エピローグ 『僕らの居場所』
ミーンミンミン
気温35度。風はなく、もわっとした空気が漂っている今日。セミもどうやらラストスパートをかけているようだ。
普通なら暑い夏の日差しが僕らを刺し貫くところだが、この場所だけはその限りではなく異様に涼しい。
「よしできたな」
あれから数日が経っていた。
森の中で僕らは小さな祠を作っていた。
コウの胡散臭いばあさんのいうこともたまには役に立つ。
「ウリ!」
森の外に先に向かったコウとミキが僕を呼ぶ。
「おう!今いく!」
手を上げ応える僕に今までのように遁辞を弄したり遁走したりする気配はもうなかった。生まれて始めて言葉が喉にひっからずに出たような気さえした。
僕は手を下ろし、祠の方に身体を向きなおして
「ここが新しいお前の……みんなの居場所になる。川で溺れた僕を助けたのは荒御霊でもセオリツでもない。お前だよリツ。僕たちは名前までお揃いの仲良しだからな。また会えるさ。そうだろリツ」
そう言い残し僕は森を去っていく。
意気揚々と森の地面を蹴る僕の足音は未来にまで響いていくような気がした。
***
タタタタタッ
誰かが森の中を走りまわっている音が響いている。
「あっ!」
ドサッ
その音の犯人は誰かにぶつかり尻もちをついた。
「いたぁ……」
「どうしたの?」
白いワンピースを着た女性がその子どもの前にかがみ顔を覗き込んでいる。
「あ、あの……僕道に迷っちゃって……お母さんのために祠にお参りしたいんです。どこにあるか知りませんか?」
「ああ。よ~く知ってるよ。ついておいで」
二人は手を繋ぎ歩き始めた。
「お姉さんはなんでここにいるんですか?」
子どもの当然でるべき疑問に彼女は
「私の……私たちの居場所だからね」
そう答えた。
「……お姉さんのお名前なんていうんですか?」
そう聞かれ、彼女は顔を綻ばせながら答える。
「私は」
その声はいつまでも僕らの居場所に響いていた。
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