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チートな世界に花束を!

チュミミミミミンーン!!


やかましい蝉の音が鼓膜を刺激する。


チュミミミミミミミン!!


まるで耳の中に蝉が住み着いているんじゃぁ~ないか? と思える程、デカくて不快な音だ。


チュミミミミミミミミミ……ゲホッ! ゴホッ! みみみンッ!


うん?


今、蝉が咳き込んだよな?


咳き込む?


そもそも蝉の音ってヤツぁ~、羽根と羽根を擦り合わせて鳴らしてるんだよなぁ~。


咳きなんてすんのか?


チュミミミミミミ…………


「やかましいッ! ボケッ!!」


俺は裏拳で喧しい蝉をブチのめす!


「イターーーーーーーーーーーーーイッ!」


蝉が人間の奇声の様な音を奏でる。


はて、最近の蝉はこんなエンターティナー的能力も有しているのか、うむ。進化のスピードとは人類だけの特権ではないのだな、と改めて痛感させられる。


だが、しかし! 人が気持ちよくネオクマガヤ市民公園の芝生の上でお昼寝をしていたと言うのに、全く持って失礼且つ気に食わん蝉だ!


貴様がイナゴならば、佃煮にして晩のおかずに頭から喰らっているところだ!


「そんな~食べちゃダメですよー」


なぁにぃ!?


最近の蝉は人の心を読んで、尚且つ会話まで出来ると言うのかっ!


「いや、心の声も何も、さっきからペラペラと口に出して言ってるじゃないですか!?」


む?


「あー、これは失礼。僕は時偶、心の中で思った事を全て口に出してしまう癖があるんだ」


「はぁー、そうなんですか」


「ああ、そう言う訳なんで、僕のお昼寝の邪魔をしないでくれたまえ。蝉クン」


僕はしゃべる新種の蝉にそう告げると再び意識を完全なる無へと誘う。


「いや、あの~さっきから一切瞼を開いて頂いていないから気づいていないようなんですが」


やかましい。


最近の蝉と言う奴はこんなにクドいのか?


このクドさはッ大して顔も良くないくせにTVに出まくっている舞台あがりの三流俳優バリのクドさだ!


真に気に入らんッ!


「だから~私はセミじゃないですよ~!!」


うむ?


蝉のくせに蝉ではないと?


なんだ、上方の落語かなんかか?


生憎、僕は落語には一切興味がないんでね。


「誰もそんなこと言ってないですよ~。と、言うか、目を開けて下さいよー!!」


貴様、蝉の分際で人間様に指図すると言うのか?


動物は虐待すると捕まるそうだが、昆虫は殺しても罪に問われたりするのかな?


「え! えええええええええええええええええええっ、ちょ、殺す気ですか?」


殺す気満々マン。


「私は人間ですよー! 蝉の真似したのは、そのぉ~普通に声を掛けるだけだとつまらないと思って、つい」


あぁ、キミが蝉ではない「ちょっと頭のイカレた女」だと言う事は、最初から気が付いていたよ。


「はい!?」


そもそもチュミミミーンなんて鳴いたり、喋ったり、咳き込む蝉がどこの世界にいるというんだ!


全く非現実的だ!


「どこの世界?……フフフフフ、実はいるんですよ~。こことは違う世界に!」


何だ今度は、貴様は一体何を言っているんだ?


黄色い救急車を呼んだ方がいいか?


「で・す・か・ら! まずは目を開けて下さい!」


イヤだね。


生憎、僕は人に命令されるにが嫌いでね。


「あーそうですか。そーなら仕方ないですね」


蝉はそう言ったきり何も言わなくなった。


ようやく消えたか。


ヤレヤレ、これでお昼寝の続きが出来る。


むっ!?


な、なにをやっているんだッ! 貴様はッ!!


その場から消えたと思われた蝉はドカドカと足音を響かせると、瞬時に僕の頭を持ち上げ、腕に首を挟め締め上げてきやがった!


こ、これはバックチョーク!


「うぐっ! うぅううっ!!」


呼吸が出来ない。


こいつ米兵か! レスラーか!


「いい加減目を開けないと、落しますよ」


く、なんでこんな訳の分からん奴の言う事を聞かなきゃならんのだっ!!


「これは神様からの命令なんです! いい加減言う事聞いて下さい!」


なんだとぉーーーーーー!


こいつ新手の宗教勧誘員かッ!!


残念ながら、僕は神やら仏やらは信じていないんでね!


今の台詞を聞いて、この山田・太郎・二郎・三郎・シロウ! 絶対に従わん! と心に決めたぞ!


「もぅ! なら、これでっどうだっ!!」


痛て、痛い!


コイツ、今度は僕の瞼を強引に引っ張り上げようとし始めやがった。


「げっ! 白目!?」


ふふふ、僕はすかさず黒目を目の裏側まで移動させたんだよ。貴様の姿など絶対に見てやるものかっ!


キミは「北風と太陽」の話を知らんのか?


無理強いはすればする程、逆効果なんだよ。


何事も正面突破だけで解決出来んなら、人生も戦争も苦労せんわ。


「どんだけ天邪鬼なんですか~。ほんとうメンドイなぁ……」


面倒だと思うならさっさとこの場から失せろ。


僕はキミの面倒事に付き合うつもりは更々ないとさっきから言っているだろう。


「こうなったら御法度だけど、近親相姦するしかないか」


はっ!?


貴様、今、なんと言った!?


というか、今の会話の流れから何でそんな展開になる!


と言うか、キミと僕は赤の他人。近親相姦は成立せんぞ!!


「あ、間違えた……こ、ゴホン! こ、こうなったらこうなったら御法度だけど、強制送還するしかないか(棒)」


お前……今、素で間違っただろう。


しかし、強制送還? なんだ、家まで御叮嚀に送り届けてでもくれるのか?


「山田さん、あなたが還るべき場所……そこに送り届けるだけですよ♪」


生憎、僕はもう二、三時間はここでまったりしたいんだ。


もっと暇そうで洗脳しやすい奴でも見付けて、そいつと楽しく遊んでいろ。


「ま~ぐ~ろ~♪ ま~ぐ~ろ~♪ アタイ等~陽気な~マグロ海賊漁船団~♪」


ついに気でも触れたのか。唐突に下手くそ且つ意味不明な鼻歌を歌い始める蝉女。


「転送、伝奏、天窓~♪」


韻を踏んでいるな。うん、だからなんだ。


「轟丸へ~ゴーゴー♪」


天国へでもゴーゴーしてくれ。


つーか、轟丸ってなんだぁ!!

















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