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エピローグ

今日はクリスマス・イブ。


深黎ちゃんの誘いを断って、僕は一人家にいた。よくは解らないけど、どうしても家にいたかったから。

「家にいたいからいるって……なんだか開き直った引きこもりみたいだな……」

ベランダに出てみれば、聖夜前に相応しい澄み切った風に、透明な夜空が視界を埋める。そこに浮かぶ数多の星と、ひっそりと光を放つ三日月が、暗いだけの夜空を優しく彩って。

冬休みの序盤、僕はまったく進まない宿題を放置、毎日をだらだらと過ごしている。

ふと、終業式以来会っていないクラスメイトのことが頭に浮かんだ。

あまりの寒さに、部屋に戻りそうになった。けれど、どうしてもここにいなければいけないような気がする。

首を振り、視線を空へと戻す。そこには相変わらず闇とわずかな光があった。

「あ……」

今、ほんのちょっぴりだけ切なくなったのはどうしてだろう? 一瞬、誰かが心の中で微笑んだような気がした。

「ふぅ――」

肺に溜まった息をそっと吐き出せば、それは真っ白く凍り付いてすっと闇へ溶け消える。

現在時刻は午後九時半。

まだ雪が降らないこの地域。いつもクリスマス三日前まではイルミネーションが輝いているのに、当日になると一斉に電球が切れる商店街。そしてその代わりと言わんばかりに点滅を開始する街路灯。毎年同じで、いつまでも変わらないこの風景に涙さえ感じてしまう。

感じてしまうけれど、そろそろ町を見下ろすのに飽きてきた。

また、闇を見上げる。

視界には、空気が澄み渡っている夜空がさっきと変わらず広がっている。切なさを混ぜた視線を遠くへ投げれば、薄っすらとした山の輪郭が見えた。今は闇と同化した濃緑の山。午前では見られない新しい木々の姿は、威風堂々としていてとても感動する。風が吹き、思い出したように寒さが体中を駆け、ぶわっと鳥肌を作った。

綺麗な夜空、濃緑の山。そこに、どこか懐かしい真紅の物体が浮かんでいる。

あれはなんだろう? 

とても優しい記憶に、しばらく言葉を失った。

沈黙の中、謎の物体は落下を続行。僕と未確認浮遊物体との間隔は、わずか数十メートルまで縮んだ。

そしてあと三十メートル、二十三メートル、十五メートル――――


「たっだいま――――!」


僕の中で、何かがはじけた。

開かれる記憶の扉。


そう、彼女の名前はクロス。

一年前に振ってきた、サンタの少女だ。

魔法を使ったり、とびなわで戦ったりと、ちょっと不思議な女の子。

そして、我が家のとっても大切な

「おかえり、クロス!」

居候でもある。


――また、楽しい生活が始まった。





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