1-13 決着
リリアの周りに、青白い光が渦巻き始める。
リリアの頭に浮かぶのは、今まで「危険」として扱われ続けた自分の魔力への記憶だった。
「私は……これが役に立つって信じたい!」
今度は迷いのない瞳で、彼女は杖を掲げた。
「冷たき大地の囁きよ、青氷の壁となり敵を静かに封じ込めよ──」
詠唱が始まると同時に、ボクもコマンドを入力していく。
「サイバー空間を模倣し、侵入経路を確保。魔力接続を安定化──コードを同期!」
二つの力が共鳴し始める。
リリアの魔力が青い光となって広がり、そこにプログラムのコードが重なっていく。
幻想世界に、新たな領域が形作られていく。
「冷却プロトコルを適用!」
リリアの魔力が一気に収束し、青白い光が大地から立ち上がり始めた。それは氷柱のように成長し、幾何学的な模様を描きながら周囲を取り囲んでいく。
フィナーレに向かうタスクは全てコンプリートした──。
二人の声が重なり合う。
「零境氷殻擬装!《フローズン・フレームワーク・プロトコル》」
更に氷の結晶群が空に現れ、一斉に輝きを増す。
それはまるで無数の星々が空間を埋め尽くすかのようだった。
地上と上空の氷塊は瞬く間にサーバールームのような構造体を形成する。
その一つ一つに魔法陣とプログラムコードが刻まれており、青白く輝いていた。
例外種の姿が歪みながら現れるが──今度は逃げ場がない。
現れた場所そのものが、新しい配列の内部なのだから。
「これが私たちの作った世界」
リリアの声に力が満ちている。
「完全に封じ込めた。あとは──」
主人公がリリアに目配せする。
リリアは小さく頷き、杖を構える。今度は迷いのない瞳で。
「フロストアロー!」
放たれた氷の矢が、逃げ場を失った例外種の核心を貫く。
刹那、青白い光が爆発するように広がった。
氷の檻が砕け散り、例外種の姿がデータの粒子となって消滅していく。
「例外データ消去完了。氷殻サーバー、自己崩壊を確認!」
「……冷たすぎる結末ですね!」
リリアの言葉に、思わず笑みがこぼれる。
戦いの緊張が解けていく中、幻想世界に静けさが戻ってきた。
「帰ろうか。ニャビィが心配してるはずだし」
「はい──」
リリアの返事が途切れる。
リリアは自分の手のひらを見つめていた。
その中には、確かに魔力の残滓が残っていたが、もう震えはない。
「私の魔力、型に収まらないことは、欠点じゃなかったんですね」
「ああ。リリアは、リリアのままでいい」
主人公の言葉に、リリアは小さく頷いた。
「system.logout();《帰還、開始》」
意識が光に包まれ、現実世界へと戻っていく──その時。
リリアの銀髪が、夕暮れの光を受けて美しく輝いていた。