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77番目の使徒  作者: ふわむ
第二章
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【番外編】道は分かれ、また交わる12


眩しい陽射しと鳥のさえずりで目を覚ます。いい朝だ。

第四ホラス村の宿で一泊したあたしら『一閃』は、起床後早々に宿を出る準備を始めた。


「ん~~~。やっぱ屋根の下だとよく眠れるな。夜間の見張り番が無いのもありがたい。今日は体調万全だ」


伸びをしながら爽やかに言うおっさん。

昨日は目に見えて体調落としてたからな。すっかり疲労が抜けたようで何よりだ。


昨日の昼からこの宿で寝入ったあたしらは、飯を食うために夜起きて、食べたらまた寝た。そしてそのまま今日の朝までぐっすりだ。

当り前だが三人とも疲労が溜っていたようだ。


「ゴルダ、ラミアノ。今日の段取りだが、朝食を取ったら村を出てオルカーテに帰る。必要な買い物があれば朝食の時までに書き出しておいてくれ」


要点をまとめてダルが伝えてくる。あたしとおっさんは了解と返す。

急げば夜には着くかもしれないが、無理して強行するほどでもない。今日は適当な場所で野宿して、翌日到着でも構わないだろう。


あたしらは領主様から直々に賊討伐の依頼を請けている。

昨日、依頼対象と思われる賊を8人討伐。1人逃げられたが戦果は上々だろう。これを領主様に報告し、次のご指示を仰ぐ必要がある。

討伐した賊連中に面識のある奴らは居なかった。だからオルカーテに出入りしている者達ではない。となると、周辺のどこかに根城があるんだろうか。

その辺りのことを考えるには、あたしらの情報だけじゃ足りないからな。昨日の件でも痛感したが、やはり多くの情報をお持ちであろう領主様に情報を上げて、領主様に策を考えてもらうのが一番良い。


荷物をまとめて宿を引き払い、近くの酒場で朝食を取る。

酒場には朝から人が何人も出入りしていた。オルカーテと比べたら規模が全然違うが、村としては中々に人の賑わいがあるね。食い物の味は少し薄いかな。


三人共しっかり朝食を取り、後は雑貨屋で必要な物だけ買って村を出るか、と酒場から一歩外に出た時だ。


「・・・っ!おいっ!我々は監査に来ていると言っただろうが!」

「んなもん必要ねぇ!余所者の癖に、痛ぇ目見てぇのか!」


酒場の通り沿いにある少し離れた建物の前で、言い争っている声が聞こえた。

見れば、役人と兵士と村人が数人で対峙して口論になっている。


「・・・ん?ダル。あれは昨日の役人達じゃないかい。何か揉めてるのかね?」

「みたいだな。だがこの村じゃ俺たちは余所者だ。下手に関わらん方が良いだろう」


まぁそうだな。監査がどうとか言ってたから、役所の仕事だろう。であれば役人に任せるべきだ。


言い争っている彼らから距離を取りつつ「なんだなんだ」と見にくる者が集まって、徐々に人の輪ができ始めた。

そういう連中に混じってあたしらも遠巻きに見ていると、その諍いの元へさらに男が二人やってきた。

一人は屈強で大柄。もう一人はそれよりは小柄だが、どちらも帯刀している。


「おらおらぁ!手前ぇら、それ以上近づくとタダじゃおかねぇぞ!」


大柄な男が叫びながら役人の前に割り込み、つかに手を掛けて睨みつけた。

穏やかじゃないねぇ。

これ以上は武器を抜くぞ、ってことだ。

だが、役人に武器を抜く、ということはすなわち領主様に対する反逆行為となる。だからあたしを含め周囲の野次馬も脅しだろうとは思っていた。

・・・しかし。


「シャッ!」

「うわっ!」「なに!?」「きゃーっ!」


大柄な男が構わず剣を抜きやがった・・・。周囲から悲鳴が漏れる。

前に立っていた役人、たしかガルナガンテだったか。間合いに入っていなかったから斬られてはいないと思うが、危なかったな。


「ダル。どうする?」

「・・・まだ動くな。だが、すぐ飛び出せるようにもう少し近くへ行くぞ」


野次馬を掻き分けて前に出る。

・・・おや?あの小柄な男は・・・。


「大柄な男の後ろにいる小柄な方。あいつ、昨日の逃げた賊だ」

「なにっ!?」「なんだとっ!?」


あたしの言葉を聞いて、ダルとおっさんは驚き声をそれでも抑え気味に発して小柄な男に目を向けた。


「間違いないのか?」

「ああ、間違いない」

「俺とゴルダは、昨日逃げたヤツの顔を確認できなかったんでな。人違いじゃない確信が欲しい」

「そうだな。あたしが鎌をかけるよ。そんで確信できたら次はどうする?」

「俺とゴルダで小柄な男を捕縛する。お前は大柄な方を頼む」


大柄な男。剣を抜いたときのあの太刀筋では、正直大したことはない。それがわかっているからダルもあたし一人に任せてきたわけだ。

だがどうやって無力化するか・・・。

あたしゃ、斬るしか能が無いんだがね。


「おい、ラミアノ」

「んぁ?」

「俺が責任を持つ。もし戦闘に入るようなことになれば、躊躇するな」


・・・っ!

わかってるねぇ。流石はダルだ。


「あいよ!任せな!」


ダルとおっさんはニヤリと口の端を上げると、小柄な男を捕らえるために野次馬の輪に沿って二手に分かれ、建物の方へ回っていった。


さぁて。そんじゃ動きますかね。

あたしは野次馬の輪を抜け、役人達の後ろから歩を進める。

喧噪の中から前線で口論している役人の声が聞こえてきた。


「其の方ら!監査官に刃を向けるとはタダでは済まぬぞ!」

「ガルナガンテ、もう少し距離を取れって!危ねぇぞ!」


今にも相手に突っ込んでいきそうなのが大きな体躯のガルナガンテ。もう一人の役人が必死に抑え役に回っている。確かマーカスだったな。

そのまま近づくと、あたしはマーカスとガルナガンテの肩を順番にポンポンと叩く。


「役人さん。ちょっといいかい」

「何だ、ここは危ないぞ!・・・うん?あんたは昨日の・・・」

「其方は・・・昨日の冒険者か」


一触即発だった場の空気がふわっと緩む。

間髪入れず、正面にいる小柄な男に話し掛ける。


「よぉ、にぃちゃん。昨日ぶりだな」

「げっ!手前ぇはあん時の・・・」


そこまで言葉を発したところで小柄な男は踵を返し、建物の中へ逃げ込もうとした。


「邪魔だ!退け・・・ぐぉ!」


だが、そこにはダルが待ち構えていた。すれ違い様に小柄な男の首に腕を巻き付けると、暴れる間も与えず男を締め落としてしまった。

一瞬の出来事で、小柄な男の仲間達は何が起きたのか直ぐに把握できなかった。ようやく、ハッとなってダルに向かおうとするが、剣を構え殺気を纏ったおっさんが間にドンと立ち塞がる。


「この者は賊だ!加担する者は容赦せんぞっ!」


大声でダルが吠えた。その咆哮は周囲の喧騒を掻き消し、通りの空気をびりびりと震わせる。

締め落された小柄な男に駆け寄ろうとした連中はビタッと動きを止めたが、あたしの正面にいた大柄な男だけは逆に剣を振るってきた。あたしに向かって、な。


あたしは瞬時に抜刀する。

背負っている剣の柄に手を掛けた次の瞬間には抜刀した姿があった。野次馬の村人達には、そんな風に見えただろう。

そして、男が剣を振りかぶろうとして腕が上がったその時。


ゴトン!

カラーン!


剣を握っていた男の手首と剣が地面に転がった。


「は?」「え?」「な・・・?」


呆気に取られたような声が其処彼処そこかしこで上がった。

後ろから見ていた役人も、正面から見ていた男の仲間も、周りで見ていた野次馬も。

皆、斬った瞬間が見えなかったからだ。


数秒の後、男の絶叫が周囲に鳴り響くと、役人と揉め事を起こしていた連中はことごとく戦意喪失と相成った。

かくして勝負は決し、連中は次々と役人に捕縛され、この場の諍いは収まった。


けれどこの日、村を出立する予定だったあたしらも、役人から事情聴取を受けるために身柄を押さえられてしまう。

事態を重く見た役人は事件後直ぐにオルカーテの領主館へ使者を遣わせ、その二日後にはオルカーテから30人規模の領軍が第四ホラス村に到着した。


領軍が到着した翌日。

三日間軟禁されたあたしらはようやく村を出ることになる。ただし、両側から兵士に挟まれた状態で。

その兵士というのは、治安維持活動のため村に駐留する領軍兵士とは別に、あたしらを移送する任務を与えられた領軍兵士だ。


こうして彼らの馬車に乗せられたあたしらは、連行される形でオルカーテの帰路に就くことになるのだった。


◆補足


第一章 【番外編】マーカスの苦悩


マーカス視点で今話の後日談になります。

今話を読んでから戻って読み直すと、印象が変わるかもしれません。

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