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心象ノ中身

『亡国の王子』ユーリィ・セイムベル


『開演』


「これはッ!!」


それは心象と言うには悍ましすぎた。

地獄でもまだ足りない混沌。

足元は潰れた球根が緑色の粘液を纏いヌラヌラと照り、悪夢じみた音楽がけたたましく鳴り響く。

そこを闊歩するのは毒々しい色合いの歩く唇。


『ERRY!!』

『ERRY!!』


漂うのは血より尚濃い鉄の匂い。

視界に映る全てが吐き気を催す最低な意匠だ。

その最奥には頭部と胴体が風船のように膨張した赤子のような何か。


ヴォェ。


吐いた。寧ろこれを見て嘔吐しない者がいるだろうか。

気の弱い者なら忽ち心臓麻痺にて死んでしまうだろう。

次元が違う。

肌にまとわりつく生暖かい空気が現実感を奪い去っていく。

これはタチの悪い夢なのではないか?

実は僕の悪夢で目が覚めたら宿屋で寝てはいまいか。

柄にもなくそんな事を考えてしまう。


『ERRY?』

「…ッ!!」


緑色の唇が僕の姿を捉えた気がした。


炎環ノヴァッ!!」


まだ接近してはいないが先制してしまった。全ては恐怖故に。


炎環ノヴァ炎環ノヴァッ!!炎環ノヴァァ!!!」


狂乱、恐慌。

荒れ狂う感情のままに無差別に炎の残虐を振りまく。


そのまま駆け出して件の異形の前まで行き、叫ぶ。


「我、迷宮に挑戦するッ!」


姿が搔き消えるー。


◆◆◆


『第一階層、挫かれた望み』


一階層に転移した。

だが、これはー。


『あんよ』

『あんよ、あんよが上手』


眼球の垂れた血濡れの人形達が氾濫していた。

各々の手には斧、剣、槍、弓。


逃げなければ。

悪魔の舌のような赤いカーペットを蹴りそれらから逃げる為に走った。


幸いにして人形は俺を視認する前だったのか距離は大分空いた。


ハァハァと荒い息を吐く。

未だに心臓は煩く鼓動している。

怪物を恐怖させる異形。

なんとも皮肉な話だ。上には上がいた。


では、その核に成り得る人物は?


思い描いたのは一人の少女のような少年。エンヴィー・メランコリア。


出会ったときから並々ならぬ人物だった。見えない者が見えるような奇妙な言動。

子供そのもののような歪な精神性。

そして、姿に見合わず卓越した殺す為の技術とその練度。


だから、僕は態々『模倣オルタナティブ』をした。


彼が絶望したらこんな世界を形どるのだろうか。

だとしたらその原因は?


それにー同時に解せない。


『ERRY』と喋る唇がいた。悪夢じみているのに変わりはないが明らかにあの唇はエンヴィーのモチーフではない気がする。

明らかな違和感。

エンヴィーの魔獣じゃないのか?


情報が足りない。

調べなければ。

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