ぺいばっく
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軽率に(ウザ)絡みますので。
ペイバックは貰えないと案外、困る前に先ず困惑するのだと知った今日この頃。
俺たちは対魔連盟本部にてヘンケンを睨みつけていた。
「ヘンケンさん、もう一度言ってくれないか」
「君には悪いがお金は支払えない」
どういう訳か支払えないらしい。何の脈絡もなくこういう展開になるとペイラノイハの神が弄ってるのでは?と疑ってしまう。
「何故です?」と努めて冷静に尋ねる。
冷静でないとついうっかり人死しかねないからだ。生来の気質はそう易々と変わらないものだ。嘆かわしくはあるが。
「君には前、冒険者ギルドとの対立構造について話したね。それで今回の件で発生する代金の出る場所なんだけど、基本税で賄われている。絶望した人更に金銭を要求したらまた絶望しかねないからね」
ここまでは理解出来る。税は嵩むがそれしかないのだろう。
「で、問題はギルドだ。戦闘主体のギルド、サポート主体の連盟、そう言う棲み分けができてるんだ。それが明白である以上それぞれにその役割が期待されるんだ」
もしや、今回俺がしたのは住民の避難ではなく戦闘。戦闘主体のギルド所属でない為に支払いがない、と?
「もう予想はついてるかもだけど期待された役割を果たす事で支払いは発生する。君は避難をそこそこに戦闘をしたから寧ろ期待に添えていない。職務怠慢だ」
ならー、対魔連盟を辞めてギルドに入れば。寧ろその方が俺の利になる。
ヘンケンには恩があるがこのまま付き合い続ければ俺が損をしかねない。
「ああ、そう。対魔連盟からギルドへの転職は無理だ。だって上下の差がある。しかも今君の身元の証明をしているのは間違いなく私たち、対魔連盟。証明がなくなればただの非人だ」
「なっ!?」
つまり、俺はちょっとした見せかけの善意に騙された哀れなスケープゴート。
とんだブラック企業だ。言っているのは酷く正論だが。にしても奴隷ですらなく非人とは酷い。
ーいっそこの場で皆んな血祭りに上げようか?
どうせ、紛い物の命だ。自棄で捨てても良くないか?
この俺と大勢の命が釣り合うのだ。
俺一人死ぬ頃には夥しい死体の山。それも、ああ悪くない。
「でも、落ち込むには早い。最初に言ったはずだよ、君はジョーカーだと」
「そう言えば…」
言っていた。確かに言っていた。
あれは俺を懐柔するための甘言ではなかったのか。
「丁度一週間後にヒュエルツを統治する支配者第一位階曲穿主催で闘技祭が開かれるんだ。君にはそれに出てもらう」
「勝って連盟のイメージアップか?」
「それもあるけれど、目的は個人の優勝。優勝すれば優勝した個人のみならずそのスポンサーにも賞金や補助が贈られるんだ。表向きは人間育成に成功した偉大な団体として。裏向きは優秀な人材を確保、育成する母胎としての優位性を確保する代わりに人材の横流しをしろっていう脅しで、ね」
「よく喋るな」
つまり、こういう事か。合法的な人身売買。最後はどうせマガツ・ウガチのお抱えになるのだろう。
結果で見れば連盟は賞金でニッコリ、俺は職場の改善でニッコリ。
ウィンウィンだ。
ふと、ルピナスを見遣る。
ルピナスはヘンケンに胡散臭げな雰囲気を感じているのか顰めっ面だ。
けれどこの話はそれなりに魅力的に映るらしいが。どこか虚ろな瞳に期待の色も垣間見える。
ならば、腹は決まった。
「乗った」
「それは重畳」
ルピナスが揺れる位の魅力なのだ。
俺にとってルピナスが価値観の基準足り得る。
なら、こうするのが最適だろう。
「け、ど、取り敢えずそれに同意してやるから金をくれ」
がー俺はがめつく金を要求するのだった。
 




