扉に進む者たち
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『アウラニィス討伐組』
「ったく、防戦一方ってかァ?笑えねえェ!」
「ティア、今度は左に二歩!」
形勢は逆転していた。
ルピナスの状況処理能力を以ってしても先を読む事は困難を極め二人とも着実にダメージを蓄積していた。
逆転ジリ貧負けが目に見えるようだ。
敵は最も奔放な死を運ぶものなのだから。
「勇気咆哮!」
ルピナスは完全な前衛支援職だ。
全体を見渡せる広い視野に加え人の心理を見抜く事に長けている彼女は司令塔として現場を指揮し旗をはためかせながらティアの身体能力を強化していく。
「守護符ゥ!!」
淡い青色の光が二人を包む。
ティアは完全な後衛タイプだ。
符を使った強化、弱体化、現象の発現を得意とする反面スタミナが弱く機動性は大きく劣っている。
ダメージソースとしての優秀さは一際目を惹くがルピナスに指示を出して貰わなければ直ぐにスタミナのガス欠を起こすのだ。
「起爆しやがれェ、地雷符ゥ!!」
アウラニィスの足元に設置された符が爆発し、土埃を巻き上げる。
鼓膜を揺さぶるような叫び声をあげるがジワジワといやらしいペースで肉体が回復していく。しかし、全体的に傷が目立ち所々回復が間に合わないのか傷口が塞がらないまま蠢いている。
「回復符ゥ…埒が明かねえェ」
「アウラニィスは死に体。殺せるのは自明」
「だなァ。ただ、やっぱり曲者は時間かァ。アザトースと連戦するには時間をあんまり掛けられねえェ」
「仕方ねえかァ、爆破符四枚に幻惑符一枚…使って一気に決めるかァ」
袖から取り出したのは五枚の符。
ティアの符の中でも取り分け性能の良い爆破の符と清人の『デモニカ』と噛み合いが良い幻惑符だ。
これらを戦闘中に作るには時間が掛かる為、此処で切るには余りに惜しい手札でもある。
しかし、ティアは迷わない。
躊躇いなく使用を選択する。
「まぁ、アザトース戦は清人の奥技に頼るかァ」
それをばら撒き一斉に起動する。
「輝け、爆炎双熱弾」
最初から切り札を切れば勝てる戦いだったが結局は時間のロスを生んだ挙句に切り札となる符の大量使用をしてしまった。
これが後でどれ程響くのか、彼女達は知るよしもない無かった。
『アウラニィス討伐組』
討伐成功。
特記事項 ティアの符の一時的な枯渇。
◆◆◆
『オッココク討伐単騎』
「成る程、これは有効そうだな」
杉原清人は心象解放で生やした背中の悪魔の翼で飛行しながら立体的にオッココクを追い詰めて行く。
全方位から放たれる鎌の暴虐がオッココクをジリジリと交代させていき…。
「ヌ・グァッ!!ヰィィィィィィィイッ!!!」
それを覚醒させてしまった。
オッココクの能力、『敵意』。
これに晒された敵対者は蛇に睨まれたカエルのように動けなくなる。
「…ぁ…っ!?」
声も出なくなるその恐怖感。
すかさずオッココクの拳が迫るが背中の翼を消去して自由落下する事で回避する。
直ぐに思考を切り替え今度は清人が前進する。
「連射されないのがせめてもの救いか…」
清人は今、節約をしながら戦闘をしている。
全てはアザトース戦の為に。
が、ここで足止めを食らっては全滅が確定する。
それこそが最悪。
ならばと清人は打って出た。
「簒奪」
要素を剥奪する力。
それで『敵意』を奪う。
これは清人の生まれついての力。
異能覚醒とも違う特異。
同格や格上には使えないがこの場では清人が強い。
だから理不尽な剥奪は成功する。
「詰めだ」
「獅子心象・爆裂咆哮!!」
この一撃は突然の簒奪に狼狽えるオッココクに命中し、その命を奪った。
『オッココク討伐単騎』
討伐成功。
特記事項 なし




