俺たちが魔王軍だ
『魔王』杉原清人
右腕が消し飛んだ。
頬の肉も少し持って行かれた。
回復は…出来ない。
『エンゼリカ』を砕いても治らない。
概念の粉砕?
馬鹿げている。
しかし、現状はこう。
杉原清人の右腕の概念が粉砕されたのだ。
だけど…負けられはしないッ!!
ロイヤル・ストレートフラッシュをユーリィに任せ俺は破壊と創造の源泉に自ら飛び込む。
「咆哮ッ!!」
破壊の概念を咆哮で相殺しながら黒々とした触手目掛けて疾駆しー
「簒奪」
奪う要素は創造の一部。
俺がそれを奪った理由。
「来いよ…ENVY!!」
魔獣の軍隊。
俺が魔獣化した際に生まれ落ちた戦化粧に血を求め(ブラッディ)を内蔵した自爆人形。
そして創造の概念を以って作り出すのは心象結界『ザ=ステラ』。
清人の清人による清人の為の舞台。
「ハッ!腕粉砕されて益々健在とは恐れ入るなァ魔王様ァ!!」
「清人、無理は駄目だよ?」
「全く、そろそろ腕が痛くなった頃合いだ。ヤケに全身を動かしたい気分だよ?どうしてくれるんだい?魔王様?」
「決まってるだろ?アレだ」
「「「アレ?」」」
「ガチンコだ!!」
いつかの俺が出した答えだった。
にしても、案外俺の仲間って奴は思った程クレバーじゃないようだ。
もっと賢い奴らだと思っていた。
こんな馬鹿な仲間と馬鹿やれる、なんてな。
それは本当に。
最ッ高な気分じゃねえか!
なあ、圭一郎。
見ているか?
お前の守ろうとしたものはこれなんだろ?
取り敢えず戦闘中だ。手短に済ませてやるよ。
お前の願い、魔王が引き継いだ!!
右腕が無いなら口で咥えれば良い。
いや、そもそも腕すら不要だ。
「行くぞ」
「応ゥ!!」
先ずティアが答える。
「心象解放」
金色の髪は一層煌めきロープには金の刺繍が縫い込まれる。
手にした護符は淡く輝き出し独特な威圧感が発生する。
「『神威ティアマート・エクス・マキナ』」
「心象解放」
次はルピナス。
革の鎧から変化し白銀に覆われた乙女へ変貌を遂げる。
旗は俺の天地深夜と対を成すような純白の大鎌に変化する。
「『聖女降誕フラッグ・オブ・ジャンヌ』」
「心象解放」
ユーリィは誰かの模倣する事でしか強くあれなかった。
けれど、今は違う。
短い間だが、圭一郎と一緒に居ることで内面が変化したのだ。
纏うのは騎士の鎧。
手には二本の戦鉈!!
「『戦友招来メルヘリュート・マハーバーラタ』!!」
そして、締めは…やっぱり俺じゃねえとな。
「心象解放」
革のジャンパーを脱ぎ捨て、『エンゼリカ』であの時のように髪を切り取る。
とうに千切れた鉢巻を振り払い大正浪漫を高らかに打ち鳴らす。
刹那、幻視したのは天使の翼。
「『最終心象セラフ・クィンジェ』」
隻腕の魔王、否天使はそう言った。
「俺たちは魔王軍が精鋭、一騎当千の強者達」
隻腕の天使は続けていった。
「止めれねえ事に定評ありのキ●チガイ集団ン」
金髪の賢者はそう続け。
「親友の誇りを受け継ぎ」
鉈の継承者は謳うように誇り。
「貫き徹す一本槍」
純白の聖女は軍隊の様相を現した。
「俺が…俺たちが!!魔王軍だ!!」
「「「「止めれるものなら止めてみな!!」」」」




