ちるどれん
闘技祭四日目。
やはり予測通りにエクストラ枠が存在した。デイブレイクシーカーズ第十三位階『伏』。それがユーリィと当たる。
そして、俺が今日戦う相手は…。
「貴方が対戦相手?子供じゃない」
「…『エゴイスト』」
EGOMAMAだ。
…ママに子供扱いされるとは何たる皮肉か。大変心外である。
「…?」
当の本人は俺の顔を覗き込み、肌が触れそうな距離まで接近している。
彼女の瑞々しい唇や榛色の瞳が視界に映り込むが気にしない。
最悪奪えば良いのだ。今ここで動く必要も道理もない。雌伏の時だ。
「もしかして…」
「何だ」
暫く考えるような仕草の後唐突に。
「私の養子にならない?」
「は、ハァ!?」
とんでもない事を言うのだ。
「だって貴方、今孤児か何かでしょう?或いはーそう。機能不全家族とか」
「ハッ!俺には家族なんていない。いるのはルピナスだけだ」
そう言えばルピナスを最近見ていない。どうしたのだろうか。腹痛だろうか?生理?いや、ルピナスに限ってそれはないだろう。だってルピナスは食事も取らなければトイレで席を立つ事すら一度も見た事が無いのだ。
不思議ちゃんというやつだろうか。
まぁ、それも魅力なのだが。
「彼女なの?」
短くああ、と返答する。
即座にそれにしてはーと切り返し。
「貴方、淡白なの?違うわよね?違う筈よ」
知恵の盃のような言い草である。
適当に会話を終わらせようと口を開きー。
「だって、貴方。バトルロイヤルの時は視線が常に一定の場所を見ててとても微笑ましかったのよ?それが、今は何?まるで何も見てないみたい。振られたにしては罪悪感も無いし、おかしー」
「 黙 れ ! ! 」
感情的に叫んでいた。
決めた。こいつはたった今地獄への片道切符を手にした。
殺す。
殺す。
ステージに移動する。
『試合開始!!』
死合おうか…『エゴイスト』!!!
戦化粧に血を求め(ブラッディ)を発動。同時に錆びた大鎌を手に『エゴイスト』に肉薄する。
「来なさい、クラウン」
魔術師が着そうな体型の隠れる厚手のローブをはためかせながら盲目の猿を召喚する。
盲目の猿、クラウンは牽制の役割を担っているが、俺には関係ない。
俺は点ではなく面の攻撃を得意とする。
「咆哮」
クラウンを両断し、『エゴイスト』に追撃を仕掛けー。茶色の壁に阻まれる。
「チッ、スケープゴートか」
口元に微かに笑みを浮かべ正解を伝える。クソ、余裕綽々といったところか。
「有声慟哭」
しかし、有声慟哭の前にはそれは意味を持たない。
更に戦化粧に血を求め(ブラッディ)による相乗効果が遺憾無く発揮され茶色のどう猛なバッタ供を切り飛ばし余波で『エゴイスト』の左肩を傷付ける事に成功した。
尚も追撃。
がー。
「なっー!?」
何かを踏みつけ、そのまま転倒した。
踏みつけた物体はー。
「ロスト・ワン!!」
とー集中が解け戦化粧に血を求め(ブラッディ)が解除される。
その背後から狙ったように。
「行きなさいヒーロー」
腐臭を撒き散らす腐った鹿。
けれどこの程度は地べたに座っても捌ける。
一閃。
ヒーローの首を落とした。
残るはイネイブラーとプリンセスのみ。しかもプリンセスに於いて言えば戦闘能力は皆無。
詰めだ!!!
再び追撃を仕掛けようと駆けるが。
途端、脚が再生した。
脚が切断されたー!?
その咆哮を向けば倒した筈のクラウン。
ああ、見誤っていたよ。
『エゴイスト』はネクロマンサーだった!!




