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来生創造アマテラス  作者: 泰春
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現実と覚醒

どれくらい気を失っていただろう。

ハルトは母親に守られたためだろうか、かすり傷程度で済んだ。


「お母さん…そろそろどいてよ…」


母親はハルトを強く抱きしめたまま動かない。

ハルトは無理やり母親の手を振りほどき、立ち上がった。


改めて母親の姿を見て、ハルトは我が目を疑った。


母親の背中にはガラスの破片や木片、さらには鉄パイプ等、無数の瓦礫が背中に突き刺さっていた。

背中から見ると、それを人と認識することは不可能であろう。


ハルトは大声で泣くでもなく、その場に崩れ落ち、静かに涙を流した。

現実が信じられなかった。

先程まで会話をしていた母親の変わり果てた姿を見たのだ。

さらにハルトは5歳になったばかり。

重すぎる現実であった。


ハルトは現実を受け止めることができずに、長い時間、その場で時を過ごした。


遠くから聞こえる地響きと、四方八方から聞こえる悲鳴にハルトは我に返った。


ふと周りを見渡した時、そこにはハルトの知る世界は存在しなかった。


荒れ果てた大地。元々は住宅街であったはずだが、それを感じることのできるものは何一つない。

空は赤く染まり、青く透き通った以前の空は嘘のようだった。


「逃げるのよ!坊や!」


どこからか走ってきた40代前後の小柄な女性に突然抱きかかえられた。


「何するんだよ!まだお母さんが…」


「もう振り返ってはだめ!

今は生きることだけ、ただそれだけ考えなさい!」


女性はそういうと、ハルトを抱きかかえた状態で走り出した。


しかし、この女性との逃避行はすぐに終わりを告げた。


突然ドスンという地響きと共に、巨大な鉄の塊が空から降ってきた。


女性は鉄の塊が降ってきた衝撃波でバランスを崩し、ハルトは投げ出された。


「痛い…」


ハルトは体中に痛みを感じながらも、なんとか立ち上がった。


女性はまだ意識を失っていた。


「おばさん!逃げよ!立って!」


ハルトは女性を揺すり起こそうとするが、女性は意識を取り戻さない。


ガチャン!


突然空から降ってきた鉄の塊から長い腕のようなものが生えてきた。

その鉄の塊は大きさが役30mほどの円柱型で、ハルトは幼稚園で作ったことのある空き缶にストローをくっつけた空き缶ロボットを思い出した。


空き缶ロボットには胴体部分に大きな口があった。口の部分だけ生物的なフォルムをしており、舌もあり、歯もあった。何とも気味が悪いロボットだった。


ハルトはとてつもない恐怖に襲われた。

女性を起こすため、全力で体を揺すった。


「起きてよ!お願いだから!」


しかし、女性は起きない。


「死にたくない…」


ハルトは選択を迫られていた。


死にたくない…

生きたい…

やだ…


ハルトは自然と後ずさりしていた。

不気味な空き缶ロボットはハルトのいる方に向かってくる。


空き缶ロボットは周囲にいる人や動物、そして瓦礫までも長い腕で掴んで捕食した。


このままでは女性も捕食されるし、ハルトも同じ運命を辿ってしまう。


ハルトは逃げるしかなかった。


ついに空き缶ロボットは女性を掴み上げた。

そして、口の中に入れた。


この時、ハルトまでの距離は40mもなかった。

ハルトは女性が捕食されるのを見た。

そして、次は自分の番だと感じた。


否応のない恐怖と憎しみが入り混じる感覚にハルトは支配された。


「やだ…嫌だ…死にたくない…死にたくない…お前らが悪いんだ…いなくなれ…いなくなれ…ここからいなくなれよ!」


ドクン…ハルトは心臓の鼓動を感じた。


ハルトは逃げるのをやめた。


それは恐怖からではなかった。


なぜか空き缶ロボットと対峙することができる気がした。


ハルトは空き缶ロボットの方を向いた。


空き缶ロボットも立ち止まる。


ハルトは右手の拳を握りしめた。

それを天にかざした。


次の瞬間、天から空き缶ロボットと同じ大きさの、人の形をした巨大な物体が静かに降りてきた。

その巨人は一見人のように見えるが、足は逆関節となっており、腕も普通より長い。全身が細く、色は黒い。

背中には背骨のラインに沿って、突起物が並んでいる。

顔は小さく、顔の半分が鋭い牙を持つ口で、鼻はなく、目は鋭い。

どこからどう見ても、初見で受けるイメージは悪魔である。

しかし、ハルトには全く違う印象を与えていた。


「アイアントルネーダーだ…」


無論アイアントルネーダーとは似ても似つかない姿であった。

しかし、今のハルトにはアイアントルネーダーなのだ。


突然悪魔のような形相の巨人の胸部が開き、中から植物の蔦のようなものがハルトに向かって伸びてきた。


「うわぁ!やめて!」


蔦はハルトに巻きつき、一気に巨人の体内へ引き入れた。


巨人の体内は薄暗く、ほとんど何も見えなかった。


「なんなんだよ!出して!」


ハルトはパニックになっていた。


ハルトに巻きついた蔦は離れず、体に巻きついたままだ。


突然、左右の耳の中に蔦が入り込んだ。

激痛がハルトを襲う。


「やだぁ〜!」


しかし、その痛みはすぐに消えた。


突然ハルトの視界が開けた。

いや、正確にはハルトの脳に直接映像が送られている感覚だ。


目の前には空き缶ロボットがいる。


空き缶ロボットはなぜか襲ってこない。


「こいつ…動かせる!」


ハルトは直感的に操作がわかった。

いや、動かすという感覚とは違う、当たり前のように、自分の手足を動かしている感覚に近い。


「壊してやる!」


ハルトは空き缶ロボットに向かって行った。


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