デイブレイク・シーカーズ
説明回ですね。
「眷属…」
思い出すのはペイラノイハの神が夢の中で言った言葉。
『…なら、良いでしょう。でも良く覚えておいて下さい。甘える相手は選ぶべきだと。そして私は地球の神と違って例え因果律を崩壊させる聖遺物を保持していても私は貴方をどうにかしようとは思いませんし、その気があるなら私の眷属として世俗から離れた安寧を与える事も出来ると』
目の前にいる少女は神から安寧を与えられた存在。
自ら楽な方に逃げた、軟弱者。
軽蔑こそすれどそこに賞賛はなく、純粋に死んで欲しいと思った。
だって、神々に組するのだから。
神々は俺を呪ったのだから。
そして何よりも…安寧な逃避出来ると言う事が酷く羨ましいからだ。
俺が安寧を願うのならきっとそれはエンヴィー・メランコリアではないのだ。
既に曲穿との距離を詰めた俺は知恵の盃を呼び出す。
「対価は、あの女の髪の毛でどうだァ?」
「我、対価を支払う(スタート)」
速攻。
曲穿は認知しながらも対応する気はなさそうだ。
余りに怠惰。余りに傲慢。
だが、教えてやろう。
そんな些細なものが容易く命を削り取るのだと。
「君こそ、ね」
悪寒がした。退かねば死ぬと。
そんな気がした。
「はぁ、喧嘩っ早いのはちょっと残念かな」
悠々とした態度で曲穿は立っていた。
得体が知れないその存在を前に脂汗が止まらない。
「まぁ、説明しながら軽く捻ろうか!」
白い腕が一瞬ブレた。
カツン!!
急いで錆びた大鎌で防御する。
何かが飛んで来た事を遅れて理解する。
これは…。
「ダイス…?」
「そう、それが私の固有武器、バルキリア。見た目はただの十面ダイスだけどっ!!」
カツン!!
再び振られたダイスを錆びた大鎌でいなしバックステップ。
錆びた大鎌で切断出来ない!?
「出た目は七と五十。つまり五十七」
そう言った途端。
「動けない…!?」
「私の付近、五十七メーターは私が絶対支配出来る、と!どう?」
煽るような上目遣い。本来魅力で溢れているであろうそれからは今は恐怖しか感じられない。
「さて、大人しくなったし。これで話せるね!私達、デイブレイク・シーカーズの事とか!」
曲穿は滔々と語り出した。
「先ず、私達の事から、かな?と言っても補足はそれ程多くないんだけどね。デイブレイク・シーカーズは知恵の盃と言う半神格聖遺物の欠片を探索して因果律を正常に戻す役割があったの」
半神格聖遺物の欠片を探索?
つまり、
「そう。ペイラノイハには知恵の盃が私達が確認しただけでも十二個存在するの」
「!?」
驚きもした、けれど同時に納得もした。デイブレイク国は大国と言うには少々小さい。それこそ曲穿さえいれば態々十二州に分割しなくとも十分な位には。
けれど、一人で知恵の盃の欠片を十二個も卸すのは最早神の所業。眷属とは言え相当に無理がある。
だから、自分を含めて十二人で統治?
「でも知恵の盃の居る場所が厄介でね、昔に強過ぎて封印された魔獣の呪核とか呪いの強く残る地域とか。私は偶々曰く付きの武器を粉砕したら憑かれたんだけど」
おい、待て。偶々曰く付きの武器を粉砕するってどんな状況だよ。
「だから、そこを知らない人に攻略されたら不味いから知り合いにキープして貰って、知恵の盃を回収出来そうな人を私達の中から派遣するの」
その選別が闘技祭、か。
「君に来てもらいたい理由は簡単。知恵の盃を回収して欲しいからだよ。ま、手紙に全部書いてあったんだけどね」
えへへ、と笑いつつ目は全く笑っていない。
手紙は良く見るべきだと思いました。
「じゃあ、そんな感じで。うん!明後日には入るか入らないかは決めてね。伝達方法は…フラワーショップ・橘のおっちゃんにね!」
何事もなかったように背中が遠ざかりー何かに気付いたように振り返る。
「フラワーショップ・橘で思い出したけど、ルピナスの花言葉は母性愛、貪欲、そして空想だから!」




