その3っ! 落下物と家族会議
次の日、僕らは家族会議を開いた。議題は、このサンタクロースをどうするか、である。
卓袱台を囲んで、お茶なんかを啜りながらの会議は、ゆるゆるしすぎていて緊張の欠片もなかった。そのせいか、足を崩し始めるサンタクロース。
「初めまして! 見習いサンタの、タサン・クロスです! クロスって呼んでください。好きな食べ物は乳製品で、嫌いな食べ物は豆製品ですっ。身長は百五十センチで、上から八六、六一、八三。得意なことは料理で、苦手なことは長時間集中することですっ☆ 今日から居候させてください!」
やたらと長い自己紹介が終わり、クロスはにへっと微笑んだ。
「いいじゃないか別に。それと美人だし」
この能天気な声は、今年で四十二になるお父さんのもの。
「えぇ。明るくなるし、全然構わないわよ?」
そしてこの凛とした声は、今年で三十七になるお母さんのもの。
「許してもらえるのは嬉しいけどさ、もう少し驚こうよ? サンタクロースだよっ? 居候だよっ?」
「でも、よかったね。斗助」
「うん……よかったね、クロス」
今日から我が家にはサンタクロース(見習い)が居候。
早速くつろぎ始めたクロスは、たたみの上で寝転がったり、勝手にまんがを持ち出してキッチンテーブルに積み上げていったりと、やりたい放題やっている。
「少しは片付けとかやってよねー」
「いやー」
「まったく……クロスの役立たずー」
ずっと前から一緒にいたような感覚。よくはわからないけど、とっても不思議な感じ。
「あ、三時だ! おやつおやつ♪」
立ち上がり、食器棚を物色し始めるクロス。戸を開けてスナック菓子を見つけるや、超高速でそれを数袋抱え込む。どんな力で抱えているのか、袋からばりばりと中身が割れていく音がした。
「一緒に食べる?」
「うん、ありがとう」
ごっなごなに砕かれたスナック菓子。けれど、それはそれでおいしかった。
「喉かわいた。飲み物もってきて」
「それくらい自分でやんなよ」
「持ってきて」
「自分でやんなって……ねぇなにそのピンク色のとびなわは? え、ちょっとなんで大上段に構えてるの? 何する気ッ? わかった、持ってくるからそれを下ろして」
「やったぁ!」
渋々椅子を引き、お菓子を数個片手に掴んでからキッチンへ行く。冷蔵庫からクロスが大好きないちご牛乳を出し、キャラクターもののマグカップへ注ぐ。
「おーそーいー! 喉乾いた!」
文句を言うサンタの少女。まったくもってこいつは役立たずだ。
「今持ってくからちょっと待ってて」
「えー、いちご牛乳ぅ〜? 今日は普通の牛乳がよかったのにー」
「だったら自分でやればいいじゃん……もう」