普通、王子様のキスで呪いが解けるんじゃないんですか?
王子様とのキスで呪いが解ける。
そして、2人は幸せになる。
普通はそういうものじゃない?
私には彼氏がいる。
彼は、付き合いだしてしばらく経つのにキスしてくれない。
代わりにスキンシップが沢山あるけどね。
けど私に触るとき、まるで宝物のように優しく触れる。
きゃー、照れる。
あと、すごくイケメン。
少しハーフっぽい顔立ちで。
だけど、普段存在感が薄くて、印象がボンヤリしてるって皆言う。
そして誰も彼がイケメンだって同意してくれない。
イケメンだし、背もある方だから結構存在感あると思うんだけどなぁ。
別に恋は盲目だから、評価がおかしいとかじゃないと思う。
彼は私の王子様だ。
えへへ、惚気てみた。
で、だ。
そんな彼とお家デートをしていた。
彼のお家だ。
もう何度か来ている。
2人でソファで雑誌とかテレビを観てイチャイチャする。
あっいい雰囲気かも、と思う瞬間は何度もあった。
けど、いつもそんな雰囲気になるとギューとされたり、頭撫でられたりして、なんとなくはぐらかされてきた。
すっごい優しい扱いされるから、それで絆されちゃう私も悪いんだけど。
何を言いたいかっていうと、そんな感じで私達はまだキスしてないってこと。
そんな彼と、やっと、やっとね、キスしたの。
ただ触れるだけのキスだけど、ポーッと暖かくなって、フワフワしている。
顔を離したら、優しくこちらを見てる彼と目があった。
やばい、すっごい幸せ。
彼は楽しそうに微笑んでいる。
「莉子、呪われちゃったね」
……ん?
「あはは、正確には俺が呪っちゃったんだけどね」
…は?
幸せ過ぎて私、耳おかしくなった…?
目の前にいる彼、ケイ君から聞こえる気がするんだけど。
「固まっちゃった。莉子、かわいい」
ちょっと待ってて、と立ち上がった彼は手鏡を持って戻ってきた。
手渡された鏡を覗きこんで、私は目を疑った。
「何コレー!?」
私に耳が生えてた。
いや、普通に耳ついてるけど、そうじゃなくって。
頭に猫耳がついていた。
「耳だけじゃなくて、尻尾もついてるよ」
ケイ君は、まるでなんてことないように、私の後ろを指差した。
振り返ってみるとホントに尻尾あるし。
ウネウネ動いてるし。
うそー。
「なんでー!?」
私、人間やめてないよ!?
どういうこと?
混乱する私をケイ君が楽しそうに見てる。
「だからね、俺が莉子のこと呪っちゃったの」
「呪っちゃったって…」
あり得ないでしょ。そんなファンタジー。
「俺さ、実はこの世界の人間じゃないんだ」
ケイ君が真面目な顔してとんでもない台詞を吐いた。
私の脳みそが、情報を処理しきれないよ。
キャパオーバー。頭、爆発しそうです。
「世にいう異世界トリップ?ってのをしたんだ。
で、もといた世界には魔法が存在しててね。莉子にちょっと魔法かけちゃった」
「は?」
「この世界には魔法がないから、使わないようにしてたんだけど、莉子が可愛いから。
思わず使っちゃったよ」
しょうがないよね、みたいに言ってるけどおかしいから。
それに、呪いでも魔法でもどっちでもいいけど、
「元に戻してよっ」
猫耳つけたまま、生活なんて出来ないよ。
「時間が経てば自然に戻るよ」
ニコニコしてるケイ君が私の頭を撫でた。
頭についた猫耳も撫でられてる。
けどヤバイ。
猫耳撫でられると、なんだかゾクゾクする。
そんな私に構わず彼は頭を撫でまくる。
「ちょ、ケイく…」
気持ち良すぎる。やめてくれ。
「キスすると、耳生えてきちゃうから、気をつけてね。
あはは。莉子、耳気持ちいいの?」
分かってるなら、手を止めてほしい。
はぅー、されるがまま状態だ。
「やぁーめぇーてぇー」
声がフニャフニャする。
と、ここでケイ君の手が止まった。
ホッと息をつく間もなく、今度は体を抱き寄せられた。
わー、今度はなんだ!?
「俺以外とキスしちゃダメだからね。
頭撫でられて可愛い顔してる莉子を見ていいのは俺だけだから」
顔が暑くなる。今の私、絶対に顔が真っ赤になってると思う。
だって、ケイ君の声が耳元で聞こえる。
しかもその内容もカッコいいし。
ケイ君、本当イケメン!
「ケイ君も他の子にこんなことしちゃダメだよ」
浮気の心配はないと思うけど、他の子にも猫耳を生産してたら嫌だ。
まあ、私も猫耳はイヤなんだけど。
やったのがケイ君なら、いいのかなぁとか思い始めてる。
…はっ!ダメダメ。
猫耳を許すとか、絶対ダメでしょ。
ケイ君好きすぎて、私の脳みそ溶けてるかも。
「こんなことするのは莉子にだけだよ。
莉子だけが、俺をちゃんと見てくれる。
…俺にかけられた呪いをもろともせず」
ん?なんか後半、声が小さくて聞こえなかったぞ?
けど聞き返す間もなく、ケイ君の顔が近づいてきた。
私は目を閉じる。
唇に柔らかいものが触れて、それが離れた時、微かに聞こえた。
「莉子、俺の運命の人」
嬉しくなって私からもキスしたら、ケイ君がすごく嬉しそうに笑ってくれた。
その笑顔に胸がキュンキュンした。
王子様にキスされたら呪われました。
けど、私達は幸せです。
呪われ者カップルー(*'ω'*)