戦犯達ガ夢ノ跡
鬱展開が入るとブクマ増える謎現象。
あるぇ、これ俺ツェー(敵)のチートものだよね(白目)。
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『デイブレイク入団予定』杉原清人
「…うっ」
俺は左腕の焼け付くような痛みで目を覚ました。
袴から覗く左腕の素肌を見ればその部分は魔獣のケロイドの上に眼球を乗せたような醜悪なものになっており、爪は浅黒く変色し件の鉤爪を連想させた。
ギョロリと皮膚の眼球と目が合った。
まるで自分の体ではないかのような動きが何とも気持ち悪い。
勿論、視界が増える訳でもない。
恐らく装飾的なものなのだろう。
けれど不思議な事に他の部分は無事なようだった。
まぁ、それもこれも。
「ユーリィ、お前何をした?」
「頑張っただけさ」
この総白髪の青年は全て知っているだろうが。
「だから、何をどうしたんだよ」
「対価を支払って奇跡を乞い願った」
対価を支払う。その言葉が示す事象はもう。
「…知恵の盃か」
これしか考えられなかった。
案の定肯定のサムズアップを頂いた。
何という事だ。
俺が絶望したせいで、いや、俺がいたから対価を支払わせてしまった。
待てよ?
いや、待ってくれ。
分かりたくなかった。
ユーリィは対価を支払った。この時点で迷惑を被ったのは一見ユーリィだけに見える。
では俺が明白な害意を持って滅ぼそうとした人間達は、どうなったんだ?
そうだ、俺は世界を滅ぼそうと心象を無意識的に広げた。自分の管理が出来なくなっても尚広げ続けた。
ヒュエルツは曲穿がいるから良いだろうが、他の都市は?
辺りを見回し、理解した。
「痛み分け、か」
瞬間。
俺はユーリィをぶん殴った。
「馬鹿が。何が痛み分けだ。それじゃ何か?俺を救ってお前も堕ちる心算だった訳か」
俺は沢山の村々を覆い尽くし、その全てをことごとく破壊したようで。
周りには更地があるだけで何もなかった。
何も何も…。
ああ、この怒りは八つ当たりだ。
たら、れば、もし、そんなのは意味がない。
けれど俺を早くに殺していればその何百倍も、何千倍、何万倍も救えたのだ。
何万もの命とユーリィの支払った対価、それが俺に釣り合うのか?
答えは否。
釣り合うわけが無い。
俺はお前達が思う程価値はない。
お前達はその事を全く知らない。
「…なぁ、答えろよ…。それは自己満足なのか?自己満足で最低の殺人鬼を救ったのか?」
「…君は救われるべき人だ」
「ッ!!!」
火に油を注ぐように。
「お前は命に優劣をつけるのか!!馬鹿が!!!救われるべき人だぁ?そんなものッ」
けれど、胸ぐらを掴みその目を見て熱が冷めた。
「皆んな、そうだろ…?皆んな救われるべきなんだよ…」
俺はその目の中に確たる光を見た。
狂気と盲信に光る目でも。
欲に溺れて鈍く光る目でもない。
手の届く人を救うと言う意思の篭った目。
そこにいたのが俺だったら救ったのではない。
偶々ユーリィの手の届く範囲にいたから俺は救われた。
「……」
控え目に言ってこれも一種の狂気なのだろう。
その醜悪なエゴはしかしどこか清々しい。
「僕たちは、本質的に化け物なんだ。だから、化け物には化け物の矜持を持ってるいるのを知っているし、納得もできる」
「………」
俺は何事かを言おうとした。
けれど、地震の音に遮られた。
「清人ォ、不味い事になったァ。この世界の因果律が崩れ始めたァ。そろそろ限界だろォ?限界だよなァ。限界なんだよォ」
「嘘だろ?」
弱り目に祟り目。
泣きっ面に蜂。
鏖殺に世界終焉
世界と言う敵が牙を剥き出し俺たちに挑戦状を叩きつける。
『これで終わりだ』と。
無茶言うなよ。
こっちは傷心だっての。
やれるかよ、馬鹿。
「あぁ、けどよォ。朗報もあるんだぜェ?」




