毒水のプールにて
優しい祈りを祈って
苦しい叫びを叫んで
小聖堂は実験室
容器に包まれた殻の中身は
ほんとうにぐちゃぐちゃ
きっと切り絵みたい
埃がいつ入ってくるかわからない部屋では
卑しい素姓が漏れていくだけ
少しばかりの明かりだけでは
やっぱり誤ってしまうのがオチ
命がけでくるめく都市は
そっと感情の墓
飛べば飛ぶほど潜り込む
いうことのきかない肉体
ただより高い愛は
簡単に手に入らない
むし暑い季節に
空高い雲群れを
生ぬるい炭酸は
欺罔のかたまり
喧噪を謳う電線よ
よくわからないプラスチックよ
流行の音楽にとらわれて
中心相から傾いた姿勢
瀞に這いよる魚たちを
見ている孤独
水没圏にはほど遠い
無菌のフラスコと
培養炉にほだされて
機が熟された疲れた身体
みにくき影とみにくき光
よく見ると同じ姿
指先の傷口に滲みる水
振動を味わう感覚の渕
自分の発生源を
探すだけ無駄
誰にも
語られない思いを
ふかく沈めて
水底は汚れていった
泣いて
嘔吐して
何を迎えた?
水面に流れる薄汚れたこころ
目を潰してまで見たくなかった物語
ひとびとの熱射にやられて
私の罪の意識が狂ってしまった
荷物をおろして
寂しさをてばなして
殺される蝉しぐれ
シンプルに透明な風
息が切れて夏
暴力と太陽
滲んだ汗をぬぐって
水着に着替えて
世界の果てを描いて
闇の夢なんて見ちゃってね
一滴の毒水には無言の即死
ずっとずっと遠くへ逝く人と
ぼんやりと溺れてみませんか
自分の幻泥を贖ってまでも
それでもまだ満たされないのなら
今年の夏こそ
さあ
毒水のプールにとびこんで
心をまかせて
身を溶かして
死んだようにただよって
泳いでいく
水鏡の霊魂
陽光の粒子
もう、何者にもおびえない
もう、息もできない