1.改造人間
その日、山田 優子は何者かにクロロフォルムで眠らされて誘拐され、研究所で体を改造されてサイボーグになった。
ベッドの上で目を覚ます優子。
「ここは……?」
起き上がって辺りを見渡す。
見たこともない部屋だ。
部屋の扉が開き、白衣の男が出てくる。
「目が覚めたかね」
「あなたは?」
「悪の天才科学者、Dr.ケイさ」
「自分で悪のとか言っちゃうんだ?」
「何か文句でも?」
「私はなんでこんなところに?」
「君に世界征服に協力してもらおうと思って連れてきた」
「断るわ」
ケイは懐からスイッチを取り出した。
「これは小型爆弾のスイッチだ。これを押せば君の頭は吹っ飛ぶぞ。嫌なら手伝え」
「爆弾ってこれのこと?」
小さな爆弾を耳の穴から取り出す優子。
「なんか耳の中から出てきたよ」
「こら、取り出すんじゃない!」
「ほい」
優子はケイに爆弾を投げ渡した。
「わっわっわ!」
ケイは爆弾を何とかキャッチするが、スイッチが押され、爆弾が爆発して黒焦げになってしまった。
「大丈夫?」
「大丈夫な訳ないだろ! とにかくだ、否が応でも君には世界征服に協力して──」
「嫌だ」
「では頭を改造しよう」
「させない!」
優子はベッドから降り、ケイの懐に潜り込んでアッパーを繰り出した。
「ぎょえ!」
上に吹き飛んで天井に突き刺さるケイ。
「すごいパワー!? あんた私にどんな改造をしたの?」
「サイボーグにしたのです」
「マジ?」
ケイは天井から脱出する。
「帰る。出口どこ?」
「ここは山奥の研究所。果たして君一人で帰れるかな?」
優子はケイの胸ぐらを掴んだ。
「私を元のところに帰しなさい」
「それはできない相談」
「あんだって!?」
優子はケイを投げ飛ばし、壁に叩き付けた。
「ぐはっ!」
「これでも帰さないって言うんなら次は殺すわよ」
「わ、わかりました」
ケイは優子を街へ送り届けた。
「じゃ、もう会うこともないだろうね」
優子はそう言ってケイと別れて帰宅したが、しかし、家が火事になっていた。
家の前には消防車が止まっており、消火作業を行っている。
「どうやら行く当てなくなったみたいだね」
ケイがやってくる。
「あんたが誘拐してくれなかったら私は死んでたかも」
「お返しに世か──」
「それは断る」
「最後まで言わせてよ」
「どうせ世界征服を手伝えって言いたかったんでしょうけど、そんな恐ろしいことできる訳ないじゃん」
「でも今の君は不死身だ。何でもできる」
「だったらこの力を平和のために使うわ」
「ま……とりあえず研究所に戻るかい?」
優子は嫌々研究所に戻った。