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2013年・2014年

毒水のプールにて

優しい祈りを祈って

苦しい叫びを叫んで

小聖堂は実験室

容器に包まれた殻の中身は

ほんとうにぐちゃぐちゃ

きっと切り絵みたい

埃がいつ入ってくるかわからない部屋では

卑しい素姓が漏れていくだけ

少しばかりの明かりだけでは

やっぱり誤ってしまうのがオチ

命がけでくるめく都市は

そっと感情の墓

飛べば飛ぶほど潜り込む

いうことのきかない肉体

ただより高い愛は

簡単に手に入らない

むし暑い季節に

空高い雲群れを

生ぬるい炭酸は

欺罔のかたまり

喧噪を謳う電線よ

よくわからないプラスチックよ

流行の音楽にとらわれて

中心相から傾いた姿勢

瀞に這いよる魚たちを

見ている孤独

水没圏にはほど遠い

無菌のフラスコと

培養炉にほだされて

機が熟された疲れた身体

みにくき影とみにくき光

よく見ると同じ姿

指先の傷口に滲みる水

振動を味わう感覚の渕 

自分の発生源を

探すだけ無駄

誰にも

語られない思いを

ふかく沈めて

水底は汚れていった

泣いて

嘔吐して

何を迎えた?

水面に流れる薄汚れたこころ

目を潰してまで見たくなかった物語

ひとびとの熱射にやられて

私の罪の意識が狂ってしまった

荷物をおろして

寂しさをてばなして

殺される蝉しぐれ

シンプルに透明な風

息が切れて夏

暴力と太陽

滲んだ汗をぬぐって

水着に着替えて

世界の果てを描いて

闇の夢なんて見ちゃってね

一滴の毒水には無言の即死

ずっとずっと遠くへ逝く人と

ぼんやりと溺れてみませんか

自分の幻泥を贖ってまでも

それでもまだ満たされないのなら

今年の夏こそ

さあ

毒水のプールにとびこんで

心をまかせて

身を溶かして

死んだようにただよって

泳いでいく

水鏡の霊魂 

陽光の粒子

もう、何者にもおびえない

もう、息もできない

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