のゔぁ
闘技祭六日目ー決勝戦。
どうやら『鬼面』が『伏』に勝ったらしい。良い流れだ。
『鬼面』との戦いは俺の望んだ事なのだから。
思う存分に簒奪を振るおう。それが先輩への敬意だ。
ステージに立つ。
「お久しぶりです。『嫉妬』」
「そうだな、『鬼面』」
今、俺は滾っている。
『試合開始!!』
このアナウンスが興醒めする位に。
俺たちは打ち合わせた訳でもなくステージ中央に向かいゆっくりと歩く。
果てしなく静かな始まりは嵐の前の静けさだ。
そして互いが互いを睨みながら。
「簒奪」
「模倣」
一閃!!
空中に舞うのは一条の赤いライン。
血だ。
『鬼面』の。
「何でオルタナティブが発動しない!?」
「いや、発動したぞ」
先程起きた事。
同時にオルタナティブを発動した結果、『鬼面』は俺になった。
が、俺の簒奪により模倣された俺の要素を奪い取り『鬼面』のオルタナティブが消えた状態になったのだ。
模倣の完全なメタとしての簒奪。
類似でありながら相容れないもの。
「あんたの模倣は使えない」
がー鬼面の間から気味の悪い笑みが覗いた気がした。
本能に従い大袈裟に横に転がる。
「炎環」
寸前にいた場所には炎の環が広がり焦げついている。
当の俺はしかしそれでも回避しきれない。
「咆哮ッ!」
錆びた大鎌の高周波でやっと打ち消す。
「模倣で真似したら習得し、進化させる。これが僕の努力の結晶」
「ラーニングか」
大方、有声慟哭に『炎煌』の炎を足したのだろう。
厄介極まりない。
成る程、『鬼面』は確かに強敵だ。
少なくとも能力に驕った馬鹿ではない。
けれどこんななりでも俺は神殺し。
殺戮の年数の違いを教えてやろう。
『鬼面』に向かって錆びた大鎌を投擲する。
その間に鬼面の懐に潜り込む。
そして、低姿勢から鳩尾を繰り出す。
流石に戦化粧に血を求め(ブラッディ)は模倣出来ないらしく回避する事なく綺麗に鳩尾に入った感触がした。
そして時間差で錆びた大鎌をキャッチし斬撃をー。
「壁を!!」
炎の壁に阻まれる。
距離を置いて咆哮を放つ。
キィィィィ!!!
耳障りな音を気にせず放ちに放つ。
不可視の音の刃が吹き荒れ砂埃を巻き上げ視界を覆う。
「!!」
土煙の向こうから炎環が飛んできた。
「咆哮な弱点は錆びた大鎌の異音が起点になる事だ。発動が分かれば炎環で最低限は防御出来る」
『鬼面』は煤に汚れながらも無傷だった。
「強いな」
ここまでは互いにノーダメージ。
さて、ここからどうしようか。




