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1-7 特訓シーンって最近の若者には不評ですよね。だから簡潔に書く

「じゃあ、リリアの魔力を少しずつ解放していこう」


「は、はい……」


 リリアが杖を掲げる。その指先が微かに震えている。

 先端から青白い光が漏れ始める。


「ゆっくりでいい。魔力を、できるだけ自然に」


 ボクの言葉に、リリアが深呼吸をして目を閉じた。 

 放たれた魔力は、まるで迷子の光のように宙を漂う。不安定で、どこへ向かうとも知れない力。それは確かに、型を持たない純粋な魔力だった。


「いいよ、その調子。 今度は、ワイちゃんが道筋を作る」


 手元のデバイスを操作する。

「|analyze.magic();《魔力解析、実行》」


 リリアの魔力に青いグリッドが重なり、まるで見えない道が現れるようだった。


「あ……」


 リリアが小さく声を上げる。彼女の魔力が、少しずつ形を成し始めていた。まるで、光の水路のように。


「どう?」


「不思議です。魔力が、自然と……」


 蒼い光の流れが、まるで踊るように宙を舞う。リリアの魔力は確かに、ボクの作った道筋に沿って流れていた。


「よし、じゃあ実験してみよう。氷結魔法を」


「え? でも、私……」


「大丈夫。ワイちゃんが道筋を作ったまま、魔法を放って」


 リリアは一瞬躊躇ったが、小さく頷く。

「氷結魔法、フロストアロー!」


 放たれた魔力が青い光の道筋を伝う。そして──。

 美しい氷の矢が、正確な軌道を描いて飛んでいく。


「す、すごい……こんなの初めて……!」


 リリアの瞳が輝く。今まで暴走するばかりだった魔力が、望み通りの形になった瞬間だった。


「うまくいったね。じゃあ、もう少しチャレンジして複雑な魔法も試してみようか」


「複雑な、ですか?」


「うん。例えば氷の矢を、もう少し大きく。それとも数を増やすとか」


 リリアは少し考え、杖を握り直した。


「氷の矢を、三本同時に……できますか?」


「試してみよう。ワイちゃんが道筋を三本分、用意するから」


 デバイスを操作する。青い光の道が、扇状に三本広がっていく。


「では、行きます──フロストアロー!」


 魔力が三つの光の道を伝う。次の瞬間、三本の氷の矢が美しい軌道を描いて放たれた。


「すごい! ちゃんと制御できました!」


 リリアの声が弾む。


「よし、だいぶ感覚をつかめてきたみたいだね。じゃあ、もう少し──」


 その時、腕時計型デバイスが小さく振動する。ニャビィからの通信だ。


「system.connect();《通信、開始》」


「ご主人様! 結界に異常な歪みを検知したのであります! 魔力の流れが不安定になっているにゃ!」


「場所は?」


「座標IPアドレスを転送するにゃ。そこまで離れた場所じゃニャいのであります」


 この幻想空間のセクターD-7、隣接するノード群の外周部。データパケットの流れが明らかに乱れている。


「メインラインのデータストリームに乗れば、すぐに到着できるはずにゃ」


「リリア。訓練は一旦中断。調査に向かおう」


「は、はい! でも、どうやって?」


「あれを使って」


 指さした先では、巨大なデータの波が流れている。青く輝く波は、幻想世界の大動脈として遠くまで続いていた。


「あれはデータストリーム。 データの波だ」


「え!? あの波に、乗るんですか?」


「うん。ちょっと怖いかもしれないけど、ワイちゃんについてきて」


 データストリームの縁に立つと、青白い光の流れが足元に広がっていく。波の表面は滑らかだが、近くで見ると、無数のコード文字列が浮かんでは消えている。


「わぁ! 凄いキレイです!」


「幻想世界を支える情報の流れだよ。乗るとちょっとしたスリルが味わえるかもね」


 ボクは軽く息を吸い込み、飛び込んだ。足が触れると同時に波が大きく揺れ、体がふわりと浮き上がる。まるでサーフィンをしているような感覚だ。


「きゃっ! 本当に乗れるんですか!?」


 リリアも波に飛び込むが、体勢を崩して一瞬ふらつく。慌てて手を伸ばし、彼女の腕を掴む。


「ほら、バランスが大事だよ。慣れてきたら、手を広げてみて」


 リリアが恐る恐る手を伸ばす。青白い波が彼女の足元を滑るように流れ、その姿はまるで光の中を舞う精霊のようだった。


「すごい……まるで空を滑ってるみたい」


 周囲では無数の光の粒が波しぶきのように輝き、コード文字列が踊る。リリアが笑顔を浮かべたその瞬間、波が一気に加速した。


「わあああ! 速いっ!」


「だから言ったでしょ、ちょっとしたスリルだって? もっと加速していくよ」


 データストリームは目的地に近づくにつれ、さらに強く輝き始めた。その光景はまるで、星の海を駆け抜けているようだった。

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