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私が聖女だったあの頃  作者: 田宮らいき
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4. 通知止まらん

「えー、真白ちゃん!お嬢様みたいじゃない!」

「そうなのよ、私も驚いちゃったわぁ」


夢の国の翌週、私は金剛寺家に来ていた。小百合ママはうちのママと中学校からの仲。お嬢様学校の大学一貫校、エスカレーター式。20年以上、一度も喧嘩をしたことがないらしく、本当に仲が良い。他のママたちもこんなにキャッキャしてるのかな。この2人が特殊な気がするけど。


金剛寺家はうちの10倍くらいの広さ。まぁ、前世の貴族の家に比べたら小さいけど。執事や侍女もいないし。あ、でも家政婦さんは週に何回か来てるみたい。小百合ママ一人で掃除できないよね、この広さ。私が物心ついてからほぼ毎週、この豪邸でお茶している。


「もうSNSのフォロワーがすごい勢いで増えていっちゃって。これが『通知止まらん』ってやつかしら。ふふふ〜」


ママは嬉しそうである。私のカーテシー画像をアップしたら、その場にいた人たちから「実際見たけど高貴すぎる幼女だった!」「微笑みまで気高い!」等と拡散されまくり、一躍刻の人となったわけ。そりゃね、細々とキャラ弁とかDIYとかアップしていたSNSが急にバズったわけだから嬉しいよね。


「で、ここからどうするの?さらなる有名人を目指すの?」


そう質問してきたのは金剛寺家の一人息子であり、私の幼馴染の弓弦。通称ゆづ。7歳とは思えないくらい頭が良い。


「ここからねぇ。真白はどうしたい?」


実は私、テレビが大好きなの!前世にはなかった画期的な道具。まさかこんな情報発信法があるだなんて、前世の貴族の皆さんが知ったら驚いて魔力暴走するんじゃないかな。


あと歌も好き!前世では讃美歌くらいしかなかったけど、こっちだと色んな歌や楽器があるじゃない?私、前世だと「聖女様の歌声は、天使のようです」って言われてきたの。今はまだ声帯が安定していないのか上手に歌えないけど、いつか前世並みにレベルを上げてみせるわ。


「私もテレビに出たいなぁ」

「え、そんな野望あったの?」


ゆづがちょっと驚いている。ママ2人は「真白がテレビに出たら、私たちの推しにも会えるかしら」なんてキャッキャ言っている。


「真白がそのつもりなら、僕がプロデュースしてあげよう」


ゆづの目が輝いた。ゆづは6歳、つまり去年から、ゲーム実況とかおもちゃの紹介の動画配信をしている。小学生とは思えないプレゼン力と、小学生らしい可愛らしさ両方を兼ね備えていることが持ち味で、同年代のみならず、お姉様方の心もガッチリ掴んでいる。


「ゆづはテレビに出たくないの?」

「僕は自分の好きなことをしているのが好きだから、テレビはいいかな」

「ふーん、そうなんだ」


ゆづも一緒なら心強いと思ったのにな。でもプロデュースしてくれるだけでも百人力だよね。


「テレビに出たいっていうのもそうだけど、なんか真白変わったね。今週ちょっと元気なかったから心配してたんだけど、進化する前のサナギみたいな感じだったのかな」


夢の国で前世の記憶が蘇ってから、頭の整理に数日間は必要で、確かにサナギ状態だったかもしれない。前世最後の記憶は決戦前夜。7人の仲間達のその後や私たちに課せられた使命がどうなったかを考えると胸が苦しくなるけれど、この世界とあの世界は全く別物だから知る由もないってことは本能のどこかで分かっちゃってるんだよね。だからこの世界で目一杯楽しく生きることに決めたんだ。魔力はないけれど、その分面白い技術が沢山あるし!


「プロデューサーさん、私が綺麗な蝶々になれるように色々考えてよ」

「お安い御用だよ」


ゆづはニヤリと笑って、クレヨンで「企画書」を描き始めた。

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