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千代子さん 〜動物職員と人間職員の勤務報告書〜  作者: 杉崎 朱
東藩篇

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7/15

千代子さん 7話 〜東藩篇 4話 閑話〜

「俺も、卵が食べられるようになって凄く喜んだ記憶あります。一番最初に食べたのは卵かけご飯でした!」

+++

言葉を話せるようになった”動物”と人間が共存していく世界。

地球に落ちた小さな小さな隕石から発する特殊磁場の影響で動物が言葉を話せるようになった。

また、磁場の影響か、高い知能をもったハクビシン《千代子ーセンダイジ》と、愉快な仲間達の現代ファンタジー


5月某日ーーー東京


PM 8時20分

都庁の休憩スペース





「問1、201×年、世界宇宙防衛機構が発見した地球に向かっていた巨大隕石。

 迎え撃ったレーザーで破壊をしたが、破壊シュミレーションと実際は異なり、隕石の欠片が地球に墜落した。墜落した国の所在をできるだけ詳しく書け。



・・・・・地球、日本、東京・・・野球場・・・っと」




「問2、隕石の影響で変わった事を簡潔に述べよ。


・・・・・未だある、隕石から発せられる磁場の影響により、人間以外の動物の脳に影響を与えた。知能指数も上がり、また、人間の言葉を理解できる動物が増えた。言葉を発することができるようになった。また、言葉を発することができるようになった為、彼らは自由に生きる”権利”を主張した」





勤務時間はとうに過ぎているが、休憩スペースにて勉強をしている者が2名いる。

昼と同じ光景だ。



東藩ヒガシハン》の隊員、宇美乃蛸蔵と二之宮紅葉だ。彼らは昼に勉強ができなかった分、残って勉強をしている。


蛸蔵は、問題集を読み上げて、その後回答をぶつぶつ唱えている。


「じゃぁ蛸蔵さん、俺の問題集から出題します。”動物の主張した権利とは?”」

「人間と動物が平等と言うこと、共に生きる。共存!!」

「多分、そんな感じで大丈夫だと思います」


「えーっとじゃぁ次は俺からね。動物たちの権利の深堀りだねぇ。紅葉君も今そんな感じの内容?」

「俺の問題集ではまだ隕石の影響についてです」

「え、そこまだ深堀するの?」

「入社試験の時でも、もうちょっと深堀りした問題でしたよ。蛸蔵さんの問題集浅くないですか?」


えーそうかなぁ?と言いながら問題集の表紙を見る。確かに向かいに座っている紅葉の持っている問題集に比べて半分以下の本の薄さだ。要約している本を買ったのかな。なんて思っていたら向かいの紅葉が一言。


「蛸蔵さん、それ、高校入試用の時事問題集ですよ」

「え?ウソッ!!!そんなこある?!」

「だって、それ食料に関しての事って載ってますか?高校入試用の時事問題集には食料に関する資料も問題も載ってません。牛肉・豚肉・鶏肉の順に食べられなくなって、牛乳だけは1年かけて乳牛を説得して条件付きで買取できるようにしてもらったとかの話ですよ」


紅葉に言われて蛸蔵は問題集の目次ページを見る。そもそも、項目自体とても少ないようだ。


「本当だ!!食料のページ無いッッ!!!偏差値の高い高校入試対策って書いてある!!」

あちゃー。っと、蛸蔵は後ろ向きにそり返る。もう本日のやる気が無くなったように見受けられる。

「蛸蔵さん、じゃぁ俺の問題集で一緒にやりましょうよ。読み上げますので答えて下さいね」

「ありがとう!!持つべきものは心優しい後輩だ!!!」

そり返っていた体をいきなりブンッと前に戻して紅葉の手を涙を流しながら握る。

そして、紅葉は蛸蔵に握られていないもう片方も手でページをめくり、問題集の続きを読み始めるのだった。





「問題。動物共存法律は、隕石墜落の何年後に施行されたか。年数を書け」

「ピッタリ1年後!!!」

「正解です」




「問題。動物共存法律は人間以外の全ての生き物に該当するか。丸かバツか。」

「ハイ!!答えはバツ!!」

「はい、蛸蔵さん。理由をどうぞ」

「魚類は該当しない!」

「魚類は正解ですが、惜しい」

「えッ?!」

「蛸蔵さん、貝類もです。魚類、貝類。なので、書くときは”魚貝類”と書いて下さい」

「細かーい」

「あと、一応”人間以外の生き物に該当するか”という聞き方なので、記述式だったら植物も該当しないと書いておいた方が良いと思います。」

「あぁ、当たり前のように食べてるからあまり意識してなかった。そうだよね。野菜とかね。野菜が喋れるようになって権利を主張されたらもう俺たちいよいよ何も食べるものなっちゃうよね」




「はい、次行きます。問題。

 ニワトリから生まれる卵は202×年現在も食されている。動物共存法律が制定されて一度食用が禁止となったが、後に解禁されて食べれるようになった西暦と経緯(交渉方法)簡潔に、また、法の名前を記述せよ」

「ええ〜!!食べれるようになった年は覚えてるんだけどなぁ〜。数年、卵食べられなくてもうショックだったから、食べれるようになったときは本当嬉しかったもんなぁ〜。ニワトリさんには悪いけどさ」

「俺も、卵が食べられるようになって凄く喜んだ記憶あります。一番最初に食べたのは卵かけご飯でした!」

「卵かけご飯かぁ〜!俺は目玉焼きだったよ!千代子さんも卵かけご飯が好きで、ニワトリとの通信交渉が成約してその後卵が販売された日の朝、スーパーとかコンビニのはすぐに無くなるだろうからって当時の部下に直接ニワトリの所に取りに行かせたって言ってた!」

「で、交渉方法とは!!」

「・・・知らない。千代子さんが交渉してくれたのは知ってるけど、その時千代子さんはまだ俺たちと一緒になる前だったからなぁ。その時の話とか記録とかは別の部署の方がやってくれてたし。」

「えーっと・・・ニワトリに関しては、卵を産むことを”労働”として、卵1つにつき給料が発生する仕組みに変えた・・・。あれ、なんか昔とそんな変わらないんじゃないかこれ。」

「え、何?俺全く分からない」

「メスのニワトリは、国の保護下においているそうです。国が管理をしているんだそうですよ。みんなで同じ場所に集まって、国が食事や寝床を支給。良い卵を産んでもらいたい為に必要な生活水準を国が保証しているんですね。その売れた卵の数パーセントは国が貰っているそうです。勿論国に渡す分以外はニワトリ達の”給料”となってます。国側は貰っていると言っても、それはまたニワトリたちの食事に使うのですが・・・」

「え・・・で。それを提案したって事が交渉方法?」

「ただ、それは希望したメスのニワトリに限りだそうです。なので、希望しないメスのニワトリは他に仕事をしても良いそうです。ただ、卵を確保したいので、よそで働かれて卵の生産数が下がっては困るからと、ほかで働くより圧倒的にお金が稼げるように設定されている。独占販売も兼ねて。だそうです」

「○○条約。みたいに何か名前ないの?」

「取引を行った”最特公”の千代子さんの千の字と、ニワトリの鶏の字で、《千鶏法センケイホウ》っていう名前が一応あるみたいですよ・・・」



「・・・ところで、《最特公サイトッコウ》って何?」

「え?!蛸蔵さん!?それ本当に言ってるんですか?!」

「え?うん、結構みんなサイトッコウサイトッコウって言ってるけど、何?斎藤さんと関係があるの?でも、千代子さんの事言ってる感じだよね?」

「”最特公”、《最高特別国家公務員》の略です!!総理直下の公務員で、総理以外の命令は聞かなくても良いんです!この国でNo.2ですよ!!最高位の特別国家公務員って事です!とりあえず凄いんですよあのハクビシンさんは!!」

「え!!じゃぁ、その千代子さんの下にいる俺らって・・・・!!」

「いや、僕たち”東藩”は別にそんな特別ではないです。”東藩”って言うだけあって、京都には”西藩”もありますから。特に唯一無二では無いです」

「ええーーー、なんか、自分って凄いんだって思いたかったのに・・」

「凄いって思いたいのであれば、今後”最特公”は忘れないようにした方が良いですよ、俺ですら知っている事ですし」

「”西藩”かぁ・・・どんな人たちがいるんだろう」

「あれ?会ったことないんですか?」

「え?むしろ会ったことあるの?」

「今年の4月の入社式の時に、西藩の隊長が来て下さいましたよ?」

「入社式?!え!いつそれ!?なんで俺いないの?!」

「入社式ですから4月1日です」

「非番だ・・・その日も携帯電話の電源切ってイヤホンつけて爆音聞きながら勉強してた・・・夜には集中力が尽きて、エイプリルフールだからってくだらないウソを家族にずっと吐きまくってたの覚えてる・・・」

「多分、その集中方法辞めた方が良いと思います・・・」




ショックを受けている蛸蔵に構わず、紅葉は次の問題を読み上げる。



毎年12月に公務員は試験を受ける。試験に合格しない者は公務員を継続できない仕組みに千代子が制定したからである。不合格者は翌年3月末、つまり年度末で退職となるのである。

入社時に一度合格したら、定年までそのままずるずると働くのではなく、日々変わっていく世の中の情勢の把握と、環境によって変わってしまう人間性を試験と称して国が把握しているのである。勿論、純粋に点数の低い職員は退職となる。また、試験にはメンタルヘルスに関する問題も入れてあり、周囲に悪影響を与える存在を見つけ出し、事前に対処や排除をするためである。


これは、千代子が今まで人間・動物を見てきて取り入れた方が良い、平等性を保てると制定したものである。


その試験の為に、常日頃から宇美乃蛸蔵は何年もずっと一人で勉強をしていた。

今年からは二之宮紅葉と二人仲良くずっと勉強をする事になる事になるだろう。


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