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あの日、僕らは藤川さんといた。

作者: 重荷 耐子

朝、目が覚めると、横にいた女がブスだった時のエモーショナル。昨晩、愛し合ったことを心から後悔した。レストランカーヤでナンパした店員の娘である。料理がまずい、出るのが遅い、娘がブスでお馴染みの、レストランカーヤだ。私はレストランカーヤに再度行ってみると、そこにはもう何もなかった。そこには建物大のクレーターが一つ。異次元にレストランカーヤだけ飛ばされたらしい。近くの水辺には溺れかけている全裸のおじさんがいたが、私はニッコリと笑いながら、沈んでいくおじさんの頭部を見送った。完


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


誰しもが自分の心に巣食う、差別心を抱えている。また、同時に慈愛の念も抱いている。


ストリートチルドレンにパンを投げつける行為は、差別心と慈愛の念がミックスされたままアクションしてしまったケースだ。


人は残酷で儚く、そして美しい。


エモがエモを呼び、また誰かがエモになる。


恐怖心を克服することが、エモのウロボロスから逃れることの唯一の方法である。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


藤川には彼特有の素敵な笑顔がある。


グーグルアースで富山県某所を調べると、満面の笑みで泣きながらボタンを連打している人が写っているという都市伝説が2007年頃に流行った。


藤川の目、藤川の手。


無限大に広がる藤川は、エビフライが好きなホモである。完


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


藤川さんのトランクの中には


夢と希望が一杯詰まっている


今まで、コツコツと貯めて来たそれらを、


派遣先で知り合った馬の骨共にバレる訳にはいかないのであった。


しかし、クリーン服越しの藤川に、どこにも幸福の影などなかった。


後日、クリーン服を着たまま県道を逆走する車両の事件を起こし逮捕された。彼は決してクリーン服は脱がず、泣きながら満面の笑みを浮かべていた。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


1人の偉人が今、死のうとしている。


人生に飽きた藤川は、遂に長年の想いを振り切り、エマージェンシーボタンを押そうとしていた。


藤川は、松崎しもきに車で引かれてからというもの、その後遺症で赤いボタンにしか興味がなくなった。


勤務先の工場にある、クリアケースでガードされているエマージェンシー表記の赤いボタンに取り憑かれていた。


同僚や上司から、このボタンだけは押すなと何度も念を押されていた。


しかし、もう限界だった。


毎日の仕事にウンザリしていた藤川は、今まさに凶行を犯そうとしている。


ニコニコ顔で、顔をクシャクシャにして、目から大粒の涙が溢れていた。


ポチっとな。


工場の跡地から犯人の物と思われる、レンズにヒビが入ったメガネが発見された。


そして、全てが終わった。完


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


衝動的にエビフライを山盛りにする行為は、過去の恨みを消化出来ていない証拠です。


と、精神科医に言われたので、腹がたってtnt爆弾をセットしておきました。


どーも、藤川です。


笑顔に自信があります。実は性的に女性的なところがあります。バイセクシュアルです。


真紅に染まったボタンを押したら、何故か会社をクビになりました。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


藤川は夜の街をエンジョイしていた。ネオンきらびやかな建物をハシゴする。


もう、俺は良いんだ。ここまで良く頑張った。今日で人生を終わらせるのだから。


死ぬつもりになって歩いてみると、妙な勝気が生まれる。


パチンコで有り金を全部すって、商工ローンから借りた10万円がみるみると無くなっていき、残り千円になった。ホームセンターで買い置きしたロープが車のトランクにあった。それに手をかける。


藤川は死ぬのが怖くなってきて、結局、死ねななった。涙が頬つたり、嗚咽を漏らした。


誰かー、誰か助けてくれょー。誰でも良いからさー!


翌朝、自らの意志で全裸になり、電車に乗ろうとした所を逮捕される。


おじさんの何かが壊れた。大事な、だーいじな、何かが壊れたのだ。


まだ、春の訪れは来ない。完


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


本当の孤独は無人島になんかじゃなく、この都会にあった。溢れる程人がいるのに、誰もかれも知らない人達ばかりだ。藤川はそろそろ飽きてきた。


自分自身が何者かなんていうことをおじさんになってから突然考え出すことは、鬱病へのコースを辿ることになる。


おじさんで精神病はかなり相手にされなくなるバッドステータス。藤川はギリギリの線で踏ん張っていた。少しうんこが出た。


パンツの中にある少量のうんこは幼児だったら許されるであろう。しかし、藤川はおじさん。目にうっすらと涙を浮かべながら、商工ローンのサンドイッチマンをやっていた。


どうしよう、どうしよう…。


突然何かに導かれるように全裸になり

「咲かそうよ お花 咲かそうよ」

と歌いながら街を歩き出したのである。


うんこが股間からこぼれ落ちた。大いなる大地にこぼれ落ちたのだ。


藤川は幸せだった。そして、前方不注意の軽トラに轢かれて死んだ。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


爆笑するしかないのは、藤川が残像が実体化すると同時に、実物に牙を剥いたことです。


私は見てしまった。藤川が藤川と口論しているところを。その末、残像の藤川が実物の藤川を夜の海に突き落として殺したところを。


しかし、残像の藤川は所詮、藤川のスペックで、それ以上でもそれ以下でもなかったのです。やはり、目に涙を浮かべて、笑ながら、山盛りエビフライなのです。


残像が残像を生み出し増幅する藤川。今となっては、僕たちと会った藤川ですら、残像だったのかも知れませんね笑。


その秘密はトランクにあるって、友達が気付いた頃から、藤川の警戒心が強くなったのかも知れませんね。


それから、藤川は会社に来なくなりました。風の便りで、某小学校にて全裸で凶行を働いて、現場で射殺されたと聞きましたが、はたして本人なのでしょうかねえ。


あのトランクがある限り、何度でも増幅しているんじゃないかと時々思いますよ。今も変わらずパチンコに行っているんじゃないですか?身なりもあの時のままで。私が知っているのはここまでです。えっ?私が誰かって?私は藤川っていう者です…。ヒヒ…ヒヒヒヒヒ…。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


増殖する藤川を僕等は爆笑してみていた。実は本物の藤川は最初の列車の時のみで、あとは残像が実像化した藤川だということを誰も知らない。知っているのは神と閻魔大王だけだった。


あの山盛りのエビフライは増殖という観念に囚われた残像の藤川の比喩的行為だったのである。エビフライで伝えようとしたメッセージは誰にも伝わらず、ただの馬鹿だと思われてしまったのだ。


いいや、実際に馬鹿だった。エビフライは余されたのだから。増殖するものに取り憑かれていた藤川。


パチンコの玉、ライン上の仕掛品、エビフライ、肉片、スタミナ太郎。どれも増殖的で大量生産である。元藤川が遺した細胞分子レベルのダイイングメッセージ。


その後の彼を見たものはいないが、相変わらず元気でやっているように思う。


自作自演の弁当を作りながら、また、新たな季節労働者として、期間工をしているのだろう。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


美人局にあった藤川の涙は大地を洗い流しました。3ヶ月間降り止まない涙。ヒックヒックと泣きっ面。何故か時々笑い出す藤川。


神様はそれを動画に撮って、スローモーションにしたり、コマ送りにして、飯を食いながら爆笑していたものです。


メメマリア、メーメマリア。と馬鹿にしながら踊っているウチに、友人のYさんは実物に求愛しに行ってました。抜け駆けしたんです笑。 ラジオのコネ、冠を使って。


どうか許してあげて下さい。男なんてそんなもんです。あー、神様。


藤川はうっとりとしながら母親のお弁当を頬張っていました。私はあたまに来たので、食いかけのカップヌードルをぶっかけてやりましたね笑。


いやー、藤川の頭部から垂れ下がるヌードルやその他諸々で悶える彼の姿は笑えましたよ。


泣いてましたね。「なんでそういことするの。川西くん、ねぇ、教えて…。なんで、そういうことするの?」


腹が立ったんでコップの水も投げかけてやりましたよ。そしたらね、急に藤川は萎んで、弁当箱の中に入っていたんです。ドラゴンボールのマフウバみたいでしたね。その弁当箱は、その辺のごみ箱に捨てましたよ。


作業場に戻ると既にクリーン服に着替え終わっている藤川を見かけた時は、肝を冷やしました。あるんですねぇ、そういうことって笑


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


否定的な物語を紡ぐ


いくつものエモな人々


出発の夜汽車はまだ来ない


駅のホームに並ぶ行列


目玉がくり抜かれた群像


愛を手に入れるために


皆、一様に並ぶ


手に入らないものだと知っていた?


段々と自信が無くなっていき


消えるのさ僕等も


何の変てつもない日だった


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


悲壮感が漂う。なんの前触れもなく、藤川の前を悲壮感が漂うだ。


彼の笑顔に裏打ちされているのは、積年の憎しみ。憎しみが動機となって、あの笑顔が生み出される。憎しみが動機だから、情緒不安定である。


ボタンを押してみたのは怒りが頂点に達したから。何故、自分はこんな目に遭わなければいけないのか?その思いが沸点に達した。今まで随分と我慢してきたのだから。


生まれてからずっと憎んできた。世間を、何かと馬鹿にしてくる人々を、相手にしてくれない女性達を。


色んな木がある。藤川もその内の木である。根を張るのに精一杯である。誰もわかってくれない。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


今度あったらさー、セックスしようね。

塚田は満面の笑みでそう言い放った。


藤川はそれを聞いて有頂天になり、絶対なもんで、絶対なもんで、と連呼する。


藤川の目、藤川の手は、興奮で震えていた。藤川はおじさんで童貞だった。神の領域に達していた。


おじさんで童貞。別に悪い訳ではない。しかし、確実にエモーショナルな何かが含まれているシチュエーションである。


藤川はテンガをポジショニングして、挿入の練習をする。初老の母にそれを見られると、鈍器の様なもので何度も母を殴りつけていた。気づけば、動かなくなった母と、下半身だけ丸出しの藤川がいた。


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