まちをあるいたよ
あれから三日程石造りの部屋ー対魔連盟本部地下室で過ごした。と言うのも絶食の反動で体力が低下し高熱を出す羽目になったのだ。
その間壮年ーヘンケンは俺に付きっ切りだった。
まあ、そんな事もありヘンケンには一切を打ち明けた。飯の恩もあるし別に言っても構わないと思ったからだ。
他にも色々とヘンケンには良くして貰った。この世界の常識や知識。中でもこの世界やこの国ーデイブレイク国についての話は一層興味深いものだった。
この世界、ペイラノイハは大きく二つの大陸に分かれており西側の大陸をデイブレイク国が、東側の大陸をオミ王国がそれぞれ支配している。
デイブレイク国は全てで十二の州からなり十二人の強者がそれぞれの箇所を統治している。因みにここの地名は魁星都市ヒュエルツ・イェン・ヒェン。十二の州の中で最大の領土を持ち、最強の支配者第一位階曲穿が統治しているらしい。
「さて、じゃあ君は対魔連盟に所属する、と言うことで良いんだね?」
「ああ」
そして今、俺は職業を手に入れた。
と言うのも俺の力が強い事が明白である事、野放しにしておくには危険過ぎること、そして冒険者ギルドに引き抜かれる前に唾つけておきたいと言う理由から俺には対魔連盟に所属する事を望まれたのだ。
さて、対魔連盟と冒険者ギルドについて、だが。これが少々面倒な話になる。
先ず魔獣を倒し人間に戻すという事を仕事にする人間が現れ、そこに武器の需要があると見た商人が腕利きと結託して商いを始め冒険者ギルドの前見、魔獣ギルドが発足した。
しかし、魔獣の討伐を仕事としていた他の人間達がこれを良く思わず対魔連盟を結成した。だが、腕利きの人間と商人のバックアップを前にしては形無しで結成一年で事実上の瓦解。
それから対魔連盟はシフトチェンジし、魔獣にならないように市民のカウンセリングや落し物の捜索、雑用、エトセトラをこなすハイスペック何でも屋となったのだ。
しかし二者間の確執は未だに消えず冒険者ギルドが上、対魔連盟が下と言う認識が一般的になってしまったそう。
そして、その対魔連盟のバランスブレイカー、或いはジョーカーが俺と言うことだ。
派閥争いには興味はないが恩人の助けを求める声に耳を傾けないのは情けないと二つ返事で対魔連盟に所属することとなったのだ。
◆◆◆
「シャバの空気は美味いな」
石造りの部屋から晴れて外に出た俺は伸びをしながら街を歩く。
出店やなんかのお陰か活気で溢れている。
…が、日本家屋と中世ヨーロッパ風の家屋が遍在する風景は中々にカオスだ。大正浪漫とでも言いたいのか。
そして一つの店に目が行った。
「花屋、か」
フラワーショップ・橘。
…ヒュエルツは魁星都市と呼ばれるだけあって世界中の転生者、転移者のチートの産物が数多く集まっている。しかも、異世界らしからぬ公用語が日本語。大丈夫なのだろうか。まぁその人口の約七割が日本人なのだ仕方ない。日本文化が侵食しているのが少々複雑ではあるが。
ルピナスに買ったら喜ぶだろうかとふらりと立ち寄る。
「いらっしゃいませ!」
マロンペーストの髪色の短髪のハツラツとした美少女の店員が言う。ここに来てから嫉妬心は表情に出ない程度に抑える事が出来るようになったのは幸いだった。
「彼女に花を買いたいんだけれど…」
一応ヘンケンからは幾らか生活費を頂いている。ヘンケンには頭が上がらない。
「そうなんですか!良いですね!ところで彼女さんのお名前は?」
「あ、ああルピナスだ」
マロンペースト店員の目が光る。ルピナスという花でもあるのだろうか?
「ルピナスですか!花の名前ですね!花言葉は母性愛…貪欲…くうそ…」
ドォォン!!!
マロンペースト店員の言葉は大音響の中に掻き消された。




