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ふぁっしょん

1000PV突破に感謝を!

俺は手紙を開ける事なく花屋から帰宅する途中で頂いた手提げカバンにそれはそれは乱雑に突っ込んだ。

まぁ、手提げカバンと言っても別に中に物を入れたら時間が停止したりとかはないしソート機能も勿論無い。

ただ…。


「あそこで自棄になったのは不味かったな」


俺は一人自責した。


◆◆◆


手紙をルピナスから隠匿すべく何か隠せる場所を探していたが相手は曲穿マガツ・ウガチ、捨てたら大変だと考えていた頃丁度良く皮の工芸品の即売会が見えたのだ。

カバンが買えたら重畳と即売会を覗くと。


「かわゆい!お持ち帰り!!」


と、ジャージかつメガネのイモイモしい女性に半ば無理矢理にブースに連れてこられ、大正浪漫の良さや歴史についての薀蓄を垂れ流すのを聞きながら皮でカバンを作って貰った。

生産系の異能と言うものらしい。

皮細工は初めて七ヶ月と言ったが会話しながらもその意匠は素晴らしかったし、何よりも恐ろしいのはその速度。

三分間クッキングでもするのだろうかと言いたい位の速度で最早手が残像を残すのだ。


しかし、残念なのはここからだった。

かわゆい!から察せられるがやはり俺は少女に見えたらしくこの霊衣に合わせて赤いリボンを付けはじめたのだ。

曰く。


「全体的に黒っぽいから他の色のワンポイントを入れないと重くなり過ぎちゃう。黒は大人っぽく見える反面多すぎるとメンヘラっぽくなっちゃうの。まぁ、背伸びしたくなるのも分かるけどね」


だそうだ。

そういう訳でカバンが即座に完成したのだが。

色々と問題が出た。

先ず、このカバンなんて持ったら少女にしかならないという点。

俺は男なのだ。ルピナスを守り養う男でありたいのにこの外見は不味いだろう。

それにこの皮自体の希少価値も厄介だ。


「美少女だからほんの少し色を付けたよ」


と言ったが。これが大嘘。ほんの少しでは済まされない位だ。この皮は冒険者ギルドの中でも強者であろう人物が皮鎧にして自慢していた素材と同質の匂いと質感を持っている。

冒険者ギルドは強い冒険者に大商人のサポートで成り立つ団体。

さて、じゃあこの皮のカバンの価値は?

考えたくもない。

いくらルピナスが食事をしないとは言え今は金が割りかし少ないのだ。これを買えば無一物どころか借金が付く。


「あ、そうそうお代は結構何だけどその代わりにちょーっとお願いがあるんだけど」


それは脅迫か!!

内心冷や汗がタラタラと流れる。

どうする?害をなす積りならこの場で斬り捨てる事も出来る。が、即売会の会場で殺傷沙汰とは如何なものか。


「いや、痛くしないから、デュフフ」


何だか不味い気がする。

これは逃げるが吉と見た。逃げる!脱兎の如く!


「退路を塞いで!」


そう言うが早いか退路は早々にスタッフによって塞がれた。


「さぁてじっくり鑑賞させてね」


◆◆◆


「ファッションショー?」


男の尊厳は何処へやら。しかし、案外拍子抜けした気分だ。


「そう、この後からファッションショーが開かれるんだけど今日になってやる予定の子が一人休んじゃって代役を探してたの」


どうやら俺の男成分は余程息をしていないらしい。


「俺、男だぞ」

「またまた〜ご冗談を」


とーその後もみくちゃにされファッションショーとやらに出る羽目になった。報酬としてカバンは手に入れたが…何だか言葉にし難い喪失感がある。


大正浪漫系女子は今日も益々健在と言ったところか。


◆◆◆


自責の後に思案する。

にしてもー俺も明るくなっただろうか。『都市の空気は自由にする』と言った人間がいたがあながち間違いではないのかもしれない。

このままルピナスと二人でこのヒュエルツの都市に埋没出来れば、せれはどれだけ幸福だろう。これのどこが間違いなのか。

ペイラノイハの神の言った言葉が心に打たれた楔のように絡まる。

漠然とした不安感と共に夕陽に染まるヒュエルツを一人で帰宅した。

一人で。

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