカーズに対抗して設立された魔族の組織なの」
「魔族って何だ?」
「魔獣になった人間の事だよ。私たち魔族は体が変質するから差別の対象になり易いの」
無意識のうちに左の腕を見た。
なるほど、魔族か。
「理解した?それで、私たちは廃棄された同胞を保護しながらデイブレイクの面々に反抗してるんだよ」
「待て、廃棄された?」
「デイブレイクはあれで排他的だから魔族は捨てるの。魔族はかつて魔獣だった人間だから肉体的な優位は明白だけど、それは飽くまで個の強さ。デイブレイクの面々と戦ったら負けちゃうからね。それに魔獣の時に人を殺してた場合悔恨が残るから絶望が連鎖しないように、っていう理由もあるらしいよ」
「絶望の、連鎖」
想起するのは半ば無意識のうちに虐殺した人々。
一体、彼等は何を思ったのだろう。
成る程、絶望の連鎖か。酷いものだ。
「デイブレイクは…時任第二席は私達を追い出したの」
!?
待てよ、今、なんて言った?
時任『第二席』?
時任静香は曲穿として第一席にいたはずだ。
「なあ、第二席って…」
こいつは心を読める。なら、どうして態々簡単に看破出来るような嘘を?
いや、まさか…。
ははっ、曲がつ者を穿つ!!
最初からヒントは提示されていた訳だ。
「その通り、私が元第一席、『黄死筵』リリップなの」
やっぱりか。
となると魔獣になって曲穿に追い出され曲穿が第一席に着いた訳だ。
ん?
デイブレイクは日本人による組織ではなかったのか?
リリップは日本人離れした容姿をしている。
何だろう…何か噛み合わない。
それに曲穿がリリップを追い出した理由も理解は出来なくはないがどうなのだろうか。
まだ、何か隠している。
と言うのが導き出された答え。
この幼女の発言に裏に悪意や害意はなかっただろうか?
ない。とは断定出来ない。
けれどこの幼女の前では思考は白日の元に晒されているに等しい。
「なァ、タスクキルって知ってるかァ?」
「あなたは黙ってて」
タスクキル、ああ。知恵の盃はそれをご所望か。
「清人ォ、一旦冷静になれェ。テメェには時間が要るだろうよォ」
リリップには悪いが、覗きはご法度だ。よく覚えておくと良い。
「?」
キョトンとした顔は…白目に変わり気絶する。
「やっぱり正解だなァ」
「俺の知り得る言語を同時に翻訳しながら思考させるなんてよくやる…」
そう、俺は死蔵こそしていたが素で大体の世界、国、地域の言葉を解している。
これが、死後の世界が与えた副産物。
俺は世界を観測していた。
そうでなければ『簒奪』の相手を選べないからな。
図らずも言語を習得した形となる。
今回は「オットセイをおっとせー」を知り得る全ての言語に同時翻訳した。
するとその全てをリリップは受ける訳で、結果はこの通り。
「ネタバラシは兎も角、テメェのチョイスのセンスが無いことよォ」
「うるせえ」
さて、時間がない。
考えろ。
整理しろ。
デイブレイク、追い出されたリリップ、時任、魔族。そして、知恵の盃の真の目的。
謎は増えるばかりだな。




