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たたかうよ

「心象魔獣だ!!」


その叫びは良く聞こえた。

ヘンケンから言い含められていた事を思い出す。


「心象魔獣の被害が出たら君が真っ先に市民の避難をするんだ。決して戦闘をしてはいけない」


俺はフラワーショップ・橘を後にしー帰ったらルピナスにルピナスの花を買おうと決意しながら街を駆ける。


すると急に黒い靄が現れ石畳の足場から硬質なチェス盤のような足場に変化した。魔獣の固有結界だった。どうやら本当に心象魔獣らしい。


「ッ!!馬鹿か!!」


そこには一足先に冒険者ギルドのメンバーが雑兵相手に戦闘を繰り広げていた。

市民を退避させぬままに。

余りに杜撰。余りに無能。

とは言え固有結界から脱する為には本体の撃破ー心象迷宮の攻略が必須となる。

だから冒険者ギルドの面々の選択は間違いではない。が、その目は飽くまで戦いに比重を置く獣の目。


「復帰祝いだァ。今回の対価は対魔連盟の初任給の三分の二だァ」

「後払いか、上等だ。我、対価を支払う」


ヘッドホンを付けたイソギンチャクの雑兵を退けながら市民をなるべく早く後退させる。


とー。

一人の少年が雑兵に競り負けこちらへ転がって来た。鬼面を被り軍服をアレンジしたような装飾のある服を身につけている。


「うぐっ…」


そこにヘッドホンイソギンチャクの追撃が迫る。


有声慟哭クライ


錆びた大鎌をバトンの様に振り回し全方位に咆哮ロアのー不可視の音の障壁を展開しヘッドホンイソギンチャクを裁断する。


だがー、攻撃するにも防御するにもリスクを負わなければならない。

大鎌を振るえば振るうほど『欲しい』と『憎い』が俺の思考を染め上げるのだ。

それこそがエンヴィー・メランコリアのエンヴィー・メランコリアたる所以である。

とー。


「済まないが力を行使させて貰う…オルタナティブ!」


その少年の姿は俺に変わる。走ると靡く黒い髪、黒々しいハイカラさん、端正に整った顔に黒曜石の瞳。踏みしめるブーツも見慣れたものでその姿は紛れもなく俺自身。…何気に初めて客観的に自分を見たが端的に言うと少女にしか見えない。


しかし問題はそんな事ではない。その力は…オルタナティブは俺の剥奪の力に似ている。自分を他人にする力と他人を自分にする力。

だが、その力は強過ぎる。それを少年は知っているのか?俺は最近知ったが、あの少年は?似ているからこそ気になってしまう。


裂帛の気迫で敵に迫り錆びた大鎌を振るう少年。それを見て気付く。


「病んで、ない?」


少年は俺の力を振るいながらも自我を保っているように見える。

その姿はとても印象的でー気付いたら少年を追っていた。


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