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ふらわぁ

一週間後に闘技祭が迫りながらも俺とルピナスは案外普通な毎日を過ごしていた。

俺たちは小説のテンプレ風の宿屋に泊まっている。勿論やましいことは何もない。ごく普通に添い寝したり耳掻きして貰ったり…。…ルピナスが耳掻きしても案外耳が汚くて後でこっそり耳をゴソゴソとしていた訳だが。


朝はきっかり五時にバネ仕掛けのように唐突に起床。ヤギのミルクに硬く、けれどモッチリとした黒パンを浸して食べるという質素な朝食。ただ、ルピナスは食べられないらしい。ルピナスはやはり謎が多い。


昼からはヒュエルツの住民のカウンセリング。これが案外楽しい。ヒュエルツは日本人がチートして作った都市の為区画がハッキリとして分かりやすく見通しも良いのだ。それに人間に対して嫉妬はあるが次第に薄らいだように思う。中には相手にしたくない奴…それこそ殺したい奴もいたが。その度にルピナスがそれを諌めた。結果流血沙汰は無く男のフリをする大正浪漫系女子と認識されるに至った。

何でだ。


そういえば大正浪漫系女子の元となったこの袴だが、どうやら霊衣と言うようだ。その霊衣だが、どうやら錆びた大鎌に似た物らしい。精神構造を模写し、衣に形態を変換したもの。

曰くこの世界に来た時点でのささやかな贈りギフトやしい。

錆びた大鎌との違いは模写か本物かの違いしかない。ただ、本物でない分衣が傷付いても痛みは来ないし、精神構造の模写である為常に動きやすく汚れないのだと言う。実際、今の今までずっとこれだが支障はない。

…まぁ、その霊衣のせいで街並みを歩く人の中に十二単が混ざっていたりジャージが混ざっていたりその光景は雑多を極めていたけれど。


そんな塩梅で仕事をこなしていた訳だが。


その店の前で立ち止まる。


フラワーショップ・橘。

ルピナスが見えない事を確認し、そそくさと店に入る。気分はB級スパイアクション映画の主人公だ。


「いらっしゃいませー」


どうやら今回は美少女の店員ではないらしい。でっぷりとしたカエルのような顔の店主?がそう言った。別に汗に濡れている訳でもないし不快ではない。カエル顔も愛嬌が無い事もない。


「ルピナスの花は置いてあるか?」

「ルピナスの花だぁ?ったく、曲穿マガツ・ウガチの嬢ちゃんめ、店に無い花まで紹介したな」


え?

いや、でも、は?

あの店員が曲穿マガツ・ウガチ

…いや、成る程。そういえばここは異世界。植生が同じ訳がない。植生が違うなら地球の植物の知識は現地人には浸透しない。故に店員は日本人だと推測は出来る。けれど、そんなのありか。

花屋に行ったら突然の超展開に若干ーいや、かなり驚く。


「ああ、そうだ。あんたに曲穿マガツ・ウガチの嬢ちゃんからラブレターだとよ。大正浪漫の子が花を買いに来たら渡せってのがカウンターに置いてあった」


何だろう、この唐突にえらいものに巻き込まれた感は。

俺の知らないところで何かが蠢いているような。そんな不快感は。


さて、曲穿マガツ・ウガチとの文面的接触は何を意味するのか。








始まったー。

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