Part1「出会い」
ガルム洞窟。
生息生物は、オオカミ種、ジャッカル種、などといったいわゆる犬系モンスターで、洞窟の奥深くにはボスエネミーがいるとかいないとか。
またレベルの低い下等モンスターが跋扈する様相もあり、ある種平和な、それでいて無法地帯となっていた。
つまりは、初心者冒険者たちが最初に向かう場所が、ガルム洞窟だった。
その入口付近。
MMO生活第1日目にして数時間前にクリエイトしたばっかりで右も左もわからない男は、目の前で自身の装備を入念にチェックしていた。
「なんかこう、もっとまともな武器を最初に持たせてくれないものなのか・・・」
ぶつくさ文句を言いながら、もっているバンブーソードこと木剣をふるっては、攻撃モーションを確かめる。
控えめに言って、初心者丸出しであった。
「アシストくん!」
男はそう言いながら、この世界のシステムナビを呼び出す。
「ナンデショウ、冒険者サマ」
森林生い茂る洞窟前の野原に、突如機械的なフォルムが飛び出てくる。
「最初の町に寄らずに、なぜいきなり洞窟に俺は向かガルム洞窟。
生息生物は、オオカミ種、ジャッカル種、などといったいわゆる犬系モンスターで、洞窟の奥深くにはボスエネミーがいるとかいないとか。
またレベルの低い下等モンスターが跋扈する様相もあり、ある種平和な、それでいて無法地帯となっていた。
つまりは、初心者冒険者たちが最初に向かう場所が、ガルム洞窟だった。
その入口付近。
MMO生活第1日目にして数時間前にクリエイトしたばっかりで右も左もわからない男は、目の前で自身の装備を入念にチェックしていた。
「なんかこう、もっとまともな武器を最初に持たせてくれないものなのか・・・」
ぶつくさ文句を言いながら、もっているバンブーソードこと木剣をふるっては、攻撃モーションを確かめる。
控えめに言って、初心者丸出しであった。
「アシストくん!」
男はそう言いながら、この世界のシステムナビを呼び出す。
「ナンデショウ、冒険者サマ」
森林生い茂る洞窟前の野原に、突如機械的なフォルムが飛び出てくる。
「なぜいきなり洞窟に俺は向かわなければいけない?」
男は、空中を浮遊する丸い機械に向かって質問をする。
一つ青い目をキョロキョロさせながら、かわいらしくも目をとじて試案するようにアシストくんと名付けられた機械は、少し考えにふけりながら。
「ソレハ冒険者サマガ、『最初の町なんかかったるくていってられないから、楽して冒険を進めたい』トカ言ウノデ、シカタナク案内サセテイタダイタノデス」
もっともなことを言って、男に語りきかせるのであった。
「ぐっ・・・確かに言ったが、さすがにチュートリアルもスキップしたのだから、いきなり洞窟でバトル経験を積むのは、心の準備が・・・」
図星をつかれているが、なにぶん男にとって、こういったバーチャルゲーム。三次元疑似空間で遊んだことなど皆無であった。男の本音としては、長いながーいバーチャルゲームの始まりであって、慣れる慣れない以前の問題であった。
「ハァ・・・。ソレナラバナゼ、チュートリアルヲスキップシテシマッタノカ・・・」
青い瞳をパチクリとさせながら、白い丸型ロボットことアシストくんは、人間のようなしぐさで、小さい肩を落とす。
「ええぃ!だいたいお前のフォルムはなんだそれは!この世界観に合ってないではないか!ここは、剣とか魔法とか神秘が織り成す世界だろう!なぜ、こんな白い丸っこロボットなのだ!」
その様子に少しカチンときたのか、男はそんな癇癪を起こす。
「ハァ・・・ソレハ、冒険者サマガ、デフォルト設定デ、ワタシヲエランダセイデショウ」
「ぐっ」
「チュートリアルヲスキップサレテオリマスガ、設定ノメニューカラワタシノ姿見ヲカエルコトガデキマスヨ」
「なに・・・!」
愛嬌あるアシストくんは、とても親切に誰もが知っているであろう初期設定変更の方法を教えてくれる。
「・・・・どうやってやるんだ」
男は、そんなことも知らないわけで、自分自身のメニューの開き方も知らなかった。
「ホントウニ、ナンニモシラナインデスネ・・・」
やれやれと感情豊かなアシストくんは、一つ青い瞳をパチクリとさせながら、男のシステムビジョンを強制的に開く。
「おぉ・・・!」
男の目の前にゲームチックなUIが映し出されたかとおもうと、勝手にシステム設定が開かれて、アシストキャラの変更が入力される。
「ドレニナサイマスカ?」
「ふむ・・・って、なんかなんも選べなくない・・・」
キャラ変更可能なアシストキャラが複数男の目の前で、ビューワーのような形でくるくると立体的なキャラクターが回っていたのだが、どれも鍵マークがついていて選べなかった。
「チュートリアル中デアレバ、代表的ナ『ヒューマン』『エルフ』『ドワーフ』ハ選べタノデスガネ。冒険者様ガ現段階デエラベルノハ・・・コレダケデスネ」
アシストくんが、そうして男の目の前にわかりやすく表示させてくれたキャラクターが差し出される。
「うーん。これは・・・」
男は目の前に表示されている、謎シルエットの種族名を確かめる。
「文字化けしてよく見えないが、バグってるの?」
そこにほかのキャラ同様の種族名が表示されているわけではなく、およそ人語では記載されていない文字のようなものが浮かんでいた。
「ドウヤラ、最近ノアップデートデ追加サレタノカ・・・バグデ選ブコトガデキルヨウデスネ」
「ということは、本来であれば今の俺が選んではいけないやつなのか!」
男は、それを聞くや否や、悪い顔でなにかを思いつく。
「それにするしかないだろう!これを利用しない手はない・・・!修正されないうちに、それになるがいいアシストくん」
「ハァ・・・デハ、ソレニ変更シマスネ」
アシストくんもやや気が進まない様子で、男の設定変更を文字化けした種族に選びなおし、設定を反映する。
するとアシストくんの姿が光輝きながら。
「冒険者サマ。コレハ一度シカカエラレナイノデ、アトカラ変更ハデキマセンヨ」
男にとってはあまり大事ではなさそうな、システム的には大事をさらりといって一面が光に包まれるのであった。
「さぁ、こいチートアシストくん!」
男はウキウキしながら、その輝きを見つめていたが。
どうにも空気が変わったことに感付く。
辺り一面の光輝きは収束していったかと思うと、どす黒い真っ黒な靄が周辺一帯に満ち始めていた。
「・・・おや、これは・・・」
黒い靄は、アシストくんがいた場所に収束し始め、徐々に人のようなフォルムを形成し始めている。
辺りはさっきまで晴れていたはずなのに、どんよりとした雲まで出てくる始末。
「ど、どういうことだ・・・」
その雰囲気の代わり様に、男も焦り出し始めていると。
ひときわ大きい雷が、一閃。アシストくんがいた場所に落ちるのであった。
「ギャーーーー!?」
男の女子供のような悲鳴が当たり一面に木霊する。
すると。
「へぇ、アンタが俺のご主人様ってわけか」
雷の落ちた場所から煙が引いていくと同時に、男盛りのような女の声が男に向けられた。
「へ・・・あ、アシストくん・・・?」
呆けた顔で男が声を向けた先には、エルフ耳というよりかは悪魔的なとんがった耳でいて、紅い瞳が綺麗な金髪ロングヘアー。
「ひとつ言っとくが、俺はそんな名前じゃねぇよ。契約によりテメェの記憶と引き換えに、召喚に参上してやった悪魔がひとり、アバドン様だ!」
自身を悪魔と称しながら、自信満々の悪い意味での笑顔を覗かせながら、そんなことを言うのであった。